仕訳問題
難度:高・中・低
重要度:A・B
定時株主総会において、剰余金の配当が以下のとおり承認された。
- その他資本剰余金 ¥ 400,000 および繰越利益剰余金 ¥ 1,200,000 を財源として配当を行う。
- 上記の配当に関連して、会社法が定める金額を準備金として積み立てる。
なお、株主総会時点の同社の資本金は ¥ 10,000,000、資本準備金は ¥ 1,800,000、利益準備金は ¥ 600,000 であった。
勘定科目は、次の中から最も適当と思われるものを選びなさい。 | |||
---|---|---|---|
現金 | 当座預金 | 普通預金 | 未払配当金 |
資本金 | 資本準備金 | 利益準備金 | 修繕積立金 |
新築積立金 | 繰越利益剰余金 | その他資本剰余金 | 受取配当金 |
解答仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | ||
---|---|---|---|---|---|
その他資本剰余金 繰越利益剰余金 |
425,000 1,275,000 |
※4 ※5 |
未払配当金 資本準備金 利益準備金 |
1,600,000 25,000 75,000 |
※1 ※2 ※3 |
※1 400,000円+1,200,000円=1,600,000円
※2 100,000円×400,000円/1,600,000円=25,000円
※3 100,000円×1,200,000円/1,600,000円=75,000円
※4 400,000円+25,000円=425,000円
※5 1,200,000円+75,000円=1,275,000円
解説
利益処分(利益剰余金と資本剰余金)に関する問題です。
本問はまず、問題文の「その他資本剰余金 ¥ 400,000 および繰越利益剰余金 ¥ 1,200,000 の配当を行う」から、その他資本剰余金と繰越利益剰余金の一部を配当することが分かります。
配当にあたっては、会社法の規定(第445条の4項など)に従って一定額を準備金として積み立てる必要があります。
- 原則として配当額の10分の1を準備金として積み立てなければならない(10分の1規定)
- ただし、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達した場合は、それ以上積み立てる必要はない(4分の1規定)
よって、「配当額の10分の1(10分の1規定の金額)」または「資本金の4分の1から資本準備金と利益準備金の合計額を差し引いた残額(4分の1規定の金額)」のうち、どちらか小さいほうの金額だけ準備金を積み立てることになります。
- 配当額:400,000円+1,200,000円=1,600,000円
- 10分の1規定の金額:1,600,000円÷10=160,000円
- 4分の1規定の金額:10,000,000円÷4-(1,800,000円+600,000円)=100,000円
- 準備金要積立額:160,000円>100,000円 → 100,000円
なお、配当にあたって積み立てる準備金は「配当の原資」によって異なります。
本問は、その他資本剰余金と繰越利益剰余金を配当の原資としているので、配当割合に応じて資本準備金と利益準備金を積み立てます。
- 配当の原資が繰越利益剰余金:利益準備金を積み立てる
- 配当の原資がその他資本剰余金:資本準備金を積み立てる
- 配当の原資が繰越利益剰余金とその他資本剰余金:利益準備金と資本準備金を積み立てる(本問)
資本準備金の積立額=100,000円×400,000円/1,600,000円=25,000円
利益準備金の積立額=100,000円×1,200,000円/1,600,000円=75,000円
(借)繰越利益剰余金 1,275,000
(貸)未払配当金 1,600,000
(貸)資本準備金 25,000
(貸)利益準備金 75,000

本問のように、その他資本剰余金と繰越利益剰余金を配当の原資とする場合は、準備金要積立額を配当割合に応じて資本準備金と利益準備金に按分するのがポイントです。
Q&A
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解答で借方に「その他資本剰余金¥425,000、繰越利益剰余金¥1,275,000」とありますが、元々財源の金額としては「その他資本剰余金¥400,000、繰越利益剰余金¥1,200,000」となっています。 見た目上、元の金額をオーバーして取り崩しているように見えるのですが、仕訳上ではOKなのでしょうか?単純に財源を超えた金額になっているけどなんでOKなの?と疑問に思いました。(のざきさん) |
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まず、問題文の「その他資本剰余金 ¥ 400,000 および繰越利益剰余金 ¥ 1,200,000 を財源として配当を行う。」の各金額は、今回の配当で社外に流出する配当額になります。 配当財源の金額(株主総会時点のその他資本剰余金・繰越利益剰余金の金額)ではありませんので、両者を混同しないように気をつけてください。 一方、解答仕訳の借方の「その他資本剰余金425,000、繰越利益剰余金1,275,000」は社外に流出する配当額と、配当にともない社内で積み立てる準備金の合計額になります。 その他資本剰余金:配当額400,000円+準備金積立額25,000円=425,000円 繰越利益剰余金:配当額1,200,000円+準備金積立額75,000円=1,275,000円 よって、解答仕訳の借方の金額は、問題文で与えられている配当額よりも準備金積立額だけ大きくなります。 |
回答日:2020年7月17日 |
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重要仕訳一覧
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- 利益処分(利益剰余金と資本剰余金)
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