第154回日商簿記2級 予想問題「簿記ナビ模試」第3問(財務諸表)の解説

第3問 商簿と工簿をミックスした製造業の決算整理(貸借対照表の作成問題)です!

 製造業を営む会社の決算整理(貸借対照表の作成問題)です。

 棚卸減耗や原価差異の処理などが一般的な商品売買を行う会社と異なるため、慣れるまでは解きづらくて難しく感じると思います。

 ただ、ひとつひとつの処理自体がめちゃくちゃ難しいわけではありませんし、勘定連絡図(勘定の流れ)をしっかり押さえておけば逆に得点源にすることができます。本問や日商が公表しているサンプル問題(問題15)を使って万全の対策をしておきましょう。

簿記ナビ模試2級の「各問題の難度」と「解答時間の目安」
準備 第1問 第2問 第3問 第4問 第5問 見直し
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第3問(財務諸表)の解説

資料Ⅱの×8年3月の取引

1.材料仕入高
(借)材料 270,000
 (貸)買掛金 270,000
2.直接材料費
(借)仕掛品 210,000
 (貸)材料 210,000

 直接材料費は、材料から仕掛品に振り替えます。

3.直接工の直接作業賃金支払高
(借)賃金 180,000
 (貸)現金 180,000
(借)仕掛品 180,000
 (貸)賃金 180,000

 直接労務費は、賃金から仕掛品に振り替えます。

 本問は、問題資料に「月初・月末の未払なし」とあるので、当月の支払額がそのまま消費額になります。

4.特許権使用料
(借)経費 20,000
 (貸)現金 20,000
(借)仕掛品 20,000
 (貸)経費 20,000

 特許権使用料は直接経費に分類されます。直接経費は、経費から仕掛品に振り替えます。

5.製造間接費予定配賦額
(借)仕掛品 236,000
 (貸)製造間接費 236,000

 製造間接費の予定配賦額は、製造間接費から仕掛品に振り替えます。

6.間接材料費実際発生額
(借)製造間接費 50,000
 (貸)材料 50,000

 間接材料費の実際発生額は、材料から製造間接費に振り替えます。

7.その他の製造間接費実際発生額
(借)製造間接費 167,200
 (貸)現金 167,200

 その他の製造間接費の実際発生額は、製造間接費で処理します。

 本問は、問題資料に「月初・月末の未払・前払なし」とあるので、当月の発生額(支払額)がそのまま消費額になります。

8.完成品総合原価
(借)製品 640,000
 (貸)仕掛品 640,000

 完成品総合原価は、仕掛品から製品に振り替えます。

9.売上原価
(借)売上原価 655,000
 (貸)製品 655,000

 売上原価は、製品から売上原価に振り替えます。

10.売上高
(借)売掛金 950,000
 (貸)売上 950,000

資料Ⅲの決算整理事項等

1-1.材料の棚卸減耗
(借)棚卸減耗損 2,100 ※1
 (貸)材料 2,100
(借)製造間接費 2,100
 (貸)棚卸減耗損 2,100

※1 154,100円-152,000円=2,100円

 帳簿棚卸高と実際有高との差額を棚卸減耗損で処理します。また、材料の棚卸減耗損は間接経費に分類されるため、材料から製造間接費に振り替えます。

1-2.製品の棚卸減耗
(借)棚卸減耗損 1,000 ※2
 (貸)製品 1,000

※2 70,000円-69,000円=1,000円

 帳簿棚卸高と実際有高との差額を棚卸減耗損で処理します。

 製品の棚卸減耗損は、問題文に「製品の棚卸減耗については販売費及び一般管理費に計上する」とあるので、うっかり製造間接費に振り替えないように気をつけてください。

2.減価償却
(借)減価償却費 19,000 ※3
 (貸)建物減価償却累計額 7,000
 (貸)機械減価償却累計額 12,000
(借)製造間接費 16,900 ※4
 (貸)減価償却費 16,900

※3 7,000円+12,000円=19,000円

※4 7,000円×70%+12,000円=16,900円

 3月分の減価償却費のうち、製造活動用の固定資産にかかる減価償却費は間接経費に分類されるため、減価償却費から製造間接費に振り替えます。

  • 製造活動用:7,000円×70%+12,000円=16,900円
  • 販売・一般管理活動用:7,000円×30%=2,100円
3.貸倒引当金の設定
(借)貸倒引当金繰入 46,640 ※5
 (貸)貸倒引当金 46,640
(借)貸倒引当金繰入 27,000 ※6
 (貸)貸倒引当金 27,000

※5 {(2,227,200円+3,754,800円)×2%+550,000円×1%}-78,500円=46,640円

※6 900,000円×3%=27,000円

 売上債権(受取手形・売掛金・クレジット売掛金)にかかる貸倒引当金繰入は、損益計算書の販売費及び一般管理費に計上します。

 一方、営業外債権(長期貸付金)にかかる貸倒引当金繰入は、売上債権にかかるものと区別するために損益計算書の営業外費用に計上します。

4.売上割戻引当金の設定
(借)売上割戻引当金繰入 194,000 ※7
 (貸)売上割戻引当金 194,000

※7 (8,750,000円+950,000円)×2%=194,000円

 問題文に「当期の総売上高に対して2%の売上割戻引当金を設定する」とあるので、残高試算表の金額に3月発生分を加算して総売上高を計算し、それに2%を乗じて繰入額を求めましょう。

 なお、残高試算表には売上割戻引当金がないため、「決算整理で計算した要設定額がそのまま繰入額になる」と判断しましょう。

5.原価差異の振り替え
(借)原価差異 200 ※8
 (貸)製造間接費 200
(借)売上原価 3,700 ※9
 (貸)原価差異 3,700

※8 236,000円-50,000円-167,200円-2,100円-16,900円=200円

※9 3,500円+200円=3,700円

 製造間接費勘定の貸借差額を原価差異に振り替えます。

 売上原価に賦課するさいは、原価差異は3月に生じた200円だけでなく、残高試算表に計上されている4月から2月までに生じた11か月分(3,500円)を忘れないように気をつけてください。

6.法人税等
(借)法人税、住民税及び事業税 355,000 ※10
 (貸)仮払法人税等 180,000
 (貸)未払法人税等 175,000

※10 180,000円+175,000円=355,000円

 残高試算表の「仮払法人税等 180,000」と、答案用紙に予め記入されている「未払法人税等 175,000」から、貸借差額で当期の法人税、住民税及び事業税を求めることができます。

繰越利益剰余金の算定方法

 貸借対照表の繰越利益剰余金は、以下の計算式で求めることができます。

貸借対照表の繰越利益剰余金=決算整理前の金額±当期純利益(当期純損失)

 本問は決算整理前の金額が与えられていませんが、[資料Ⅱ]で与えられている×8年3月の取引の中に繰越利益剰余金を増減させるものがないため、残高試算表の金額(4,956,900円)がそのまま決算整理前の金額になります。

 また、残高試算表の「仮払法人税等 180,000」と答案用紙の貸借対照表の「未払法人税等 175,000」から、当期の法人税、住民税及び事業税を貸借差額で求めることができます。

法人税、住民税及び事業税=仮払法人税等180,000円+未払法人税等175,000円=355,000円

貸借差額で法人税、住民税及び事業税の金額を求める!
(借)法人税、住民税及び事業税 355,000
 (貸)仮払法人税等 180,000
 (貸)未払法人税等 175,000

 さらに、[資料Ⅲ]の6.に「税引前当期純利益の40%を法人税、住民税及び事業税に計上する」とあるので、法人税、住民税及び事業税から税引前当期純利益を逆算することができます。

税引前当期純利益=355,000円÷40%=887,500円

当期純利益=887,500円-355,000円=532,500円

 上記のような流れで、決算整理前の繰越利益剰余金の金額と当期純利益を計算したら、あとは2つを合算して貸借対照表の繰越利益剰余金の金額を求めましょう。

貸借対照表の繰越利益剰余金=4,956,900円+532,500円=5,489,400円

貸借対照表に計上される金額

  • 現金預金:残高試算表9,010,740円-3月の取引180,000円-3月の取引20,000円-3月の取引167,200円=8,643,540円
  • 受取手形:残高試算表2,227,200円
  • 売掛金:残高試算表2,804,800円+クレジット売掛金550,000円+3月の取引950,000円=4,304,800円
    • 貸倒引当金:残高試算表78,500円+当期繰入46,640円125,140円
  • 材料:152,000円(※問題資料Ⅲの1より)
  • 仕掛品:月初仕掛品原価160,000円+(直接材料費210,000円+直接労務費180,000円+直接経費20,000円+製造間接費236,000円)-当月完成品総合減価640,000円=166,000円
  • 製品:69,000円(※問題資料Ⅲの1より)
  • 未収入金:残高試算表1,050,000円

 クレジット売掛金は、貸借対照表では売掛金に含めて表示します。また、貸倒引当金は売上債権(受取手形・売掛金・クレジット売掛金)にかかる分だけを表示します。

  • 建物:残高試算表2,520,000円
    • 減価償却累計額:残高試算表329,000円+3月計上分7,000円=336,000円
  • 機械装置:残高試算表864,000円
    • 減価償却累計額:残高試算表564,000円+3月計上分12,000円=576,000円
  • 土地:残高試算表2,000,000円
  • 長期貸付金:残高試算表900,000円
    • 貸倒引当金:当期繰入27,000円

 貸倒引当金は営業外債権(長期貸付金)にかかる分だけを表示します。売上債権にかかる分と混同しないように気をつけましょう。

  • 支払手形:残高試算表988,700円
  • 買掛金:残高試算表1,516,300円+3月の取引270,000円=1,786,300円
  • 未払法人税等:175,000円(※予め記入されている)
  • 売上割戻引当金:当期繰入194,000円
  • 長期借入金:残高試算表1,200,000円
  • 資本金:残高試算表10,000,000円
  • 利益準備金:残高試算表1,999,000円
  • 繰越利益剰余金:残高試算表4,956,900円+当期純利益532,500円5,489,400円

 当期純利益は、問題資料および答案用紙に記載されている「未払法人税等」と「仮払法人税等」の金額から逆算することができます。詳細は、上の繰越利益剰余金の算定方法をご覧ください。

損益計算書に計上される金額

 当期純利益は以下のような損益計算書を自作してゴリゴリ計算することもできますが、上述のとおり仮払法人税等と未払法人税等の金額から逆算することができます。

 売上割戻引当金繰入は、損益計算書上では原則として売上高から直接控除します。よって、売上高の金額は売上割戻引当金の繰入額を控除したあとの金額になります。

 また、原価差異は3月に生じた200円だけでなく、残高試算表に計上されている4月から2月までに生じた11か月分(3,500円)もあわせて売上原価に賦課します。

  • 売上高:残高試算表8,750,000円+3月の取引950,000円-売上割戻引当金繰入194,000円9,506,000円
  • 売上原価:残高試算表6,465,460円+3月の取引655,000円+原価差異3,700円=7,124,160円
  • 売上総利益:9,506,000円-7,124,160円=2,381,840円
  • 販売費及び一般管理費:残高試算表1,354,800円+製品の棚卸減耗損1,000円+貸倒引当金繰入46,640円+減価償却費2,100円=1,404,540円
  • 営業利益:2,381,840円-1,404,540円=977,300円
  • 営業外収益:受取利息16,200円
  • 営業外費用:支払利息24,000円+手形売却損5,000円+貸倒引当金繰入27,000円=56,000円
  • 経常利益:977,300円+16,200円-56,000円=937,500円
  • 特別損失:固定資産売却損50,000円
  • 税引前当期純利益:937,500円-50,000円=887,500円
  • 法人税、住民税及び事業税:887,500円×40%=355,000円
  • 当期純利益:887,500円-355,000円=532,500円

参考:本問の勘定連絡図(勘定の流れ)

 解答するさいには、以下のような勘定連絡図(勘定の流れ)を下書きして各金額を求めましょう。

勘定連絡図
勘定連絡図

参考:損益計算書の作成問題(類題)

 参考問題として損益計算書の答案用紙・解答のPDFをアップしておきます。時間に余裕のある方はこちらもダウンロード・プリントアウトして問題を解いてください。

参考問題の答案用紙
参考問題の答案用紙(PDF版
参考問題の解答
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