第1問 仕訳を制する者が簿記2級を制する!仕訳で20点満点を取りましょう!
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第1問(仕訳問題)の解説
問1 仕入取引・研究開発費・消費税
問2 課税所得の計算
問3 ソフトウェア
問4 固定資産の購入
問5 本支店会計
簿記2級の仕訳問題に関するQ&A
簿記2級の第1問では毎回、仕訳が5問出題されます。
過去に出題された問題の類似問題がよく出題されるため、過去問対策が非常に効果的です。簿記検定ナビの仕訳対策教材や市販の仕訳教材・アプリなどを使って万全の対策をしておきましょう。
準備 | 第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 | 第5問 | 見直し |
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- | 普通 | 難しい | 難しい | 簡単 | 簡単 | - |
5分 | 15分 | 30分 | 30分 | 15分 | 15分 | 10分 |
簿記2級の出題予想のご案内
簿記検定ナビでは、2021年2月28日に行われる第157回日商簿記2級の出題予想を公開しています。
過去の出題状況や最近の出題傾向を独自の視点で分析し、大問ごとの予想はもちろんのこと、各論点の重要ポイントや絶対に押さえておくべき過去問などもあわせてご紹介しています。
第1問(仕訳問題)の解説
問1 仕入取引・研究開発費・消費税
重要度:★★★ 難度:★★☆
(貸)買掛金 1,320,000
(借)研究開発費 880,000 ※2
(貸)未払金 880,000
※1 1,200,000円+1,200,000円×10%=1,320,000円
※2 800,000円+800,000円×10%=880,000円
仕入取引・研究開発費・消費税に関する問題です。
本問は、取引を【商品の購入に関する取引】と【研究開発用の備品の購入に関する取引】に分けて考えましょう。
商品の購入に関する取引
本問はまず、問題文の「当社では商品を仕入れたときに商品勘定に記入し、販売したときにそのつど売上原価を売上原価勘定に振り替える方法で記帳している」から、売上原価対立法を採用していることが分かります。
(貸)買掛金など ×××
(貸)売上 ×××
(借)売上原価 ×××
(貸)商品 ×××
本問は、商品1,200,000円を月末払いの条件で購入しているので、商品と買掛金で処理します。
また、問題文に「消費税の税率は10%であり、取引は税込方式により記帳する」とあるので、消費税分120,000円(=1,200,000円×10%)は商品に含めて処理します。
- 消費税の処理方法
- 税抜方式:仮払消費税・仮受消費税で処理する
- 税込方式:仕入(商品)や研究開発費などの購入原価に含めて処理する
(貸)買掛金 1,320,000
研究開発用の備品の購入に関する取引
研究開発目的で支出したコストは全て研究開発費で処理します。例えば、研究開発部門の人件費や実験で使う材料費や器具、消耗品なども全て研究開発費になります。
本問は、問題文に「研究開発のために使用する情報機器備品 ¥ 800,000 」とあるので、全額を研究開発費で処理します。うっかり備品で処理しないように気をつけましょう。
また、本問は税込方式の処理が問われているので、消費税分80,000円(=800,000円×10%)は研究開発費に含めて処理します。
(貸)未払金 880,000
以上、①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります。
税込方式ではなく税抜方式だったら?
参考までに、税抜方式による場合の仕訳も確認しておきましょう。消費税については商品・研究開発費に含めずに仮払消費税で処理します。
(借)研究開発費 800,000
(借)仮払消費税 200,000 ※3
(貸)買掛金 1,320,000
(貸)未払金 880,000
※3 (1,200,000円+800,000円)×10%=200,000円
問2 課税所得の計算
重要度:★★☆ 難度:★☆☆
(貸)仮払法人税等 200,000
(貸)未払法人税等 160,000 ※5
※4 (1,000,000円-100,000円)×40%=360,000円
※5 360,000円-200,000円=160,000円(貸借差額)
課税所得の計算に関する問題です。
問題文に「受取配当金の益金不算入額が ¥ 100,000 あることが判明」とあるので、まずは法人税等の計算のベースになる税法上の利益(課税所得)を計算しましょう。
- 収益-費用=会計上の利益
- 益金-損金=税法上の利益(課税所得)
益金不算入とは「会計上は収益になるけど税法上は益金にならない」ことを意味するため、税法上の利益(課税所得)は会計上の利益よりも益金不算入の分だけ少なくなります。
よって、会計上の利益が1,000,000円、益金不算入額が100,000円ならば、税法上の利益(課税所得)は900,000円になります。
- 会計上の利益:1,000,000円(※問題文より)
- 税法上の利益:1,000,000円-100,000円=900,000円
税法上の利益(課税所得)を把握したら、この金額に法定実効税率40%を乗じて法人税、住民税及び事業税の金額を計算し、さらに仮払法人税等との差額を未払法人税等で処理します。
- 法人税、住民税及び事業税:900,000円×40%=360,000円
- 仮払法人税等:200,000円(問題文より)
- 未払法人税等:360,000円-200,000円=160,000円
なお、問題に列挙されている勘定科目の中に法人税等がある(法人税、住民税及び事業税がない)ので、借方の勘定科目は法人税等を使うと判断しましょう。
(貸)仮払法人税等 200,000
(貸)未払法人税等 160,000
問3 ソフトウェア
重要度:★★☆ 難度:★☆☆
(貸)ソフトウェア 100,000
※6 400,000円÷(5年-1年)=100,000円
ソフトウェアの償却に関する問題です。
自社利用目的で購入し、資産処理する条件(将来の収益獲得または費用削減が確実であること)を満たしたソフトウェアは、利用可能期間にわたって定額法により均等償却します。
本問のソフトウェアは、当期首の時点で(前期首から前期末までの)1年分をすでに償却しているので、帳簿価額400,000円を残りの利用可能期間4年で均等償却します。うっかり5年で割らないように気をつけましょう。
- 無形固定資産の取得原価:無形固定資産の取得に要した費用
- 無形固定資産の帳簿価額:取得原価-これまでに償却した金額
(貸)現金など 500,000
(貸)ソフトウェア 100,000
前期末(当期首)の帳簿価額=500,000円-100,000円=400,000円
(貸)ソフトウェア 100,000
当期末の帳簿価額=400,000円-100,000円=300,000円

仮に、問題文が「取得原価:¥ 400,000」となっていたら、取得原価400,000円を利用可能期間の5年で除して当期の償却額80,000円を求めます。取得原価と帳簿価額の違いを改めて確認しておきましょう。
問4 固定資産の購入
重要度:★★★ 難度:★☆☆
(借)前払費用 100,000 ※8
(貸)営業外支払手形 1,200,000 ※7
※7 @300,000円×4枚=1,200,000円
※8 1,200,000円-1,100,000円=100,000円(貸借差額)
固定資産の購入に関する問題です。
固定資産を割賦契約で購入した場合、現金販売価額と支払額合計との差額を前払利息(資産)または支払利息(費用)で処理します。
- 現金販売価額:1,100,000円(問題文より)
- 支払額合計:@300,000円×4枚=1,200,000円
- 差額:1,200,000円-1,100,000円=100,000円
本問は、問題文の「利息分については、購入時に資産の勘定で処理する」から、利息分を資産の勘定で処理すべきことが分かりますが、問題に列挙されている勘定科目の中に前払費用がある(前払利息がない)ので、前払費用を使うと判断しましょう。
また、購入代金は手形を振り出して支払っているので営業外支払手形で処理します。うっかり支払手形や未払金を使わないように気をつけましょう。
なお、購入時に利息分を資産の勘定で処理した場合、割賦金支払時・決算時には以下のような仕訳を切ります。購入時に利息分を費用処理する場合の仕訳とあわせて、参考までにご確認ください。
(借)前払費用 100,000
(貸)営業外支払手形 1,200,000
(貸)現金など 300,000
(貸)前払費用 75,000
※9 100,000円×3枚/4枚=75,000円
期中に支払った3枚分の手形にかかる利息を、前払費用から支払利息に振り替えます。
(借)支払利息 100,000
(貸)営業外支払手形 1,200,000
(貸)現金など 300,000
(貸)支払利息 25,000
※10 100,000円×1枚/4枚=25,000円
期末に残った1枚分の手形にかかる利息を、支払利息から前払費用に振り替えます。
問5 本支店会計
重要度:★★☆ 難度:★★☆
(貸)大阪支店 120,000
※11 100,000円+20,000円=120,000円
(借)租税公課 20,000
(貸)本店 120,000 ※12
※12 100,000円+20,000円=120,000円(貸借差額)
本支店会計に関する問題です。
本支店会計の支店間取引は「本店集中計算制度」と「支店分散計算制度」の2つがあり、採用している制度により本店・支店の仕訳が異なります。
- 本店集中計算制度:支店間取引を各支店が記帳する場合に、いったん本店を経由して取引されたとみなして記帳する制度です。各支店は本店勘定のみを設定し、本店は各支店の勘定を設定します。
- 支店分散計算制度:支店間取引を各支店が記帳する場合に、本店を経由することなく、取引の事実に従って記帳する制度です。各支店は本店勘定だけでなく取引のある各支店の勘定を設定し、本店は各支店の勘定を設定します。
本問は、問題文に「同社は本店集中計算制度を採用している」とあるので、各支店が支店間取引を記帳する場合は、いったん本店を経由して取引されたとみなして処理します。
本問の場合、実際のモノの流れは「大阪支店→銀座支店」ですが、本店集中計算制度を採用しているため「大阪支店→本店→銀座支店」という流れで仕訳を考えます。
まずは「本店に商品券と収入印紙を送った」と仮定して、大阪支店の仕訳を考えましょう。
(貸)受取商品券 100,000
(貸)租税公課 20,000
次に「大阪支店から送られてきた商品券と収入印紙を受け取った」「受け取った商品券と収入印紙を銀座支店に送った」と仮定して、本店の仕訳を考えましょう。なお、借方・貸方の受取商品券・租税公課は相殺します。
(借)租税公課 20,000
(貸)大阪支店 120,000
(借)銀座支店 120,000
(貸)受取商品券 100,000
(貸)租税公課 20,000
最後に「本店から送られてきた商品券と収入印紙を受け取った」と仮定して、銀座支店の仕訳を考えましょう。
(借)租税公課 20,000
(貸)本店 120,000
参考:支店分散計算制度を採用していた場合の仕訳
各支店が支店間取引を記帳する場合は、本店を経由することなく取引の事実に従って処理します。参考までに仕訳をご確認ください。
(貸)受取商品券 100,000
(貸)租税公課 20,000
(借)租税公課 20,000
(貸)大阪支店 120,000

本店集中計算制度の仕訳を考えるさいは、本解説のように「支店の仕訳→本店の仕訳→支店の仕訳」という流れで考えると分かりやすいです。
簿記2級の仕訳問題に関するQ&A
- 自分の解答と模範解答の勘定科目の上下が逆になっていました。不正解になりますか?
- 勘定科目の漢字を間違えた場合、部分点はもらえますか?
- 金額にカンマ(コンマ)を付けないと不正解になりますか?
- 管理人さんの仕訳問題の解き方を教えてください。
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自分の解答と模範解答の勘定科目の上下が逆になっていました。不正解になりますか? |
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仕訳は上下が逆になっていても正解です。 例えば、問1の模範解答では借方が「商品・研究開発費」の順番に並んでいますが、これらの勘定科目は上下が入れ替わっても構いません。その他の問題も同様です。 |
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勘定科目の漢字を間違えた場合、部分点はもらえますか? |
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部分点はもらえません。 勘定科目の漢字を間違えた場合は金額があっていても不正解になりますので、ケアレスミスにご注意ください。また、問題に列挙されていない勘定科目を使って解答した場合も不正解になります。 |
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金額にカンマ(コンマ)を付けないと不正解になりますか? |
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不正解にはなりません。 ■日商簿記:カンマを付けなくても採点してもらえる ■全経簿記:カンマがないと採点してもらえない(※不正解扱い) ただ、実務においてカンマを付けるのは当たり前のことですし、省略したからといって解答時間の短縮にはなりません。むしろ、見直しの時に見にくいだけです。 このようにカンマを付けないデメリットはあってもメリットはありませんので、金額には必ずカンマを付けましょう。 |
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管理人さんの仕訳問題の解き方を教えてください。 |
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私はまず、問題に列挙されている勘定科目群に線を入れて「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」「その他」などに分けて見やすくします。 そのさいに気になる勘定科目があったらマルで囲んで目立たせておきます。今回の問題ですと「営業外受取手形」「営業外支払手形」あたりの勘定科目は要注意ですよね。 次に、問題文を読んで解答のカギになりそうなところにアンダーラインを引きます。問1なら「研究開発」「10%」「税込方式」「商品勘定」「売上原価勘定」、問2なら「益金不算入」「40%」、問3なら「前期首」「当期首の帳簿価額」、問4なら「約束手形」「資産の勘定」、問5なら「本店集中計算制度」「本店」「仕訳なし」「銀座支店」などです。 このような準備をしたうえで解答仕訳を考えますが、答案用紙に勘定科目を書くさいには、問題に列挙されている勘定科目を毎回必ずチェックして打ち消し線を引くことを徹底しましょう。 ひと手間を加えるだけで「指定されていない勘定科目で解答してしまう」という非常にもったいないケアレスミスをなくすことができます。 |