仕訳問題(類題)
重要度:★★☆ 難度:★☆☆
株式会社ザックの本店は、長谷部支店が大久保支店の広告宣伝費 ¥ 140,000 を立て替え払いしたとの報告を受けたので適切に処理した。なお、同社は本店集中計算制度を採用している。
勘定科目は、次の中から最も適当と思われるものを選びなさい。 | |||
---|---|---|---|
現金 | 当座預金 | 売掛金 | 未収入金 |
前払金 | 買掛金 | 未払金 | 広告宣伝費 |
支払利息 | 本店 | 長谷部支店 | 大久保支店 |
解答仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | ||
---|---|---|---|---|---|
大久保支店 | 140,000 | 長谷部支店 | 140,000 |
解説
本支店会計に関する問題です。
支店間取引については「本店集中計算制度」と「支店分散計算制度」の2つがあり、採用している制度により仕訳が異なるので、まずは両制度の概要を確認しましょう。
本店集中計算制度
支店間取引をそれぞれの支店が記帳する場合に、本店を相手にすべて取引したものとみなして記帳する制度です。各支店は本店勘定のみを設定し、本店は各支店の勘定を設定します。
本店集中計算制度は、本店が「本店⇔支店」の取引だけでなく「支店⇔支店」の取引まで全て把握することができるので、本店による支店管理の観点からは望ましい制度ですが、記帳事務が煩雑になるというデメリットもあります。
支店分散計算制度
支店間取引をそれぞれの支店が記帳する場合に、本店を経由することなく、取引の事実に従って記帳する制度です。各支店は本店勘定だけでなく取引のある各支店の勘定を設定し、本店は各支店の勘定を設定します。
支店分散計算制度は、本店集中計算制度に比べて記帳事務を簡略化することができますが、本店が「支店⇔支店」の取引をリアルタイムに把握できないというデメリットもあります。
それでは、上記のことを踏まえたうえで実際に問題を考えていきましょう。本問は、本店集中計算制度による本店の仕訳を問う問題ですが、パッと解答仕訳を導き出せない方は本店だけでなく長谷部支店や大久保支店の仕訳も考えると分かりやすいです。
まず、問題文の「長谷部支店が大久保支店の広告宣伝費 ¥ 140,000 を立て替え払いしたとの報告を受けた」という一文から、大久保支店において広告宣伝費140,000円が発生し、長谷部支店の現金(説明の便宜上、現金で支払ったと仮定します)が140,000円減少したことが分かります。
また、本問は本店集中計算制度を採用しているので、「大久保支店は本店に広告宣伝費140,000円を払ってもらった→本店は大久保支店に対して同額の債権が発生した」と考えるとともに、「長谷部支店は本店の広告宣伝費140,000円を立て替え払いした→本店は長谷部支店に対して同額の債務が発生した」と考えます。
(貸)本店 140,000
(貸)現金 140,000
(貸)長谷部支店 140,000
- 大久保支店の貸方の本店勘定 ←対応→ 本店の借方の大久保支店勘定
- 長谷部支店の借方の本店勘定 ←対応→ 本店の貸方の長谷部支店勘定
最後に、本店集中計算制度ではなく支店分散計算制度を採用している場合は、本店を経由せずに仕訳を切ります。参考までに、上記の仕訳と対比して押さえておいてください。
(貸)長谷部支店 140,000
(貸)現金 140,000
- 大久保支店の貸方の長谷部支店勘定 ←対応→ 長谷部支店の借方の大久保支店勘定
本支店会計に関する問題は、第116回の問3や第121回の問1、第126回の問5、第140回の問2、第142回の問5、第145回の問5、第151回の問1でも出題されています。あわせてご確認ください。