第156回日商簿記検定2級 第3問(連結財務諸表)の過去問分析

第3問 作問者の優しさ(?)がちょっと垣間見える連結貸借対照表の作成問題。

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【連結財務諸表】の作成問題でした。

 本問は、問題資料の形式が独特なため、なんとなく手も足も出ないような難問に見えますが、親会社の(個別の)決算整理事項を処理して子会社の金額と合算するだけで8点(前払費用・建物減価償却累計額・備品減価償却累計額・退職給付に係る負債)取れる配点になっています。

 また、その後の連結修正仕訳も(常軌を逸した難しさだった)第153回に比べるとかなり易しいので、すぐに諦めてしまわずに解ける部分だけでもがんばって埋めてみると意外と点数が取れます。

 受験生アンケートでは、約80%の方が「かなり難しかった」「やや難しかった」と回答しています。目標は10点です。

本問の解答順序

 問題資料1で与えられている親会社の試算表は決算整理残高試算表、子会社の試算表は決算整理残高試算表という変則的な組み合わせになっています。

 まずは、問題資料2の「P社の決算整理事項」を処理して決算整理の状態に揃えたうえで、問題資料3をもとに連結修正仕訳を行って答案用紙の連結貸借対照表を作成しましょう。

P社の決算整理仕訳

P社の決算整理事項1(外貨建取引)

(借)売掛金 1,000 ※1
 (貸)為替差損益 1,000

※1 13,000千円-12,000千円=1,000千円

 外貨建て債権の評価替えに関する仕訳です。円換算額の差額を為替差損益で処理しましょう。

  • 為替差損益:13,000千円-12,000千円=1,000千円(貸方)
    • 取得時レートによる円換算額:12,000千円
    • 決算時レートによる円換算額:12,000千円÷@120円=100,000ユーロ 100,000ユーロ×@130円=13,000千円

P社の決算整理事項2(貸倒引当金の設定)

(借)貸倒引当金繰入 1,460 ※2
 (貸)貸倒引当金 1,460

※2 3,360千円-1,900千円=1,460千円

 貸倒引当金の設定に関する仕訳です。

 問題文に「S社に対する7,000千円を除く」とあるので、貸倒引当金繰入額の算定にあたって7,000千円を除外するとともに、上記の決算整理事項1で借方に計上した売掛金1,000千円を加えて計算しましょう。

  • 売掛金の期末残高:342,000千円-7,000千円1,000千円=336,000千円
  • 貸倒引当金の要設定額:336,000千円×1%=3,360千円
  • 貸倒引当金の残高:1,900千円
  • 貸倒引当金の繰入額:3,360千円-1,900千円=1,460千円

P社の決算整理事項3(減価償却)

(借)減価償却費 31,800 ※5
 (貸)建物減価償却累計額 7,800 ※3
 (貸)備品減価償却累計額 24,000 ※4

※3 234,000千円÷30年=7,800千円

※4 (100,000千円-40,000千円)×40%=24,000千円

※5 7,800千円+24,000千円=31,800千円(貸借差額)

 固定資産の減価償却に関する仕訳です。

 建物は償却方法が定額法なので、決算整理前残高試算表の建物減価償却累計額の金額が分からなくても当期の減価償却費を求めることができます。

定額法の減価償却費=取得原価÷耐用年数

  • 建物
    • 当期の減価償却費:234,000千円÷30年=7,800千円
    • 決算整理前残高試算表の建物減価償却累計額:7,800千円×10年=78,000千円

 一方、備品の償却方法は200%定率法なので、当期の減価償却費を求めるためには備品減価償却累計額の金額が必要になります。よって、まずは前期末までの減価償却累計額を計算したうえで、当期の減価償却費を求めましょう。

定率法の減価償却費=(取得原価-減価償却累計額)×償却率

  • 備品
    • 償却率:1÷5年×200%=40%
    • 決算整理前残高試算表の備品減価償却累計額:100,000千円×40%=40,000千円
    • 当期の減価償却費:(100,000千円-40,000千円)×40%=24,000千円

P社の決算整理事項4(退職給付)

(借)退職給付費用 6,800
 (貸)退職給付引当金 6,800

 退職給付引当金に関する仕訳です。

 退職給付引当金は「引当金」というよりも「負債」の性格が強いため、連結貸借対照表では退職給付に係る負債という科目で表示します。

P社の決算整理事項5(リース取引)

(借)前払リース料 12,000 ※6
 (貸)支払リース料 12,000

※6 @2,000千円×6か月=12,000千円

 オペレーティング・リースに関する仕訳です。

 問題文の「3年前から継続して向こう1年分のリース料を10月1日に毎年同額ずつ支払った」から、決算整理前残高試算表の支払リース料の金額が18か月分のリース料の金額であることが分かります。

期首の再振替仕訳で振り替えた4月1日から9月30日までの6か月分、10月1日に計上した10月1日から翌9月30日までの12か月分の合計18か月分です。

 よって、翌期の4月1日から9月30日までの6か月分を前払リース料に振り替えます。なお、前払リース料は連結貸借対照表では前払費用という科目で表示します。

  • 決算整理前残高試算表の支払リース料:36,000千円
  • 1か月あたりのリース料:36,000千円÷18か月=@2,000千円
  • 6か月分のリース料:@2,000千円×6か月=12,000千円

連結修正仕訳

 問題資料2の「P社の決算整理事項等」を適切に処理したら、問題資料3の「P社とS社の連結に際し、必要となる事項」の処理に移ります。

 本問は連結第2年度の連結貸借対照表を作成する問題ですが、まずは連結第1年度の仕訳から順番に確認していきましょう。

参考①:支配獲得時の仕訳(×1年4月1日)
(借)資本金 150,000
(借)資本剰余金 150,000
(借)利益剰余金 130,000
(借)のれん 142,000 ※8
 (貸)子会社株式 400,000
 (貸)非支配株主持分 172,000 ※7

※7 430,000千円×40%=172,000千円

※8 400,000千円+172,000千円-150,000千円-150,000千円-130,000千円=142,000千円(貸借差額)

 貸借差額をのれんで処理します。

参考②:のれんの償却(×1年3月31日)
(借)利益剰余金 14,200 ※9
 (貸)のれん 14,200

※9 142,000千円÷10年=14,200千円

 問題文の指示に従って、支配獲得時に計上したのれん142,000千円を10年にわたって均等償却します。

参考③:子会社の当期純利益の振り替え(×1年3月31日)
(借)利益剰余金 42,480 ※10
 (貸)非支配株主持分 42,480

※10 106,200千円×40%=42,480千円

 S社の決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金211,200千円には当期の純利益は含まれていないため、この211,200千円に当期の配当額25,000千円を加算した金額が連結第1年度末の利益剰余金の金額(236,200千円)になります。

決算整理後残高試算表は、決算整理前残高試算表に決算整理事項等を反映しただけの状態です。決算振替仕訳(諸収益・諸費用を損益に振り替え、さらに損益を繰越利益剰余金に振り替える仕訳)はまだ行われていないため、決算整理後残高試算表の繰越利益剰余金に当期純利益は含まれていません。

  • 決算の流れ
    1. 決算整理前残高試算表を作る(←P社の試算表はココ)
    2. 未処理事項・決算整理事項を適切に処理する
    3. 決算整理後残高試算表を作る(←S社の試算表はココ
    4. 決算振替仕訳をする(←当期純利益を計算するのはココ
      • 収益・費用の各勘定の残高を損益勘定に振り替える
      • 損益勘定の貸借差額(当期純利益or当期純損失)を繰越利益剰余金勘定に振り替える
    5. 各勘定を締め切る
    6. 財務諸表を作る
  • 繰越利益剰余金の違い
    • 決算整理後残高試算表:決算振替仕訳の前に作成→繰越利益剰余金に当期純利益は含まれない。
    • 貸借対照表:決算振替仕訳の後に作成→繰越利益剰余金に当期純利益が含まれる。

 よって、支配獲得後から連結第1年度末までに増加した子会社の利益剰余金は、106,200千円(=211,200千円+25,000千円-130,000千円)と計算することができます。あとはこの金額に非支配株主持分の40%を乗じて仕訳の金額を求めましょう。

利益剰余金の増減
利益剰余金の増減

連結修正仕訳1(開始仕訳)

(借)資本金 150,000
(借)資本剰余金 150,000
(借)利益剰余金 186,680 ※11
(借)のれん 127,800 ※12
 (貸)子会社株式 400,000
 (貸)非支配株主持分 214,480 ※13

※11 130,000千円+42,480千円+14,200千円=186,680千円

※12 142,000千円-14,200千円=127,800千円

※13 172,000千円+42,480千円=214,480千円

 上記の①②③の仕訳を合算すると、連結第2年度の開始仕訳になります。子会社の当期純利益の振り替えの処理が難しいですよね…。

連結修正仕訳2(のれんの償却)

(借)のれん償却 14,200 ※14
 (貸)のれん 14,200

※14 142,000千円÷10年=14,200千円

 連結第1年度と同様に均等償却します。

連結修正仕訳3(子会社の当期純利益の振り替え&配当の処理)

(借)非支配株主に帰属する当期純損益 27,480 ※15
 (貸)非支配株主持分 27,480
(借)受取配当金 15,000 ※16
(借)非支配株主持分 10,000 ※17
 (貸)利益剰余金 25,000

※15 68,700千円×40%=27,480千円

※16 25,000千円×60%=15,000千円

※17 25,000千円×40%=10,000千円

 連結第2年度の子会社の当期純利益は、決算整理後残高試算表の売上・売上原価・販売費及び一般管理費・土地売却損の金額を使って計算しましょう。

  • 当期純利益:546,900千円-478,200千円=68,700千円
    • 収益:売上546,900千円
    • 費用:売上原価275,500千円+販売費及び一般管理費192,700千円+土地売却損10,000千円=478,200千円

連結修正仕訳4(商品売買にかかる内部取引高・未実現利益の消去)

(借)売上 91,000
 (貸)売上原価 91,000
(借)利益剰余金 900 ※18
 (貸)売上原価 900
(借)売上原価 1,500 ※19
 (貸)商品 1,500

※18 3,900千円-3,900千円÷1.3=900千円(期首商品分)

※19 6,500千円-6,500千円÷1.3=1,500千円(期末商品分)

 問題文に「S社向けの売上高は91,000千円」とあるので、まずは内部取引高を消去します。

 また、問題文の「前期・当期ともに原価に30%の利益を加算して単価を決定している」から、期首商品・期末商品に含まれる未実現利益の金額を計算しましょう。

  • 期首商品に含まれる未実現利益:3,900千円-3,900千円÷1.3=900千円
  • 期末商品に含まれる未実現利益:6,500千円-6,500千円÷1.3=1,500千円

 なお、本取引はダウンストリーム(P社→S社)なので、消去する未実現利益の一部を非支配株主に負担させる必要はありません。

連結修正仕訳5(非償却性資産にかかる未実現損失の消去)

(借)土地 10,000 ※20
 (貸)土地売却損 10,000
(借)非支配株主に帰属する当期純損益 4,000 ※21
 (貸)非支配株主持分 4,000

※20 90,000千円-80,000千円=10,000千円

※21 10,000千円×40%=4,000千円

 非償却性資産の未実現利益の消去はよく見ますが、未実現損失の消去というのは珍しいですよね。ただ、基本的な考え方は未実現利益の消去と全く同じです。

 なお、本取引はアップストリーム(S社→P社)なので、消去する未実現損失の一部を非支配株主にも負担させましょう。

連結修正仕訳6(債権・債務の相殺消去)

(借)買掛金 7,000
 (貸)売掛金 7,000
(借)未払金 80,000
 (貸)未収入金 80,000

 連結会社間の債権・債務を相殺します。金額のズレはないですし、連結会社間の債権に関して貸倒引当金を設定していないため(※資料2の2を参照)、単純に債権・債務を相殺するだけでOKです。

連結修正仕訳7(退職給付)

仕訳なし

 問題文に「P社およびS社の個別上の数値をそのまま合算する」とあるので、指示どおりに合算すればOKです。

連結貸借対照表の各金額

  • 資産の部
    • 現金預金:P社407,500千円+S社48,100千円=455,600千円
    • 売掛金:P社342,000千円+S社180,000千円+1,000千円-7,000千円=516,000千円
    • 貸倒引当金:P社1,900千円+S社1,800千円+1,460千円=5,160千円
    • 商品:P社276,000千円+S社150,400千円-1,500千円=424,900千円
    • 前払費用:12,000千円
    • 建物:P社234,000千円+S社100,000千円=334,000千円
    • 建物減価償却累計額:P社78,000千円+S社30,000千円+7,800千円=115,800千円
    • 備品:P社100,000千円+S社50,000千円=150,000千円
    • 備品減価償却累計額:P社40,000千円+S社10,000千円+24,000千円=74,000千円
    • 土地:P社319,000千円+S社90,000千円+10,000千円=419,000千円
    • のれん:127,800千円-14,200千円=113,600千円
  • 負債の部
    • 買掛金:P社89,000千円+S社54,000千円-7,000千円=136,000千円
    • 未払金:P社100,000千円+S社3,000千円-80,000千円=23,000千円
    • 退職給付に係る負債:P社72,000千円+S社19,800千円+6,800千円=98,600千円
  • 純資産の部
    • 資本金:P社700,000千円+S社150,000千円-150,000千円=700,000千円
    • 資本剰余金:P社440,000千円+S社150,000千円-150,000千円=440,000千円
    • 利益剰余金:596,580千円 ※下記参照
    • 非支配株主持分:214,480千円+27,480千円-10,000千円+4,000千円=235,960千円

利益剰余金について

 利益剰余金に関しては「問題資料1のP社・S社の利益剰余金(利益準備金・繰越利益剰余金)の金額」「P社・S社の個別会計上の当期純利益の金額」「連結修正仕訳の損益項目の金額」の3つを加減算して求めます。

 参考までに利益剰余金の計算過程をご紹介しますが、処理をひとつでも間違えると金額がズレてしまうため、本試験においては捨て問(=解く必要のない設問)になります。

  • 問題資料1の利益剰余金の金額
    • P社:160,000千円+274,700千円=434,700千円
    • S社:211,200千円
  • 個別会計上の当期純利益の金額
    • P社:1,038,000千円(売上)+15,000千円(受取配当金)-574,000千円(売上原価)-320,100千円(販売費及び一般管理費)-36,000千円(支払リース料)+1,000千円(為替差損益)-1,460千円(貸倒引当金繰入)-31,800千円(減価償却費)-6,800千円(退職給付費用)+12,000千円(支払リース料)=95,840千円
    • S社:546,900千円(売上)-275,500千円(売上原価)-192,700千円(販売費及び一般管理費)-10,000千円(土地売却損)=68,700千円
  • 連結修正仕訳の利益剰余金および損益項目の金額
    • 利益剰余金:-186,680千円(開始仕訳)+25,000千円(受取配当金)-900千円(期首商品の未実現利益)=▲162,580千円
    • 損益項目:-14,200千円(のれん償却)-27,480千円(非支配株主に帰属する当期純損益)-15,000千円(受取配当金)-1,500千円(売上原価)+900千円(売上原価)+10,000千円(土地売却損)-4,000千円(非支配株主に帰属する当期純損益)=▲51,280千円
  • 貸借対照表の利益剰余金の金額:434,700千円+211,200千円+95,840千円+68,700千円-162,580千円-51,280千円=596,580千円


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