第154回日商簿記検定3級 第3問(残高試算表)の過去問分析

第3問 当座預金口座が2つ登場する試算表作成問題。仕訳時にひと工夫しましょう。

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【残高試算表】の作成問題でした。

 当座預金口座が2つ(当座預金近畿銀行、当座預金関東銀行)登場するので、仕訳を考えるさいにひと工夫する必要がありますが、全体的な難度・ボリュームは平均~やや易しいレベルの問題です。

 難易度アンケートでも、約70%の受験生が「かなり簡単だった」「やや簡単だった」と回答しています。

解答方法について

 試算表の解答方法は【①下書用紙にT勘定を設定して解く方法】と【②全仕訳を下書きしたうえで集計するオーソドックスな方法】の2種類があります。

 本問は、問題資料が日付別で与えられているため、二重仕訳を考慮する必要がありません。よって、①のT勘定を使って解くことをおすすめします。

  • T勘定を使って解く方法のメリット
    • マスターすれば早く解ける
    • 集計もれが減る(→ケアレスミスが減る)
    • なんかカッコいい(→意外と大事)
  • T勘定を使って解く方法のデメリット
    • 慣れるまでは逆に時間がかかる

 T勘定を使って解く方法は、頭の中で仕訳を考えて各勘定に直接金額を入れていく形になるので、慣れるまでは時間がかかってしまいますが、一度マスターすれば大きな武器になります。

 これから勉強される方はぜひ【①下書用紙にT勘定を設定して解く方法】をマスターしてください。

仕訳を全て下書きしたうえでT勘定を作って解いている方がたまにいますが、これは時間がかかるだけでメリットがないのでおすすめしません。必ず頭の中で仕訳を考えたうえで、各勘定に直接金額を入れていく解法をマスターしてください。

①T勘定を使って解く方法の解答手順

 まずは、よく出てくる11勘定(現金当座預金近畿銀行当座預金関東銀行受取手形売掛金電子記録債権支払手形買掛金電子記録債務売上仕入)について、下書用紙にT勘定を設定しましょう。また、その他の勘定科目は「その他」勘定に記入・集計します。

 各勘定の位置に決まりはありませんが、下書きを定型化するために毎回同じ場所に書くことをおすすめします。私は下書き用紙を横向きにして4等分し、以下のように書くと決めています。

  • 一番左の列:現金預金に関するもの(現金・当座預金・普通預金)など
  • 左から2番めの列:売上取引に関するもの(受取手形・売掛金・電子記録債権・売上など)
  • 右から2番めの列:仕入取引に関するもの(支払手形・買掛金・電子記録債務・仕入など)
  • 一番右の列:その他
第3問の下書き1
第3問の下書き1(PDF版

 次に、前月末(×7年1月31日)時点の各勘定の借方残高または貸方残高を記入します。金額は答案用紙の残高試算表からひっぱってきましょう。

第3問の下書き2
第3問の下書き2(PDF版

 前月末=当月初の金額を記入したら、問題資料の2月中の取引を頭の中で仕訳して、11個の勘定+その他勘定に記入していきます(※難しい処理は一度、仕訳を下書きしてから記入してもOKです)。

 なお、「その他」勘定に勘定科目を記入するさいは、貸損(貸倒損失)水ヒ(水道光熱費)のように勘定科目を可能なかぎり省略してスピードアップを図ることをおすすめします。

 簿記検定ナビでは、勘定科目の省略パターン一覧表ページで勘定科目の短縮例などをまとめています。興味のある方はぜひご確認ください。

第3問の下書き3
第3問の下書き3(PDF版

 2月中の取引をすべて処理したら、最後に11個の勘定を締め切って答案用紙に金額を記入します。

 本問は残高試算表を作成する問題ですので、各勘定を締め切るさいには借方残高または貸方残高のみを計算しましょう(※借方合計・貸方合計は不要です)。

 なお、「その他」勘定は締め切り不要です。答案用紙の残高試算表の1月末の金額に、「その他」勘定に計上した2月中の取引の金額を加減算して、2月末の金額を求めましょう。

第3問の下書き4
第3問の下書き4(PDF版

参考:合計試算表&合計残高試算表の場合の下書き

 仮に、本問の解答要求が合計試算表・合計残高試算表の場合は、以下のように締め切ると分かりやすいです。上で紹介している残高試算表の締め切り方とあわせて押さえておきましょう。

 合計試算表を作成する場合、借方合計および貸方合計のみを計算しましょう(※借方残高・貸方残高は不要です)。

合計試算表のT勘定の締め切り方
合計試算表のT勘定の締め切り方( PDF版

 合計残高試算表を作成する場合、いったん借方合計および貸方合計を計算したうえで、その下に借方残高または貸方残高を記入しましょう。

合計残高試算表のT勘定の締め切り方
合計残高試算表のT勘定の締め切り方( PDF版

②全仕訳を下書きして集計する方法の解答手順

 ×7年2月中の全取引の仕訳を下書用紙に書いて集計しましょう。

 なお、本問は当座預金口座が2つ登場するので、各取引の仕訳をするさいは「当座預金近畿銀行」「当座預金関東銀行」ときちんと区別して書いてください。

 また、解答時間を短縮するために勘定科目・金額をなるべく省略した形で書きましょう(ex.当座預金近畿銀行→当キ、当座預金関東銀行→当カ、電子記録債権→電けん、電子記録債務→電むなど)。

参考:×7年2月中の取引の仕訳

1日の仕訳
(借)仕入 520,000
 (貸)買掛金 500,000
 (貸)現金 20,000

 当社負担の引取運賃は、仕入原価に含めて処理します。

  • 仕入時の諸掛り
    • 当社負担:仕入原価に含めて処理
    • 仕入先負担:立替金で処理or買掛金から差し引いて処理
  • 売上時の諸掛り
    • 当社負担:発送費などで費用処理
    • 得意先負担:立替金で処理or売掛金に含めて処理
2日の仕訳
(借)売掛金 800,000
 (貸)売上 800,000
4日の仕訳
(借)当座預金近畿銀行 500,000
 (貸)売掛金 500,000
5日の仕訳
(借)買掛金 130,000
 (貸)当座預金近畿銀行 130,000
8日の仕訳
(借)売掛金 390,000
 (貸)売上 390,000
9日の仕訳
(借)仕入 450,000
 (貸)買掛金 450,000
10日の仕訳
(借)所得税預り金 7,000
 (貸)当座預金近畿銀行 7,000

 源泉徴収額を納付したさいには、所得税預り金の減少として処理します。

11日の仕訳
(借)当座預金関東銀行 200,000
 (貸)電子記録債権 200,000
12日の仕訳
(借)電子記録債務 120,000
 (貸)当座預金関東銀行 120,000
17日の仕訳
(借)電子記録債権 900,000
 (貸)売掛金 900,000
18日の仕訳
(借)貸倒損失 10,000
 (貸)電子記録債権 10,000

 前期以前に発生した売上債権(受取手形や売掛金、電子記録債権など)が貸倒れた場合、通常は貸倒引当金を取り崩して処理しますが、本問は問題文に「貸倒引当金の残高はゼロである」とあるので、貸倒れた全額を貸倒損失で処理します。

19日の仕訳
(借)買掛金 700,000
 (貸)電子記録債務 700,000
22日の仕訳
(借)当座預金近畿銀行 75,000
 (貸)受取手形 75,000
23日の仕訳
(借)当座預金近畿銀行 50,000
 (貸)当座預金関東銀行 50,000
24日の仕訳
(借)支払手形 170,000
 (貸)当座預金近畿銀行 170,000
25日の仕訳
(借)給料 140,000
 (貸)所得税預り金 6,000
 (貸)当座預金関東銀行 134,000
28日の仕訳
(借)水道光熱費 12,000
(借)通信費 9,000
 (貸)当座預金関東銀行 21,000

参考:出題の意図

【出題の意図】
 複数の銀行口座と電子記録債権・債務を含んだ残高試算表作成問題です。問題の解答方法としては、一般的であると言えます。複数の銀行口座を混同しないこと、電子記録債権・債務の処理を間違えないことは必須です。そのほか、注意すべき点は、電子記録債権の貸倒れ、源泉徴収額の処理などです。仕訳が困難である取引はあまりありませんので、注意深く丁寧、正確に処理することが求められます。
引用元:出題の意図・講評(日本商工会議所)


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