第154回日商簿記検定2級 第1問(仕訳問題)の過去問分析

第1問 難度の高い仕訳問題。問3・問4・問5の3つで12点を取れれば御の字です!

第1問の難度アンケート結果

 第1問は今回も【仕訳問題】でした。

 問1の「リース契約の解約」や問2の「返品調整引当金の設定」はかなり難度が高いため、この2問に関しては間違えても仕方がないです。

 また、問1や問5の「ソフトウェアの開発と除却」は複数の解答が考えられる問題だったので、どの仕訳で解答すべきか悩んでしまった受験生も多かったようです。

 受験生アンケートでも、約80%の方が「かなり難しかった」「やや難しかった」と回答しています。本問は、問3・問4・問5の3つで12点を取れればじゅうぶんです。

問1 リース取引

模範解答
(借)リース債務 1,440,000 ※1
 (貸)普通預金 1,440,000
(借)リース資産減価償却累計額 2,160,000 ※2
(借)固定資産除却損 1,440,000 ※3
 (貸)リース資産 3,600,000

※1 @60,000円×24か月=1,440,000円

※2 @60,000円×36か月=2,160,000円

※3 3,600,000円-2,160,000円=1,440,000円(貸借差額)

 リース取引に関する問題です。

 本問はまず、問題文の「×1年4月1日から、ファイナンス・リース取引に該当する事務機器のリース契約(期間5年間、月額リース料 ¥ 60,000 を毎月末支払い)を結び、利子込み法により会計処理してきた」から、契約時に以下のような仕訳をしたことが分かります。

参考:契約時の仕訳
(借)リース資産 3,600,000 ※4
 (貸)リース債務 3,600,000

※4 @60,000円×60か月=3,600,000円

 利子込み法による場合はリース料総額が取得原価になるため、月々の支払額60,000円にリース期間5年(60か月)を乗じてリース資産の取得原価を計算しましょう。

  • 利子込み法による場合の取得原価:リース料総額(本問)
  • 利子抜き法による場合の取得原価:見積現金購入価額

 また、問題文に「×4年3月31日でこのリース契約を解約して×4年以後の未払リース料の残額全額を普通預金から支払い」とあるので、×1年4月分から×4年3月分までの36か月分のリース料支払時の仕訳を考慮したうえで、貸方に残っている×4年4月分から×6年3月分までの24か月分のリース債務の残額を適切に処理しましょう。

参考:リース料支払時の仕訳(※×1年4月分から×4年3月分までの36か月分の処理をまとめた仕訳)
(借)リース債務 2,160,000 ※5
 (貸)現金など 2,160,000

※5 @60,000円×36か月=2,160,000円

解答①
(借)リース債務 1,440,000 ※6
 (貸)普通預金 1,440,000

※6 @60,000円×24か月=1,440,000円

 さらに、問題文の「このリース物件(×4年3月31日までの減価償却費は計上済)を貸手に無償で返却し除却の処理を行った」から、リース資産を除却したことが分かります。まずは×1年4月分から×4年3月分までの36か月分の減価償却の仕訳を考えましょう。

参考:減価償却の仕訳(※×1年4月分から×4年3月分までの36か月分の処理をまとめた仕訳)
(借)減価償却費 2,160,000 ※7
 (貸)リース資産減価償却累計額 2,160,000

※7 3,600,000円×36か月/60か月=2,160,000円

 上記の仕訳を踏まえたうえで、除却の処理を考えましょう。リース資産(取得原価)とリース資産減価償却累計額を相殺するとともに、貸借差額を固定資産除却損で処理します。

  • リース資産(取得原価):3,600,000円
  • リース資産減価償却累計額:2,160,000円
    • 貸借差額:3,600,000円-2,160,000円=1,440,000円(除却損)
解答②
(借)リース資産減価償却累計額 2,160,000
(借)固定資産除却損 1,440,000
 (貸)リース資産 3,600,000

 以上、①②をまとめると解答仕訳になります。

 本問は減価償却の記帳方法の指示がないため、除却に関する仕訳を「間接法」ではなく「直接法」で解答した方もいらっしゃるようです。

模範解答:間接法による場合の仕訳
(借)リース債務 1,440,000
 (貸)普通預金 1,440,000
(借)リース資産減価償却累計額 2,160,000
(借)固定資産除却損 1,440,000
 (貸)リース資産 3,600,000
別解:直接法による場合の仕訳
(借)リース債務 1,440,000
 (貸)普通預金 1,440,000
(借)固定資産除却損 1,440,000
 (貸)リース資産 1,440,000

 問題文に明確な指示がない以上、「直接法」による場合の仕訳も間違いではありませんので別解として点数がもらえます。

問2 返品調整引当金

模範解答
(借)返品調整引当金繰入 810,000 ※8
 (貸)返品調整引当金 810,000

※8 14,400,000円×50%×45%×25%=810,000円

 返品調整引当金に関する問題です。

 問題文の「直近の6か月の売上 ¥ 14,400,000 のうち50%はこのような契約をともなう売上であり、売上に対する返品率は45%と推定され、返品対象の売上総利益率は25%であった」から、直近6か月の売上に対する予想返品に含まれる売上総利益相当額を計算しましょう。

  • 返品調整引当金の対象になる売上:14,400,000円×50%=7,200,000円
  • 上記の売上に対する予想返品額:7,200,000円×45%=3,240,000円
  • 上記の予想返品額に含まれる売上総利益相当額:3,240,000円×25%=810,000円

 計算の結果、予想返品額に含まれる売上総利益相当額が810,000円であることが分かるので、問題文の指示に従って同額の返品調整引当金を設定しましょう。

問3 退職給付引当金

模範解答
(借)退職給付引当金 27,000,000
 (貸)預り金 4,000,000
 (貸)当座預金 23,000,000 ※9

※9 27,000,000円-4,000,000円=23,000,000円

 退職給付引当金に関する問題です。

 本問はまず、問題文の「従業員の退職時に支払われる退職一時金の給付は内部積立方式により行ってきた」から、従業員の退職に備えて退職給付引当金を積み立てていたことが分かります。

参考:積立時の仕訳(※説明の便宜上、仕訳を1本にまとめています)
(借)退職給付費用 27,000,000
 (貸)退職給付引当金 27,000,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、解答の仕訳を考えましょう。

 問題文に「源泉所得税分 ¥ 4,000,000 を控除した残額を当座預金から支払った」とあるので、退職一時金総額から源泉所得税を差し引いた残額23,000,000円(=27,000,000円-4,000,000円)を当座預金の減少として処理します。

問4 外貨建取引

模範解答
(借)売掛金 54,100,000
 (貸)売上 54,100,000 ※10

※10 300,000ドル×@107円+200,000ドル×@110円=54,100,000円

 外貨建取引に関する問題です。

 問題文の「1週間前に3か月後に300,000ドルを1ドル ¥ 107 で売却する為替予約が結ばれていた」から、売り上げた500,000ドルのうち300,000ドルについては為替予約を付していたことが分かるので、為替予約時の先物為替相場(@107円)で円換算額を計算します。

解答①(300,000ドル分の売上処理)
(借)売掛金 32,100,000 ※11
 (貸)売上 32,100,000

※11 300,000ドル×@107円=32,100,000円

 残りの200,000ドルについては為替予約を付していないので、輸出時の直物為替相場(@110円)で円換算額を計算します。

解答②(200,000ドル分の売上処理)
(借)売掛金 22,000,000 ※12
 (貸)売上 22,000,000

※12 200,000ドル×@110円=22,000,000円

 以上、①②をまとめると解答仕訳になります。

問5 ソフトウェア

模範解答
(借)ソフトウェア 25,000,000 ※13
(借)固定資産除却損 5,800,000
 (貸)ソフトウェア仮勘定 30,800,000

※13 30,800,000円-5,800,000円=25,000,000円(貸借差額)

 ソフトウェアに関する問題です。

 本問はまず、問題文の「社内利用目的のソフトウェア(開発費用 ¥ 30,800,000 は銀行振込により全額支払済み)」から、開発費用の支払時に以下のような仕訳をしたことが分かります。

参考:開発費用の支払時の仕訳
(借)ソフトウェア仮勘定 30,800,000
 (貸)現金など 30,800,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、解答の仕訳を考えましょう。

 問題文に「 ¥ 30,800,000 の中には、ソフトウェアの作り直し対象となった部分の費用 ¥ 5,800,000 が含まれており、資産性がないものとして除却処理する」とあるので、支払時に借方に計上したソフトウェア仮勘定30,800,000円のうち、5,800,000円に関しては固定資産除却損で処理し、残額をソフトウェアに振り替えます。

 模範解答の仕訳ではなく、ソフトウェア仮勘定の全額をいったんソフトウェアに振り替えたうえで、さらに除却分をソフトウェアから固定資産除却損に振り替えた方もいらっしゃると思います。

模範解答
(借)ソフトウェア 25,000,000
(借)固定資産除却損 5,800,000
 (貸)ソフトウェア仮勘定 30,800,000
別解:ソフトウェア仮勘定の全額をいったんソフトウェアに振り替える仕訳
(借)ソフトウェア 30,800,000
 (貸)ソフトウェア仮勘定 30,800,000
(借)固定資産除却損 5,800,000
 (貸)ソフトウェア 5,800,000

 問題文に明確な指示がない以上、ソフトウェア仮勘定の全額をいったんソフトウェアに振り替える仕訳も間違いではありませんので別解として点数がもらえます。

参考:出題の意図

【出題の意図】
問1:ファイナンス・リース取引に該当するリース契約を解約し、リース物件を貸手に返却し除却の処理を行うという一連の処理を、正しく仕訳できるかがポイントです。

問2:返品調整引当金の額を正しく見積計算して、繰入額を正しく仕訳できるかがポイントです。返品調整引当金は、今後収益認識に関する会計基準の適用により、「返品権付きの販売」の会計処理に移行しますが、会計処理のための計算過程は類似しており今後も実務を行う上で理解が必要と考えられます。

問3:内部積立方式により退職一時金の給付を行っている会社において、退職給付がなされた場合を源泉所得税の処理も含めて、適切な勘定科目で処理できるかがポイントです。

問4:外貨建の輸出取引について、取引前に一部為替予約が付されている場合に、売上と売掛金の仕訳が正しくできるかがポイントです。

問5:ソフトウェアの開発と資産計上について、開発費用の中に資産性のないものが含まれていたことも含めて正しく仕訳できるかがポイントです。建設工事の建設仮勘定から固定資産の本勘定の仕訳で、修繕費や消耗品費のような費用項目が含まれていた場合を思い浮かべれば、解答はより容易であったと思われます。
引用元:出題の意図・講評(日本商工会議所)

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