第3問 難度・量ともに平均レベルの試算表作成問題。T勘定を使って解きましょう。
第3問は【残高試算表】の作成問題です。
剰余金の配当や電子記録債権、仮払法人税等など、新しく追加された論点の出題がいくつかありましたが、全体的な難度・ボリュームは平均~やや易しいレベルの問題です。
解答方法について
試算表の解答方法は「①下書用紙にT勘定を設定して解く方法」と「②全仕訳を下書きしたうえで集計するオーソドックスな方法」の2種類があります。
本問は、問題資料が日付別で与えられているため、二重仕訳を考慮する必要がありません。よって、①のT勘定を使って解くことをおすすめします。
- T勘定を使って解く方法のメリット
- マスターすれば早く解ける
- 集計もれが減る(=ケアレスミスが減る)
- なんかカッコいい(意外と大事)
- T勘定を使って解く方法のデメリット
- 慣れるまでは逆に時間がかかる
T勘定を使って解く方法は、頭の中で仕訳を考えて各勘定に直接金額を入れていく形になるので、慣れるまでは時間がかかってしまいますが、一度マスターすれば大きな武器になります。
これから勉強される方はぜひ「仕訳を書かずにT勘定を使って解く方法」をマスターしてください。
仕訳を全て下書きしたうえでT勘定を作って解いている方がたまにいますが、これは時間がかかるだけでメリットがないのでおすすめしません。必ず頭の中で仕訳を考えたうえで、各勘定に直接金額を入れていく形をマスターしてください。
①T勘定を使って解く方法の解答手順
頻出する7勘定(現金・普通預金・電子記録債権・売掛金・買掛金・売上・仕入)についてT勘定を設定して集計しましょう。その他の勘定科目は「その他」勘定に記入・集計します。
各勘定の位置に決まりはありませんが、下書きを定型化するために毎回同じ場所に書くことをおすすめします。私の場合、下書き用紙を横向きにして4等分し、以下のように書くと決めています。
- 一番左の列:現金預金に関するもの(現金・当座預金・普通預金)など
- 左から2番めの列:売上取引に関するもの(受取手形・電子記録債権・売掛金・売上など)
- 右から2番めの列:仕入取引に関するもの(支払手形・電子記録債務・買掛金・仕入など)
- 一番右の列:その他

次に、前月末(×7年10月31日)時点の各勘定の「借方に計上されている金額」または「貸方に計上されている金額」を記入します。金額は答案用紙の残高試算表からひっぱってきましょう。

前月末=当月初の金額を記入したら、問題資料の11月中の取引を頭の中で仕訳して、7つの勘定+その他勘定に記入していきます(※難しい処理は一度、仕訳を下書きしてから記入してもOKです)。
なお、「その他」勘定に勘定科目を記入するさいは、うり(受取利息)やしや(支払家賃)のように勘定科目を可能なかぎり省略してスピードアップを図ることをおすすめします。
簿記検定ナビでは、勘定科目の省略パターン一覧表ページで勘定科目の短縮例などをまとめています。興味のある方はぜひご確認ください。

最後に7つの勘定を締め切って、その他勘定の金額とともに答案用紙に記入します。
本問は残高試算表を作成する問題なので、各勘定を締め切るさいには借方残高または貸方残高のみを計算しましょう(※借方合計・貸方合計は不要です)。
なお、「その他」勘定は締め切り不要です。答案用紙の残高試算表の10月末の金額に、「その他」勘定に計上した11月中の取引の金額を加減算して、11月末の金額を求めましょう。

参考:合計試算表&合計残高試算表の場合の下書き
仮に、本問の解答要求が合計試算表・合計残高試算表の場合は、以下のように締め切ると分かりやすいです。上で紹介している残高試算表の締め切り方とあわせて押さえておきましょう。
合計試算表の下書き

合計試算表を作成する場合、借方合計および貸方合計のみを計算しましょう(※借方残高・貸方残高は不要です)。
合計残高試算表の下書き

合計残高試算表を作成する場合、いったん借方合計および貸方合計を計算したうえで、その下に借方残高または貸方残高を記入しましょう。
②全仕訳を下書きして集計する方法の解答手順
×7年11月中の全取引の仕訳を下書用紙に書いて集計しましょう。
上にも書きましたが、各仕訳を下書用紙に書くさいは解答時間を短縮するために勘定科目・金額をなるべく省略した形で書きましょう。
参考:×7年11月中の取引の仕訳
(貸)買掛金 800,000
(貸)現金 500
請求書の内容が分からないため、ここでは郵送代金のみを通信費で処理します。
(借)通信費 10,000
(貸)現金 30,000 ※1
※1 20,000円+10,000円=30,000円
収入印紙の購入代金は租税公課で、郵便切手の購入代金は通信費で費用処理します。
(貸)売上 400,000
(貸)売掛金 50,000
未販売の商品を誤って売上処理していることが判明した場合、売上処理時の逆仕訳を切ります。
(貸)普通預金 400,000
(貸)利益準備金 40,000
※2 400,000円+40,000円=440,000円
株主配当金は、株主総会の決議時に未払配当金を計上するケースが多いですが、本問は「株主配当金はただちに普通預金口座から振り込んだ」という指示があるので、未払配当金を経由せずに普通預金の減少として処理します。
(貸)売掛金 400,000
売掛金を電子記録債権に振り替えます。
(貸)普通預金 18,000
(貸)売上 1,500,000
(貸)電子記録債権 300,000
(貸)貸付金 200,000
(貸)受取利息 5,000
※3 200,000円+5,000円=205,000円
(貸)所得税預り金 16,000
(貸)普通預金 384,000 ※4
※4 400,000円-16,000円=384,000円
(貸)買掛金 620,000
(貸)売掛金 2,050,000
(借)買掛金 1,700,000
(貸)普通預金 1,700,000
(貸)普通預金 200,000
(借)通信費 20,000
(貸)普通預金 170,000 ※5
※5 150,000円+20,000円=170,000円
(貸)普通預金 500,000
法人税等を中間納付した場合、仮払法人税等の増加として処理します。