第153回日商簿記検定2級 第1問(仕訳問題)の過去問分析

第1問 利益処分の仕訳は10分の1だけでなく4分の1規定のチェックもお忘れなく!

第1問の難度アンケート結果

 第1問は今回も【仕訳問題】でした。

 問5の「利益処分」はやや難度が高いですが、重要仕訳TOP100でも重点的に取り上げていた論点なので、きちんと仕訳対策をしていた方は正しい金額を計算できたと思います。

 受験生アンケートでは、50%以上の方が「かなり簡単だった」「やや簡単だった」と回答しています。第3問の難度を考えますと…最低でも16点、できれば20点満点を取りたい問題です。

問1 研究開発費

模範解答
(借)研究開発費 870,000 ※2
 (貸)当座預金 570,000 ※1
 (貸)普通預金 300,000

※1 500,000円+70,000円=570,000円

※2 570,000円+300,000円=870,000円(貸借差額)

 研究開発費に関する問題です。

 研究開発に関する費用は、その種類に関係なく全額を研究開発費で処理します。

 本問の場合、研究開発用の備品 ¥ 500,000 と実験用の薬剤 ¥ 70,000、研究開発に従事しているスタッフの人件費 ¥ 300,000 の全額を研究開発費に計上します。

研究開発費=500,000円+70,000円+300,000円=870,000円

問2 債権の貸倒れ

模範解答
(借)貸倒引当金 320,000
(借)貸倒損失 280,000 ※3
 (貸)売掛金 600,000

※3 600,000円-320,000円=280,000円

 債権の貸倒れに関する問題です。

 本問は、取引を【前期に発生した売掛金の貸倒れに関する取引】と【当期に発生した売掛金の貸倒れに関する取引】に分けて考えましょう。

 前期の販売から生じた売掛金は、前期末において貸倒引当金の設定額を計算するさいの「金銭債権の金額」に含まれるため、これが貸倒れた場合には貸倒引当金を取り崩して処理します。

貸倒引当金の設定額=金銭債権の金額×貸倒実績率

 よって、貸倒れた400,000円のうち320,000円は貸倒引当金を取り崩して処理し、残額の80,000円(=400,000円-320,000円)は貸倒損失で処理します。

解答①(前期に発生した売掛金の貸倒れに関する仕訳)
(借)貸倒引当金 320,000
(借)貸倒損失 80,000
 (貸)売掛金 400,000

 当期の販売から生じた売掛金は、前期末において貸倒引当金の設定額を計算するさいの「金銭債権の金額」に含まれない(=前期末の時点ではそもそも存在していない)ため、これが貸倒れた場合でも貸倒引当金を取り崩すことはできません。

 よって、貸倒れた200,000円(=600,000円-400,000円)は、全額を貸倒損失で処理します。

解答②(当期に発生した売掛金の貸倒れに関する仕訳)
(借)貸倒損失 200,000
 (貸)売掛金 200,000

 以上、①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります。

問3 固定資産の圧縮記帳&減価償却

(1)の模範解答
(借)備品 3,600,000 ※4
 (貸)当座預金 3,600,000
(借)固定資産圧縮損 1,800,000
 (貸)備品 1,800,000

※4 @144,000円×25台=3,600,000円

(2)の模範解答
(借)減価償却費 420,000 ※5
 (貸)備品 420,000

※5 (3,600,000円-1,800,000円)×40%×7か月/12か月=420,000円

 固定資産の圧縮記帳&減価償却に関する問題です。

 本問は、取引を【固定資産の取得&圧縮記帳に関する取引】と【固定資産の減価償却に関する取引】に分けて考えましょう。

 問題文の「国から ¥ 1,800,000 の補助金を得て」から、5月7日に以下のような仕訳を切ったことが分かります。

参考:補助金受取時の仕訳
(借)現金など 1,800,000
 (貸)国庫補助金受贈益 1,800,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、問題文に「レジスターを予定通り購入し、小切手を振り出して支払った」とあるので、備品の増加および当座預金の減少で処理するとともに、直接控除方式により圧縮記帳を行います。

備品の取得原価=@144,000円×25台=3,600,000円

 なお、問題文に「備品勘定は圧縮記帳した事実を示すように記入すること」とあるので、借方と貸方の備品を相殺しないように気をつけましょう。

(1)の解答(固定資産の取得&圧縮記帳に関する仕訳)
(借)備品 3,600,000
 (貸)当座預金 3,600,000
(借)固定資産圧縮損 1,800,000
 (貸)備品 1,800,000

 問題の指示に従って、当期の減価償却費(7か月分)を月割りで計算しましょう。

 なお、本問は直接法の処理が問われているため、貸方は備品になります。うっかり備品減価償却累計額で処理しないように気をつけましょう。

償却率=1÷5年×200%=40%

当期の減価償却費=(3,600,000円-1,800,000円)×40%×7か月/12か月=420,000円

(2)の解答(固定資産の減価償却に関する仕訳)
(借)減価償却費 420,000
 (貸)備品 420,000

 本問のように、問題が(1)と(2)の2段構えになっている場合は2点ずつ配点されます。よって、どちらか片方の仕訳のみが正解していた場合は2点もらえます。

問4 電子記録債権の譲渡

模範解答
(借)買掛金 800,000
 (貸)電子記録債権 800,000

 電子記録債権の譲渡に関する問題です。

 買掛金の支払いを電子債権記録機関で行う場合、電子記録債権の譲渡記録を行うケースと電子記録債務の発生記録を行うケースの2種類があります。

  • 電子記録債権の譲渡記録を行うケース:電子記録債権の減少として処理する
  • 電子記録債務の発生記録を行うケース:電子記録債務の増加として処理する
参考:電子記録債権の譲渡記録を行う場合の仕訳のひな形
(借)買掛金 ×××
 (貸)電子記録債権 ×××
参考:電子記録債務の発生記録を行う場合の仕訳のひな形
(借)買掛金 ×××
 (貸)電子記録債務 ×××

 本問は、問題文の「電子記録債権の譲渡記録を行った」から前者のケースと判断し、買掛金の減少および電子記録債権の減少として処理します。

問5 利益処分

模範解答
(借)別途積立金 18,000,000
 (貸)繰越利益剰余金 18,000,000
(借)繰越利益剰余金 21,000,000 ※8
 (貸)未払配当金 20,000,000 ※6
 (貸)利益準備金 1,000,000 ※7

※6 @100円×200,000株=20,000,000円

※7 200,000,000円÷4-40,000,000円-9,000,000円=1,000,000円

※8 20,000,000円+1,000,000円=21,000,000円

 利益処分に関する問題です。

 本問は、取引を【株主資本の計数変動に関する取引】と【配当に関する取引】に分けて考えましょう。

 問題の指示に従って、別途積立金を繰越利益剰余金に振り替えます。

解答①(株主資本の計数変動に関する仕訳)
(借)別途積立金 18,000,000
 (貸)繰越利益剰余金 18,000,000

 問題文の「繰越利益剰余金を財源に1株につき ¥ 100 の配当を実施する」から、繰越利益剰余金の一部を配当することが分かります。

 配当にあたっては、会社法の規定(第445条の4項など)に従って一定額を準備金として積み立てる必要があります。

  1. 原則として配当額の10分の1を準備金として積み立てなければならない(10分の1規定
  2. ただし、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達した場合は、それ以上積み立てる必要はない(4分の1規定

 よって、「配当額の10分の1(10分の1規定の金額)」または「資本金の4分の1から資本準備金と利益準備金の合計額を差し引いた残額(4分の1規定の金額)」のうち、どちらか小さいほうの金額だけ準備金を積み立てることになります。

  • 配当額:@100円×200,000株=20,000,000円
  • 10分の1規定の金額:20,000,000円÷10=2,000,000円
  • 4分の1規定の金額:200,000,000円÷4-(40,000,000円+9,000,000円)=1,000,000円
  • 準備金要積立額:2,000,000円>1,000,000円 → 1,000,000円

 なお、配当にあたって積み立てる準備金は「配当の原資」によって異なります。本問は繰越利益剰余金を配当の原資としているので、利益準備金を積み立てます。

  • 配当の原資が繰越利益剰余金:利益準備金を積み立てる(本問)
  • 配当の原資がその他資本剰余金:資本準備金を積み立てる
  • 配当の原資が繰越利益剰余金とその他資本剰余金:利益準備金と資本準備金を積み立てる
解答②(配当に関する仕訳)
(借)繰越利益剰余金 21,000,000
 (貸)未払配当金 20,000,000
 (貸)利益準備金 1,000,000

 以上、①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります。



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