第2問 固定資産に税効果会計や連結会計を絡めた複合問題。部分点を積み上げて!
第2問は【固定資産】に税効果会計や連結会計を絡めた複合問題です。
問1の勘定記入はよくあるタイプの問題です。問題文の「減価償却に係る記帳は直接法による」という指示を見落とさないように気をつけましょう。
問2では税効果会計の仕訳が、問3では連結会計のアップストリームの仕訳が問われています。どちらも2018年度から試験範囲に追加された論点ですが、1回目の出題ということもあり基本的な内容が問われています。
受験生アンケートでは「普通ぐらいだった」という回答が一番多かったですが、第1問の難度を考えますと…7割~8割(20点中14点~16点)は取りたい問題です。
固定資産関連取引の仕訳
4月1日の仕訳
6月7日の仕訳
7月28日の仕訳
9月1日の仕訳
9月2日の仕訳
12月1日の仕訳
2月1日の仕訳
3月31日の仕訳
3月31日の決算整理仕訳
問1:勘定記入
問2:税効果会計の仕訳
問3:連結会計の仕訳
固定資産関連取引の仕訳
まずは、問題資料の「固定資産関連取引」から各取引日の仕訳を考えましょう。
4月1日の仕訳
(貸)リース債務 2,400,000
※1 @480,000円×5年=2,400,000円
問題文に「利子込み法を適用する」とあるので、支払リース料総額2,400,000円(=@480,000円×5年)をリース資産・リース債務に計上します。
- 利子込み法:支払リース料総額
- 利子抜き法:見積現金購入価額
6月7日の仕訳
(貸)国庫補助金受贈益 3,000,000
受け取った補助金は国庫補助金受贈益で処理します。
7月28日の仕訳
(借)修繕費 280,000 ※2
(貸)当座預金 700,000
※2 700,000円-420,000円=280,000円(貸借差額)
修繕工事の代金は、先に修繕引当金を取崩したうえで不足分を修繕費で処理します。
9月1日の仕訳
(貸)現金 1,200,000
(貸)当座預金 4,800,000 ※3
※3 6,000,000円-1,200,000円=4,800,000円(貸借差額)
機械装置の購入に関する仕訳です。
9月2日の仕訳
(貸)機械装置 3,000,000
国庫補助金受贈益として処理していた3,000,000円について、圧縮記帳により機械装置の帳簿価額を直接減額します。
12月1日の仕訳
(貸)未払金 14,000,000
土地の購入に関する仕訳です。
2月1日の仕訳
(貸)当座預金 7,000,000
※4 14,000,000円÷2=7,000,000円
12月1日に購入した土地代金の支払いに関する仕訳です。2回に分けて支払うことになっているので、今回は7,000,000円(=14,000,000円÷2)を支払います。
3月31日の仕訳
(貸)普通預金 480,000
リース取引開始時の資料に「年間リース料:¥ 480,000(後払い)」とあるので、同額だけリース債務を減額します。
3月31日の決算整理仕訳
(貸)建物 720,000
(借)減価償却費 700,000 ※6
(貸)機械装置 700,000
(借)減価償却費 480,000 ※7
(貸)リース資産 480,000
※5 36,000,000円÷50年=720,000円
※6 3,000,000円×0.400×7か月/12か月=700,000円
※7 2,400,000円÷5年=480,000円
建物の減価償却費は、取得原価を耐用年数で割って計算します。
機械装置の減価償却費は、当期の使用期間が7か月(9月1日~3月31日)なので月割りで計算します。
リース資産の減価償却費は、支払リース料総額をリース期間で割って計算します。なお、リース契約は当期首に締結されているので、1年分の減価償却費をまるまる計上します(※月割り計算は不要)。
また、本問は直接法を採用しているので、各仕訳の貸方の勘定科目は「建物」「機械装置」「リース資産」になります。うっかり「~減価償却累計額」としないように気をつけましょう。
問1:勘定記入
上述のとおり、減価償却にかかる記帳方法は直接法です。この指示を読み落としてしまうと大失点につながってしまいますので、問題文を読んだ時点で丸で囲むなりアンダーラインを引くなりして目立たせておきましょう。
問題資料のデータから1年あたりの減価償却費が720,000円(=36,000,000円÷50年)、取得から前期末までに9年(平成20年4月1日~平成29年3月31日)経過していることが分かるので、建物勘定の「前期繰越」には取得価額から減価償却累計額を差し引いた帳簿価額を記入します。
- 取得価額:36,000,000円
- 減価償却累計額:@720,000円×9年=6,480,000円
- 帳簿価額:36,000,000円-6,480,000円=29,520,000円
また、機械装置勘定の借方には「諸口」が入ります。うっかり「現金」や「当座預金」と書かないように気をつけてください。同様に、リース資産勘定の借方には「リース債務」が入ります。なんとなく「リース負債」と書かないように気をつけてください。
問2:税効果会計の仕訳
(貸)法人税等調整額 78,750
※8 (700,000円-437,500円)×30%=78,750円
問2では、2018年度から試験範囲に追加された「税効果会計の処理」が問われています。
会計上の耐用年数で計算した減価償却費と、税法上の耐用年数で計算した減価償却費との差額を計算したうえで、法人税等の実効税率30%を乗じて金額を計算しましょう。
なお、機械装置の当期の使用期間は7か月(9月1日~3月31日)です。うっかり1年(12か月)で計算しないように気をつけましょう。
- 会計上の耐用年数で計算した減価償却費:3,000,000円×0.4×7か月/12か月=700,000円
- 税法上の耐用年数で計算した減価償却費:3,000,000円×0.25×7か月/12か月=437,500円
- (700,000円-437,500円)×30%=78,750円
問3:連結会計(アップストリーム)の仕訳
(貸)土地 5,000,000
(借)非支配株主持分 1,250,000 ※10
(貸)非支配株主に帰属する当期純利益 1,250,000
※9 14,000,000円-9,000,000円=5,000,000円
※10 5,000,000円×25%=1,250,000円
(貸)未収入金 7,000,000
※11 14,000,000円÷2=7,000,000円
問3では、2018年度から試験範囲に追加された「連結会計のアップストリームの処理」が問われています。
(1)の「未実現損益の消去」については、12月1日の土地の売買取引は連結グループ内で土地の所有権が移動したに過ぎないので、子会社が計上していた固定資産売却益(未実現利益)を消去するとともに、消去した未実現利益のうち非支配株主に帰属する分(25%)を非支配株主に負担させます。
(2)の「債権債務の相殺消去」については、2月1日に1回分の支払いを終えているので、連結修正仕訳では未だ残っている1回分の未収入金・未払金を相殺消去します。うっかり2回分を相殺消去しないように気をつけましょう。