第3問 久しぶりに出題された本支店会計。初見でうまく対応するのは至難の業です。
第3問は【本支店会計】に関するでした。
冷静に考えてみるとそこまで難度の高い問題ではありませんが、本試験の独特の緊張感の中で、本店の損益に関する取引のみをピックアップして効率的に解くのは至難の業です。
本店だけでなく(本来は考える必要のない)支店の仕訳まで考えてしまったり、本店の金額ではなく本店・支店の合計金額を解答してしまった受験生も多く、出来は相当悪いようです。半分(10点)取れれば御の字だと思います。
受験生アンケートでも、80%以上の方が「かなり難しかった」「やや難しかった」と回答しており、本問と第2問が今回の低い合格率の原因になっています。
解答手順
本問は、本店の損益勘定を作成する問題なので、支店側の処理は不要です。問題資料(b)(c)の中から、本店に関する取引のみをピックアップして処理しましょう。
なお、支店側の処理を行わないと損益勘定の「支店」と「繰越利益剰余金」の金額は出せませんが、この2つはいわゆる捨て問(=正答率が著しく低いため最初から捨てるべき問題)なので気にする必要はありません。
本試験は時間との勝負になるため、支店側の処理は「しなくてもよい」ではなく「してはいけない」と考えて、思い切って捨ててしまいましょう。
本店側の仕訳
(貸)売掛金 60,000
(貸)未払金 2,000,000
支店側の記帳ミスは本店には関係ない(→支店側の修正事項)ので、本店側は「仕訳なし」になります。
(貸)仕入 108,000
支店に対して商品を原価で移送しているので、本店側では仕入のマイナスとして処理します。
(貸)繰越商品 717,000
(借)繰越商品 756,000 ※1
(貸)仕入 756,000
(借)棚卸減耗損 22,680 ※2
(借)商品評価損 19,400 ※3
(貸)繰越商品 42,080
※1 1,000個×@756円=756,000円
※2 (1,000個-970個)×@756円=22,680円
※3 (@756円-@736円)×970個=19,400円
解答にあたっては、上記の仕訳を考える必要はありません。以下のような商品ボックスをササッと書いて、売上原価の金額を把握しましょう。
(貸)貸倒引当金 80
※4 (1,098,000円-60,000円)×1%-10,300円=80円
問題資料の未処理事項等(1)の処理で売掛金が60,000円減少しています。貸倒引当金要設定額の計算のさいには忘れずに考慮しましょう。
(貸)備品減価償却累計額 120,000 ※5
(貸)車両減価償却累計額 40,000 ※6
※5 600,000円÷5年=120,000円
※6 2,000,000円×3,000km/150,000km=40,000円
備品は定額法により1年分の減価償却費を計上するだけですが、車両は生産高比例法により当期の減価償却費を計算します。
(貸)有価証券利息 1,000
※7 (1,000,000円-990,000円)÷10年=1,000円
額面額と取得原価との差額10,000円(=1,000,000円-990,000円)は、償還期間10年で均等償却します。
なお、満期保有目的債券は前期の期首(平成28年4月1日)に取得しているので、償却原価法の適用にあたって月割りで按分する必要はありません。
(貸)その他有価証券評価差額金 59,000
※8 784,000円-725,000円=59,000円
期末時価と取得原価との差額を、その他有価証券評価差額金で処理します。
(貸)未払給料 70,000
(借)前払家賃 60,000
(貸)支払家賃 60,000
本店に関する取引のみをピックアップしましょう。
(貸)未払消費税 415,200
※9 800,000円-384,800円=415,200円
本問は、問題文に「本店が税込方式にて一括して申告」とあるので、まず、本店と支店の「売上にかかる消費税(仮に受け取っている消費税)」と「仕入にかかる消費税(仮に支払っている消費税)」を計算しましょう。
- 売上にかかる消費税:(7,560,000円+3,240,000円)×0.08/1.08=800,000円
- 仕入にかかる消費税:(3,672,000円+1,522,800円)×0.08/1.08=384,800円
上記の計算により、仮に受け取っている消費税が800,000円、仮に支払っている消費税が384,800円ということが分かるので、差額の415,200円を租税公課・未払消費税で処理します。
(貸)のれん 120,000
※10 840,000円÷(10年-3年)=120,000円
問題文の「平成26年4月1日に同業他社を買収した際に生じたもの」から、前期末(平成29年3月31日)の時点ですでに3年分の償却が終わっていることが分かるので、残高試算表に計上されている840,000円を7年(=10年-3年)で均等償却します。
(貸)広告宣伝費 60,000
宣伝広告費60,000円を支店に振り替えます。
実際に問題を解くさいには、ここまで処理すればOKです。上記の仕訳を集計して、損益勘定の各金額を求めましょう。
参考・支店側の仕訳
上述のとおり、支店側の処理は不要ですが、参考までに支店側の仕訳をご紹介します。
(貸)現金 9,000
※11 76,000円-67,000円=9,000円
(貸)本店 108,000
本店から移送されてきた商品は、他の外部仕入と同様に仕入で処理します。
(貸)繰越商品 483,000
(借)繰越商品 432,000 ※12
(貸)仕入 432,000
(借)棚卸減耗損 8,100 ※13
(貸)繰越商品 8,100
※12 800個×@540円=432,000円
※13 (800個-785個)×@540円=8,100円
解答にあたっては、上記の仕訳を考える必要はありません。以下のような商品ボックスをササッと書いて、売上原価の金額を把握しましょう。
なお、支店の在庫商品は正味売却価額(@550円)が原価(@540円)を上回っているため、商品評価損は計上されません(=ゼロ円)。
(貸)貸倒引当金 2,450
※14 865,000円×1%-6,200円=2,450円
(貸)備品減価償却累計額 70,000
※15 350,000円÷5年=70,000円
(貸)未払給料 50,000
(借)支払家賃 50,000
(貸)未払家賃 50,000
(貸)本店 60,000
(貸)本店 208,250
※16 損益勘定の貸借差額
支店の損益勘定で利益を計算したうえで、この利益を本店勘定に振り替えます。
- 支店の収益:売上3,240,000円+受取手数料1,800円=3,241,800円
- 支店の費用:売上原価1,573,800円+支払家賃600,000円+給料660,000円+広告宣伝費119,200円+棚卸減耗損8,100円+貸倒引当金繰入2,450円+減価償却費70,000円=3,033,550円
- 支店の利益:収益3,241,800円-費用3,033,550円=208,250円
参考・損益勘定の「支店」と「繰越利益剰余金」に関する仕訳
上述のとおり、本店の損益勘定の「支店」と「繰越利益剰余金」は捨て問(=正答率が著しく低いため最初から捨てるべき問題)ですが、参考までに、支店利益の受け入れの仕訳および資本振替の仕訳をご紹介します。
(貸)損益 208,250
※17 支店側の決算整理仕訳10より
(貸)繰越利益剰余金 1,554,590
※18 本店の損益勘定の貸借差額