3種類の為替手形の各特徴を押さえよう!
為替手形とは・・・【振出人】が【名宛人(支払人)】に対し、一定の期日に一定の金額を【指図人(受取人)】に支払うことを依頼した手形のことをいいます。
つまり、約束手形の関係者が「振出人と受取人」の2人であるのに対して、為替手形の関係者は通常「振出人と名宛人と指図人」の3人ということになります。ただし、自己受為替手形は振出人と指図人が同一人物になりますし、自己宛為替手形は振出人と名宛人が同一人物になりますので、関係者は2人ということになります。
| 為替手形の種類 | 関係者(登場人物) | 手形振り出し(振出人)の前提条件 |
|---|---|---|
| 通常の為替手形 | 振出人・名宛人・指図人の3人 | 名宛人に対して売掛金が、 指図人に対して買掛金がある |
| 自己受為替手形 | 振出人(=指図人)・名宛人の2人 | 名宛人に対して売掛金がある |
| 自己宛為替手形 | 振出人(=名宛人)・指図人の2人 | 指図人に対して買掛金がある |
通常の為替手形
通常の為替手形の取引には、振出人・名宛人・指図人の3人が登場しますが、振出人には「名宛人に対して売掛金(債権)があり、同様に指図人に対して買掛金(債務)がある」という前提条件があり、この債権債務を相殺するために為替手形の振り出しを行うことになります。

- 振出人「すいま千円~(注・茶魔語)」
- 名宛人「あらどうも。今日は何のご用ですか?」
- 振出人「そうそう、うちっておたくに対する売掛金ありましたよねぇ。」
- 名宛人「ありますねぇ。支払いはもうちょっと待ってくださいね。」
- 振出人「あのさー、その売掛金使って買掛金を相殺しちゃってもいいかなぁ?」
- 名宛人「為替手形を振り出して売掛金と買掛金を相殺したいということですか?」
- 振出人「そうなんですよ~。手形引き受けてくれます?」
- 名宛人「じゃあその手形を引き受けましょう。手形に判子押しておきますね。」
- 振出人「ありがと~。じゃあ、手形の分だけおたくに対する売掛金減らしておくね。」
- 名宛人「いえいえ。じゃあうちもおたくに対する買掛金を減らしておきま~す。」
- 振出人「こんにチワワ(注・やっぱり茶魔語)」
- 指図人「お坊ちゃま君って古すぎだろう・・・で、今日は何の用ですか?」
- 振出人「そうそう、うちっておたくに対する買掛金ありましたよねぇ。」
- 指図人「ありますねぇ。支払いはいつ頃になりそうですか?」
- 振出人「今回、うちの得意先の方に手形の引受けを了解してもらったんで手形で返します。」
- 指図人「じゃあ私は、手形の指図人として、手形を受け取ればいいんですね?」
- 振出人「そうです。これが手形になりますのでお受け取りください。」
- 指図人「分かりました。では手形の分だけおたくに対する売掛金を減らしておきますね。」
- 振出人「ありがとうございます。ではうちもおたくに対する買掛金を減らしておきま~す。」
上記の取引の結果、振出人は売掛金と買掛金を相殺する仕訳を切ることになります。一方、手形を引き受けた名宛人(支払人)は、振出人に対する買掛金を指図人に対する支払手形に振り替え、振出人から為替手形を受け取った指図人(受取人)は、振出人に対する売掛金を名宛人に対する受取手形に振り替えることになります。
| 振出人の仕訳・・・売掛金と買掛金の相殺 | |||
|---|---|---|---|
| (借)買掛金 | ***** | (貸)売掛金 | ***** |
| 名宛人(支払人)の仕訳・・・買掛金を支払手形に振り替える | |||
| (借)買掛金 | ***** | (貸)支払手形 | ***** |
| 指図人(受取人)の仕訳・・・売掛金を受取手形に振り替える | |||
| (借)受取手形 | ***** | (貸)売掛金 | ***** |
なお、手形期日までに名宛人(支払人)がその支払いを行わなかった場合は、振出人は指図人(受取人)に対してその手形債務額を支払わなければならないという遡及義務を負うことになりますが、日商簿記検定3級ではこの遡及義務まで問われる可能性は低いですので、参考までに押さえておいていただければよいと思います。
具体的な処理としては、振出人が為替手形を振り出す時に対照勘定法による備忘記録の仕訳を切っておき、当該為替手形が決済されて遡及義務が無くなったときに、反対仕訳を切ることになります。金額に関しては問題文で与えられますので、その金額を記入すればOKです。
| 【参考】為替手形振出時の対照勘定法による備忘記録 | |||
|---|---|---|---|
| (借)為替手形振出義務見返 | ***** | (貸)為替手形振出義務 | ***** |
| 【参考】為替手形決済時の振出人の仕訳 | |||
| (借)為替手形振出義務 | ***** | (貸)為替手形振出義務見返 | ***** |
自己受為替手形
自己受為替手形とは、振出人が売掛金を回収する目的で、「振出人=指図人」となるような為替手形を作成し、名宛人に手形の引受けを求める手形をいいます。

- 振出人「こんにちわんこそば~(注・もちろん茶魔語)」
- 名宛人「(いつまで続ける気だ・・・)で、今日は何のご用ですか?」
- 振出人「そうそう、うちっておたくに対する売掛金ありましたよねぇ。」
- 名宛人「ありますねぇ。支払いはもうちょっと待ってくださいね。」
- 振出人「あのさー、その売掛金を受取手形に替えてもらってもいいかなぁ?」
- 名宛人「為替手形を振り出して売掛金を受取手形に替えたいってことですね?」
- 振出人「そうなんですよ~。ちょっとお金が必要になって・・・大丈夫かな?」
- 名宛人「じゃあその手形を引き受けましょう。手形に判子押しておきますね。」
- 振出人「ありがと~。じゃあ、手形の分だけ売掛金を受取手形に振り替えておきますね。」
- 名宛人「いえいえ。じゃあうちもおたくに対する買掛金を支払手形に振り替えておきますわ~。」
上記の取引の結果、振出人は売掛金を受取手形に振り替える仕訳を切ることになりますが、この振り出した自己受為替手形を銀行に持って行って割り引くことにより、結果的に売掛金を回収したことになります。一方、手形を引き受けた名宛人(支払人)は、買掛金を支払手形にに振り替えることになります。
| 振出人の仕訳・・・売掛金を受取手形に振り替える | |||
|---|---|---|---|
| (借)受取手形 | ***** | (貸)売掛金 | ***** |
| 名宛人(支払人)の仕訳・・・買掛金を支払手形に振り替える | |||
| (借)買掛金 | ***** | (貸)支払手形 | ***** |
なお、売上取引時に自己受為替手形を振り出す場合は、一度売掛金を経由したと考えて仕訳を切ると分かりやすいと思います。同様に名宛人(支払人)のほうも、買掛金を経由したと考えて仕訳を切ることになります。
| 振出人の仕訳・・・一度、売掛金を経由する | |||
|---|---|---|---|
| (借)売掛金 (借)受取手形 |
***** ***** |
(貸)売上 (借)売掛金 |
***** ***** |
| 名宛人(支払人)の仕訳・・・一度、買掛金を経由する | |||
| (借)仕入 (借)買掛金 |
***** ***** |
(貸)買掛金 (貸)支払手形 |
***** ***** |
自己宛為替手形
自己宛為替手形とは、「振出人=指図人」となるような自己を名宛人とする為替手形を作成しそのまま引受け、指図人(受取人)に振り出す手形をいいます。

- 振出人「こんばんワイン(注・最後まで茶魔語)」
- 指図人「(なんだ、コイツ・・・)・・・で、今日は何の用ですか?」
- 振出人「そうそう、今回の仕入代金の支払いに関してなんですが・・・。」
- 指図人「どうやってお支払いいただけますか?」
- 振出人「自己宛為替手形を振り出して支払おうかな、と。」
- 指図人「じゃあ私は、手形の指図人として、その手形を受け取ればいいんですね?」
- 振出人「そうです。これが手形になりますのでお受け取りください。」
- 指図人「分かりました。ではうちは普通に受取手形を増加させておきますね。」
- 振出人「ありがとうございます。ではうちも普通に支払手形を増加させておきます。」
上記の取引の結果、振出人は仕入に伴って支払手形の増加を認識することになりますが、考え方としては自己受為替手形と同様に買掛金を経由したと考えて仕訳を切ると分かりやすいと思います。同様に指図人(受取人)のほうも、売掛金を経由したと考えて仕訳を切ることになります。
| 振出人の仕訳・・・一度、買掛金を経由する | |||
|---|---|---|---|
| (借)仕入 (借)買掛金 |
***** ***** |
(貸)買掛金 (貸)支払手形 |
***** ***** |
| 指図人(受取人)の仕訳・・・一度、売掛金を経由する | |||
| (借)売掛金 (借)受取手形 |
***** ***** |
(貸)売上 (借)売掛金 |
***** ***** |
ここで・・・もうお分かりだと思いますが、振出人の最終的な仕訳は仕入に伴い約束手形を振り出した時と同じですし、指図人の最終的な仕訳も売上に伴い約束手形を受け取った時と同じです。つまり自己宛為替手形の仕訳を切る際は、通常の約束手形を振り出したとき・受け取ったときの仕訳と同じになりますので、考え方を理解した上で仕訳の形は覚えてしまったほうが良いと思います。
なお、振出人の手形振出にかかる遡及義務の仕訳を切る必要はありません。なぜなら、自己宛為替手形は「振出人=名宛人」となりますので、名宛人が払えない場合に振出人が・・・ということにはならないからです。為替手形の遡及義務に関しては重要性が低い論点になりますので、時間に余裕のない方は切っていただいても結構です。
為替手形に関する説明は以上となります。通常の為替手形、自己受為替手形、自己宛為替手形のいずれも重要な論点になりますので、必ずきちんと理解しておいてください。

