第154回日商簿記3級 予想問題「簿記ナビ模試」第5問(財務諸表)の解説

第5問 貸倒引当金戻入になっても慌てない!当期純損失になっても慌てない!

 財務諸表の作成問題です。

 貸倒引当金の処理は難しいですが、全体的には普通レベルの問題です。短い解答時間で30点満点が取れるまで、何度も繰り返し解いてください。

 なお、第5問の精算表・財務諸表の作成問題では当期純利益が発生することが多いですが、ここ最近は当期純損失が発生する問題もちょくちょく出題されています(※第142回・第145回)。純損失になっても慌てず冷静に対応しましょう。

簿記ナビ模試3級の「各問題の難度」と「解答時間の目安」
準備 第1問 第2問 第3問 第4問 第5問 見直し
普通 普通 難しい 簡単 普通
5分 15分 15分 40分 5分 30分 10分

簿記3級の出題予想のご案内

 簿記検定ナビでは、2020年2月23日に行われる第154回日商簿記3級の出題予想を公開しています。

 過去の出題状況や最近の出題傾向を独自の視点で分析し、大問ごとの予想はもちろんのこと、各論点の重要ポイントや絶対に押さえておくべき過去問などもあわせてご紹介しています。

第5問(財務諸表)の解説

1.現金過不足

 現金過不足として処理していた5,000円(貸方残)のうち、広告宣伝費と受取手数料については原因が判明したので適切な勘定科目に振り替えます。一方、原因が判明しなかった残額は雑益または雑損で処理します。

 現金過不足の仕訳は、①現金過不足の残高をゼロにする→②原因が判明したものを計上する→③貸借差額を雑損または雑益で処理するの3ステップで考えると分かりやすいです。

ステップ1・現金過不足の残高をゼロにする
(借)現金過不足 5,000
ステップ2・原因が判明したものを計上する
(借)現金過不足 5,000
(借)広告宣伝費 3,200
 (貸)受取手数料 6,800
ステップ3・貸借差額を雑損または雑益で処理する
(借)現金過不足 5,000
(借)広告宣伝費 3,200
 (貸)受取手数料 6,800
 (貸)雑益 1,400 ※1

※1 5,000円+3,200円-6,800円=1,400円(貸借差額)

解答仕訳①
(借)現金過不足 5,000
(借)広告宣伝費 3,200
 (貸)受取手数料 6,800
 (貸)雑益 1,400

2.債権の貸倒れ(未記帳)

 前期に発生した売掛金は(前期末において)貸倒引当金の設定対象となっているので、貸倒引当金を取り崩して処理します。

解答仕訳②-1
(借)貸倒引当金 8,500
 (貸)売掛金 8,500

 一方、当期に発生した売掛金は(前期末において)貸倒引当金の設定対象になっていないので、貸倒引当金を取り崩して処理することはできません。全額を貸倒損失で費用処理します。

解答仕訳②-2
(借)貸倒損失 4,900
 (貸)売掛金 4,900
  • 前期以前に発生した債権
    • 貸倒れた金額<貸倒引当金:全額を貸倒引当金で処理(本問②-1)
    • 貸倒れた金額>貸倒引当金:貸倒引当金を全額取り崩し、不足分を貸倒損失で処理
  • 当期に発生した債権
    • 全額を貸倒損失で処理(本問②-2)

3.売上戻り(未記帳)

 問題資料では売価(12,000円)と原価(10,000円)が与えられていますが、売上高の調整に使うのは売価です。原価のデータは次の売上原価の計算で使います。

解答仕訳③
(借)売上 12,000
 (貸)売掛金 12,000

4.売上原価の計算

 問題文に「期末商品棚卸高は ¥ 200,000 である。なお、この期末商品棚卸高には上記の返品分は含まれていない」とあるので、期末商品棚卸高の金額は「4.売上戻り」の原価を含めた210,000円(=200,000円+10,000円)になります。

  • 期首商品棚卸高:245,000円(答案用紙の残高試算表欄より)
  • 当期商品仕入高:1,792,800円(答案用紙の残高試算表欄より)
  • 期末商品棚卸高:210,000円(=200,000円+10,000円
    • 売上原価:1,827,800円(=245,000円+1,792,800-210,000円)
解答仕訳④
(借)仕入 245,000
 (貸)繰越商品 245,000
(借)繰越商品 210,000
 (貸)仕入 210,000

 実際に問題を解くさいには、上記の仕訳は不要です。

 以下のような商品ボックスをササッと書いて、貸借対照表の商品の金額(210,000円)と損益計算書の売上原価の金額(1,827,800円)を求めましょう。

商品ボックスの下書き
商品ボックスの下書き

5.固定資産の減価償却

 建物・備品ともに1年分の減価償却費を計算するだけです。

解答仕訳⑤
(借)減価償却費 290,000
 (貸)建物減価償却累計額 90,000 ※2
 (貸)備品減価償却累計額 200,000 ※3

※2 2,700,000円÷30年=90,000円

※3 800,000円÷4年=200,000円

6.費用の未払い

 給料の未払分49,000円を未払計上します。

解答仕訳⑥
(借)給料 40,000
 (貸)未払費用 40,000

7.貸倒引当金の設定

 貸倒引当金の設定にあたって、まずは売上債権(受取手形・売掛金)・貸倒引当金の期末残高を把握しましょう。

 計算するさいには決算整理事項等2の「売掛金・貸倒引当金の減少」と、決算整理事項等3の「売掛金の減少」を忘れないように気をつけてください。

  • 売上債権:(479,600円+545,800円)-13,400円-12,000円1,000,000円
  • 貸倒引当金:50,000円-8,500円41,500円

 次に、売掛金の期末残高1,000,000円に4%を乗じて貸倒引当金要設定額40,000円を算定し、期末残高41,500円との差額1,500円(=41,500円-40,000円)を貸倒引当金戻入で処理します。

  • 期末残高<要設定額:貸倒引当金繰入を計上→貸倒引当金を増やす
  • 期末残高>要設定額:貸倒引当金戻入を計上→貸倒引当金を減らす(本問)

 受験簿記では通常、「期末残高<要設定額」となるため差額を貸倒引当金繰入で処理しますが、現実的には「期末残高>要設定額」になるケースもじゅうぶん考えられます。

 このような場合は差額を貸倒引当金戻入で処理しましょう。

解答仕訳⑦
(借)貸倒引当金 1,500 ※4
 (貸)貸倒引当金戻入 1,500

※4 41,500円-40,000円=1,500円

  • 貸借対照表の金額
    • 受取手形
      • 期末残高:479,600円
      • 貸倒引当金:479,600円×4%=19,184円
      • 残高:479,600円-19,184円=460,416円
    • 売掛金
      • 期末残高:520,400円
      • 貸倒引当金:520,400円×4%=20,816円
      • 残高:520,400円-20,816円=499,584円

8.費用の前払い

 保険料の前払いについては「問題資料の決算整理前残高試算表の金額は何か月分なのか」をきちんと把握できるかどうかがカギになります。

 3級の本試験では、本問のような毎年一定額を支払っている場合当期から払い始めた場合・単発で支払った場合のどちらかが問われますが、前者の場合は前期末の仕訳から順番に考えていくと分かりやすいです。

(借)前払費用 6か月分の保険料
 (貸)保険料 6か月分の保険料

 上記の仕訳の金額部分の「6か月分の保険料」というのは、当期の4月1日から9月30日までの6か月分の保険料を意味します。

 この時点では具体的な金額が分からないので、暫定的に「6か月分の保険料」としています。次に、この仕訳を参考にして当期首の再振替仕訳を考えます。

(借)保険料 6か月分の保険料
 (貸)前払費用 6か月分の保険料

 再振替仕訳は、前期末の仕訳の逆仕訳をするだけです。では次に、10月1日(保険料支払日)の仕訳を考えてみましょう。

(借)保険料 12か月分の保険料
 (貸)現金など 12か月分の保険料

 この結果、問題資料の決算整理前残高試算表に記載されている保険料81,000円というのは、(4月1日に計上した)6か月分の保険料+(10月1日に計上した)12か月分の保険料=18か月分の保険料の金額ということになります。

 あとは、81,000円を18か月で割って1か月あたりの保険料を求めたうえで、本問で問われている保険料の前払いの仕訳を考えます。

1か月あたりの保険料:81,000円÷18か月=4,500円

 この仕訳の金額については今までのように「~か月分の保険料」という形ではなくて、1か月あたりの保険料を元に計算した金額を記入します。

 具体的には、6か月分(×3年4月1日~9月30日)の費用の前払い処理を行うので、6か月分の保険料を計算して前払費用に振り替えます。

6か月分の保険料:@4,500円×6か月=27,000円

解答仕訳⑧
(借)前払費用 27,000
 (貸)保険料 27,000

 この仕訳により、問題用紙の決算整理前残高試算表に計上されていた「18か月分の保険料」が12か月分に訂正され、損益計算書に正しい金額(@4,500円×12か月=54,000円)が計上されます。

9.収益の前受け

 問題文の「偶数月の月末にむこう2か月分として ¥ 18,000 を受け取っている」から、2月末に3月分・4月分の家賃を受け取ったことが分かります。

 よって、決算において1か月分(4月分)の家賃を前受収益に振り替えます。

解答仕訳⑨
(借)受取家賃 9,000 ※5
 (貸)前受収益 9,000

※5 18,000円×1か月/2か月=9,000円

 参考までに、偶数月ではなく奇数月の月末に、むこう2か月分として ¥ 18,000 を受け取っていた場合の仕訳も考えておきましょう。

 奇数月の月末ということは、3月末に4月分・5月分の家賃を受け取ることになるので、決算において2か月分(4月分・5月分)の家賃を前受収益に振り替えます。

参考:奇数月の月末に家賃を受け取っていた場合の仕訳
(借)受取家賃 18,000
 (貸)前受家賃 18,000

当期純損失の計算と繰越利益剰余金の求め方

 当期純利益or純損失は、損益計算書の借方合計(費用)と貸方合計(収益)の差額で計算します。

  • 損益計算書の借方(費用)の合計額:2,812,100円
  • 損益計算書の貸方(収益)の合計額:2,812,000円
  • 差額=2,812,100円-2,812,000円=100円(当期純損失)

 当期純損失100円を計算したら、問題資料の決算整理前残高試算表の「繰越利益剰余金 500,100」と合算して、貸借対照表の繰越利益剰余金の金額を求めましょう。

  • 貸借対照表の繰越利益剰余金=決算整理前残高試算表の繰越利益剰余金-当期純損失
  • 貸借対照表の繰越利益剰余金=500,100円-100円=500,000円

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