建設業経理士とは

 建設業経理士とは、建設業振興基金が実施する「建設業の経理に関する試験(建設業経理士検定試験)」の合格者の称号です。1級に合格すると「1級建設業経理士」、2級に合格すると「2級建設業経理士」の称号が与えられます。

 また、3級と4級は「建設業経理事務士検定試験」として実施されており、1級・2級と同様に、合格者には「3級建設業経理事務士」「4級建設業経理事務士」の称号が与えられます。

試験日は?年に何回実施されるの?受験資格は?

 1級と2級は毎年9月・3月(年2回)に、3級と4級は毎年3月(年1回)に実施されます。

 申込受付期間の締め切りが早い(→試験日の2か月以上前に締め切られる)のと、合格発表が遅い(→試験日から約2か月後)のが特徴です。

建設業経理士試験の申込受付期間と合格発表日
申込受付期間と合格発表日

 また、日商簿記検定と同様に受験資格は特にないため、誰でも希望の級を受験することができます。私も今回、いきなり1級(3科目)を受験しました。

試験は何科目あるの?異なる級を同時受験することはできるの?

 1級のみ3科目(財務諸表・財務分析・原価計算)の科目合格制になっています。有効期限(5年)内に3科目に合格すると「1級建設業経理士」の合格となり、合格証明書が交付されます。また、1級は1科目だけでなく2~3科目を同時に受験することができます。なお、2級・3級・4級は1科目のみです。

 同時受験に関しては、「2級と3級」「3級と4級」の組み合わせは可能ですが、1級の各科目と2級は試験時間が被ってしまうため同時に受験することはできません。

各級の合格率は?1級の難度は?

 建設業経理士1級の合格率は試験回によって大きく異なりますが、各科目とも平均すると20%~30%ぐらいです。最近は難化傾向にあるため、1科目ずつ着実に勉強して合格を目指す方が増えているようです。

 なお、2級は40%前後、3級は60%前後、4級は80%前後になることが多いですが、3級と4級には講習と試験がセットになった「特別研修」という抜け道があり、こちらの合格率は95%前後とかなり高い数字になっています。

 各級の合格率は、簿記検定ナビ内の「建設業経理士の試験情報と合格率データ」ページで試験回別にまとめてあります。興味のある方は一度ご確認ください。

 ちなみに、建設業経理士1級の難度は「日商簿記1級>>全経上級>>>>建設業1級>>日商簿記2級」ぐらいに感じました。日商簿記2級よりは難しいものの、日商簿記1級・全経上級と比べるとかなり簡単だと思います。

 試験の主催団体である「建設業振興基金」の公式サイトにて、過去の本試験問題が公表されています。百聞は一見に如かずですので、興味のある方はぜひ一度、本試験問題をご確認ください。

建設業経理士に合格するメリットは?

 公共工事の入札にさいし、社内に建設業経理士2級以上の合格者がいると「経営事項審査」の加点対象になります(※3級・4級合格者には加点なし)。

  • 公認会計士:1ポイント
  • 税理士:1ポイント
  • 1級建設業経理士:1ポイント
  • 2級建設業経理士:0.4ポイント

 よって、建設業経理士2級以上の合格者は、未だ合格者の少ない中・小規模の建設会社では特に重宝されるので、建設業界への就職・転職を希望する際に大きな武器になります。

 また会社によっては資格手当が月に数千円~もらえたり(1級合格だと1万円を超える会社も!)、合格一時金として数万円~もらえるところもあります。毎月もらえる資格手当の存在はデカイと思います(私は自営なので1円ももらえませんが…)。

建設業経理士試験と日商簿記検定の違い

 建設業経理士試験と日商簿記検定の1番の違いは勘定科目です。参考までにいくつかご紹介します。

  • 完成工事未収入金⇔売掛金
  • 未成工事支出金⇔仕掛品
  • 未成工事受入金⇔前受金
  • 工事未払金⇔買掛金
  • 完成工事高⇔売上高
  • 完成工事原価⇔売上原価

 建設業特有の勘定科目に慣れるまでは勘定の意味をパッとイメージできないかもしれませんが、勉強が進んでいくと自然に分かるようになるので心配はいりません。

 なお、建設業経理士1級の「財務諸表」「原価計算」の2科目に関しては、(試験範囲は一部異なるものの)日商簿記検定で勉強した知識をそのまま活かすことができます。

 一方、「財務分析」の内容は日商簿記検定とあまりかぶらないので、諸比率の計算式の暗記等の対策が別途必要になります。




管理人の建設業経理士1級・受験データ

2017年3月試験 管理人の勉強時間データ
テキスト 問題集 過去問対策 合計 自己採点
財務諸表 02時間10分 15時間50分 10時間00分 28時間00分 72/80
財務分析 01時間20分 24時間10分 12時間40分 38時間10分 78/80
原価計算 02時間05分 19時間55分 10時間10分 32時間10分 78/80

 私は、2017年の3月に1級3科目を同時受験しましたが、総勉強時間は98時間20分でした。

 自己採点の点数は、第1問の記述問題(20点)を除いた点数です。3科目とも第2問以降だけで合格点(70点)を取ることができたので、結果的にはかなり余裕があったと思います。

 なお、建設業経理士試験は合格・不合格の発表のみで得点は公表されません。よって、第1問の記述問題で何点取れたかは正確には分かりませんが、(3科目とも)少なくても10点前後は取れたと思います。

郵送されてきた合格通知
郵送されてきた合格通知

試験結果&合格証明書
試験結果&合格証明書

第1問の記述対策は?

 3科目とも第1問では記述問題が出題されますが、ピンポイントで予想するのはほぼ不可能なので、私は最低限の対策にとどめました。具体的には…重要そうな論点の定義と特徴(核となるキーワード)を簡単に押さえたぐらいです。

 その代わり、第2問以降だけで合格点が取れるように「過去問を使った計算問題対策」に力を入れました。建設業経理士1級は過去問対策が非常に効果的なので、今後受験される方にもこの戦法をおすすめします。

過去問対策は必要?

過去問題集の学習記録
過去問題集の学習記録

 過去問対策は絶対に必要です。後述しますが、配点の多い第5問(30点~40点)で毎回同じような問題が出題されるからです。

 私は各科目の過去問題集を買って、全10回分(第10回~第19回)を一気に解きましたが、前回試験(第20回)の問題が収載されていなかったので、公式サイトから問題(PDF)をダウンロード・プリントアウトして解きました。

概説(建設業会計概説)は必要?

 概説(建設業会計概説)とは、一般財団法人「建設産業経理研究機構」が編集・発行している教材で、合格者・受験生の中には「概説は必須!」という方が一定数いらっしゃいます。

 ただ、建設業経理士1級は、日商簿記2級レベルの基本知識+市販の対策教材をきちんとこなせば合格できる試験です。よって、概説を別途購入する必要は(個人的には)ないと思います。

計算式や理論の暗記法は?

単語カード
単語カード

 私は単語カードを自作して、細切れの時間や勉強を始める前などに何度も目を通しました。覚えたカードはどんどん外していって、よく間違える論点・なかなか覚えられない論点のカードのみを残して、苦手論点をひとつひとつつぶしていきました。

 もう少し大きいサイズで作れば良かったかな…と何度か思ったので、同じように単語カードを使って勉強しようと考えている方にはもうひと回り大きいサイズの単語カードをおすすめします。

3科目同時受験のメリット・デメリット

 3科目同時受験の一番のメリットは、受験料が安いことです。1級は1科目ですと7,410円ですが、2科目で10,600円、3科目で13,680円と科目数が増えるごとに「1科目あたりの受験料」がどんどん安くなります。

  • 1科目受験:7,410円(1科目あたりの受験料=7,410円)
  • 2科目受験:10,600円(1科目あたりの受験料=5,300円)
  • 3科目受験:13,680円(1科目あたりの受験料=4,560円)

 デメリットは特に感じませんでしたが、人によっては3科目全てが中途半端になってしまい、結果的に1科目も合格できない…という可能性もじゅうぶん考えられます。3科目受験にこだわらずに確保できる勉強時間を考慮したうえで、受験する科目数を決めるのが現実的だと思います。

 また、デメリットではありませんが、1日で3科目受験するのはかなり大変でした。1時間半×3科目=4時間半の長丁場になりますので、気力・体力のどちらかに不安がある場合は、1科目または2科目の受験をおすすめします。

建設業経理士1級の科目別攻略法

 各科目の攻略法を簡単にまとめました。3科目とも配点が多い割りに出題形式がワンパターンの計算問題で点数を稼ぐのがポイントです。

財務諸表

  • 第1問:記述理論問題(20点)
  • 第2問:穴埋理論問題(14点)
  • 第3問:正誤理論問題(18点)
  • 第4問:個別計算問題(12点)
  • 第5問:総合計算問題(36点)

 まずは、上でも紹介した建設業特有の勘定科目に慣れましょう。

 また、第1問~第3問では理論問題が出題されます。財務諸表は他の2科目よりも理論問題のウエイトが大きいので、理論対策にも力を入れましょう。時間に余裕がある方は、日商1級や全経上級の理論対策集を使うのもアリです。

 建設業特有の論点のひとつである「JV(企業共同体)」の仕訳問題は、JV・スポンサー企業・サブ企業の3者の仕訳を完ぺきに覚えてましょう。各タイミングの仕訳を覚えていれば簡単に点数がとれます(逆に、覚えていないと手も足も出ません)。私は丸暗記しました。

 第5問の総合問題(36点)は、配点が多い割に出題がワンパターンなので過去問対策が非常に効果的です。過去問を使ってバッチリ対策しておきましょう。財務諸表は第5問で満点を取ることが、合格の必須条件になります。

 なお、連結会計も試験範囲に含まれていますが、めちゃくちゃ簡単な問題しか出題されません。過去問の問題が解ければOKなので、テキストの例題などに深入りして勉強時間を浪費しないように気をつけましょう。

財務分析

  • 第1問:記述理論問題(20点)
  • 第2問:穴埋理論問題(15点)
  • 第3問:財務諸表の金額&諸比率の算定問題(20点)
  • 第4問:各種分析問題(15点)
  • 第5問:諸比率の算定問題&穴埋問題(30点)

 日商簿記受験生にとっては一番馴染みのない科目ではないでしょうか。私自身、この財務分析の勉強に多くの時間を費やしました。

 試験の主催団体である「建設業振興基金」の公式サイトに、覚えるべき諸比率がまとめられた「財務分析主要比率表」が公表されています。まずは、諸比率の計算式を完ぺきに暗記しましょう。これを暗記しないことには何も始まりません。

 なお、暗記するさいは「流動比率・当座比率」や「固定比率・固定長期適合比率」などのように似たような比率をセットで押さえると効率が良いです。また、いろんなもので分解できる「労働生産性」も全部まとめて押さえてしまいましょう。

 諸比率を暗記したらあとは過去問をどんどん解きましょう。第3問以降の計算問題は出題がワンパターンなので過去問対策が非常に効果的です。過去問を使ってバッチリ対策しておきましょう。

 財務分析は諸比率を正確に暗記し、これらの計算問題で満点近い点数を取ることが合格の必須条件になります(目標は60点前後)。

原価計算

  • 第1問:記述理論問題(20点)
  • 第2問:穴埋理論問題(10点)
  • 第3問:個別計算問題(14点)
  • 第4問:個別計算問題(16点)
  • 第5問:総合計算問題(40点)

 理論問題の配点が少なく、配点の多い計算問題も出題がワンパターンなので、日商簿記受験生にとっては比較的負担の小さい科目と言えるでしょう。

 社内損料計算制度など建設業会計特有の論点に関しては、日商簿記のような「奇をてらった問題」が出題される可能性は低いので、ベースとなる計算式を正確に暗記し、過去問などを使って対策すればじゅうぶんです。

 また、第5問の総合問題(40点)は、配点が多い割に出題がワンパターンなので過去問対策が非常に効果的です。過去問を使ってバッチリ対策しておきましょう。原価計算は第5問で満点を取ることが、合格の必須条件になります。

建設業経理士1級のおすすめ教材

私が利用した教材
私が利用した教材

 私が使った教材は以下の9冊です(すべてTAC出版)。

 これ以外の教材は使っていないので他との比較はできませんが、テキストの説明は分かりやすかったですし、TACの教材は「業界最大手」という安心感もあるのでおすすめです。

  • テキスト
    • スッキリわかるシリーズ スッキリわかる建設業経理士1級 財務諸表
    • スッキリわかるシリーズ スッキリわかる建設業経理士1級 財務分析
    • スッキリわかるシリーズ スッキリわかる建設業経理士1級 原価計算
  • 問題集
    • スッキリとける問題集 建設業経理士1級 財務諸表
    • スッキリとける問題集 建設業経理士1級 財務分析
    • スッキリとける問題集 建設業経理士1級 原価計算
  • 過去問題集
    • よくわかる簿記シリーズ 合格するための過去問題集 建設業経理士1級 財務諸表
    • よくわかる簿記シリーズ 合格するための過去問題集 建設業経理士1級 財務分析
    • よくわかる簿記シリーズ 合格するための過去問題集 建設業経理士1級 原価計算

 なお、TACのオンライン直販サイト「CyberBookStore」では、TAC出版の教材を割引価格(単品→10%オフ、セット→15%オフ)で購入することが出来ます。送料も冊数に関係なく無料です。

 まとめて購入する場合はかなりお得になりますので、購入を検討されている方は一度、直販サイトをご覧ください。

日商簿記1級合格→建設業経理士1級に進む場合に必要な勉強時間は?

 個人差はありますが、トータル50時間~100時間ぐらいで合格ラインに乗ると思います。

 財務諸表・原価計算については建設業固有の論点(大した量ではありません)を追加で押さえるだけなので、あとは財務分析で使う計算式をゴリゴリ暗記するだけです。なお、各科目の理論対策は日商1級の内容が頭に入っていれば特別な対策は不要です。

日商簿記2級合格→建設業経理士1級に進む場合に必要な勉強時間は?

 個人差はありますが、1科目あたり100時間ぐらいがひとつの目安になるかと思います。

 日商簿記2級の試験範囲に入っていない論点も結構ありますし(財務分析のJVや原価計算の意思決定など)、また、第1問の理論記述対策にけっこうな時間がかかると思いますので1科目ずつ着実に合格を目指すことをおすすめします。

 また、時間に余裕のある方は、いきなり1級を目指さずに2級を経由するのもアリです(日商簿記2級→建設業2級→建設業1級)。まずは2級で建設業特有の勘定科目に慣れておくと、スムーズに1級に進めると思います。

まとめ

 建設業経理士試験は、日商簿記検定で学んだ知識をほとんどそのまま活かすことができるので、日商簿記検定合格後のステップアップとして最適な資格だと思います。

 現時点で建設業界に興味がなくても、人生どこでどうなるか分かりませんので、会計の知識が残っているうちにサクッと受験して合格しておくことをおすすめします。