簿記2級を受験するさいの5つのポイント

 2016年10月3日に「日商簿記検定2級受験のポイント」が公表されました。これは日商簿記検定の主催団体である日本商工会議所が作成したもので、受験上のポイントが5つに分けて紹介されています。

 特にびっくりするような情報はありませんが、わざわざ公表したのにはなんらかの意図があると思いますので、第144回試験で2級を受験される方は念のために確認しておきましょう。




左を制するものは世界を制す!仕訳と工業簿記を制するものは簿記2級を制す!

第1に、第4問・第5問の工業簿記対策をしっかり行う必要があります。工業簿記は出題区分表の改定をしておりませんので、過去の出題傾向を踏まえた対応に加えて、問題文をしっかり読み取る力、勘定の流れの理解(費目別勘定→部門別勘定→仕掛品勘定→製品勘定→売上原価勘定→損益勘定)を養成して頂き、高得点(少なくとも8割以上、32点以上)を目標に学習する必要があります。

 最近の試験は第2問・第3問が難化傾向にあるため、合格するためにはその他の第1問(仕訳)や第4問・第5問(工業簿記)で点数を稼ぐ必要があります。

 具体的な点数に関しては、60点満点中50点以上がひとつの目安になります。第1問・第4問・第5問で50点以上取れれば、残りの第2問・第3問で(40点満点中)20点取るだけで合格できる計算になるからです。

 なお、第1問・第4問・第5問に関しては過去問類似問題が出題される可能性が高いので、過去問対策が効果的です。なるべく早い時期に1冊用意して、最低でも3回は繰り返し解きましょう。

精算表対策はいつやるの?後でしょ!財務諸表対策はいつやるの?今でしょ!

第2に、第3問の商業簿記対策として、今回の改定において財務諸表の表示が重要視されるようになりました。損益計算書・貸借対照表の財務諸表の表示区分・利益概念・勘定科目等については対策をする必要があります。
143回検定において、「貸倒引当金繰入」の表示が出題されましたが、「その他有価証券評価差額金」等出題範囲の改訂に伴う新たな勘定科目等に注意を払う必要があります。

 ここ最近の第3問の出題状況は以下のとおりです。以前は、精算表作成問題か本支店会計のどちらかが出題されていましたが、最近は財務諸表作成問題の出題が続いています。

  • 第137回:財務諸表(損益計算書)
  • 第138回:財務諸表(貸借対照表)
  • 第139回:財務諸表(貸借対照表+損益計算書の各利益)
  • 第140回:財務諸表(損益計算書)
  • 第141回:精算表
  • 第142回:財務諸表(貸借対照表)
  • 第143回:財務諸表(損益計算書)
  • 第144回:???

 今回の第2のポイントで「財務諸表ファースト」が明言された以上、今後についても精算表より財務諸表作成問題が出題される可能性が高いです。

 なお、順番的には…第144回試験は損益計算書よりも貸借対照表のほうが出題される可能性が高いので、第2のポイントでも具体的に指摘されている「その他有価証券評価差額金」や、長短分類が問われる「貸付金・借入金」などの表示場所をきちんと確認しておきましょう。

 また、第139回試験のように貸借対照表だけでなく損益計算書の各利益もあわせて問われる可能性があります。売上高-売上原価で計算できる売上総利益や、法人税の税率・税額から逆算できる(かもしれない)当期純利益の計算の流れは、第139回の過去問を使ってきちんと確認しておきましょう。

難問でも10点は取れるように配点しています。諦めたらそこで試合終了ですよ。

第3に、第2問の商業簿記対策として、143回検定では固定資産の取引について、増加・減少仕訳、決算整理仕訳を時系列に問う問題が出題されました。今後の対応として、特定分野(現金預金、有価証券、固定資産、純資産等)の取引について、網羅的に理解し、仕訳と勘定記入を確実に行う力が必要となります。今回の検定のように、過去問で見たことがないような形式での出題可能性は十分にありますが、確実に仕訳と勘定記入を行うことができれば、10点以上の得点は可能です。最後まで諦めずに、仕訳・勘定記入を行う力の養成を行う必要があります。

 ここ最近、第2問では「今までに見たことがないような問題」が出題されることがありますが、一見難しそうな問題の中にも必ず簡単な設問が用意されています。すぐに諦めてしまわずに点数が取れそうなところを探してみましょう。

 逆に、考え始めて数分経っても解法がイメージできないような難しい設問は思い切って捨てましょう。簿記に限らず資格試験は「簡単な問題・自分の得意な問題を優先して解く」のが鉄則です。1つの設問に深入りしすぎて解答時間を浪費しないように気をつけてください。

出さないよ!新論点の難しい問題はぜっt…たぶん出さないよ!

第4に、「商工会議所簿記検定試験出題区分表の改定等について」の 1.基本的な考え方に「新たに範囲に加わった項目の出題にあたっては、問題の形式や問題文での文言・条件指示などにおいて受験者に配慮するとともに、従来から範囲となっていた項目とのバランスを当然に考慮しなければならないと認識していることを念のために申し添えます。」と示してあります。143回検定では、ソフトウェア、クレジット売掛金、検収基準、その他有価証券、貸倒引当金繰入の表示等が出題されましたが、どの論点も難易度の高い出題ではなく、受験者に配慮された出題でありました。今後も初めて出題される項目については、同様の配慮がなされるものと予想されます。

 2016年6月に行われた第143回試験から新たに試験範囲になった論点が出題されるようになりましたが、日商が以前に公表したサンプル問題(PDF)の中には難度の高い問題も含まれており、「こんな難しい処理まで問われるのか…」と不安に思っている受験生も多いと思います。

 ただ、今回の第4のポイントにも書かれているように、初めて出題する論点に関してはいきなり難しい処理が問われる可能性は低いです。よって、新論点に関してはテキストや問題集に載っているレベルの基本的な問題を解けるようにしておけば対策としては十分です。

 なお、市販教材は上記のサンプル問題から必要な部分を抽出して作られているので、これをわざわざダウンロード・プリントアウトして読んだり解いたりする必要はありません。どうしても気になる方は「どんな問題が出るのかな~」ぐらいの軽い感じで、参考までにご確認ください。

夢中で~がんばる君へ~エルボ~。今年度中に合格しましょう!

第5に、143回検定の合格率は25.8%であり、142回の14.8%、141回の11.8%より合格率が良い状況です。出題区分表が改定されたからといって、日商簿記検定は難しくなったわけではありません。難しそうに見える問題であっても、部分点が取れるように配慮される場合があります。自分の合格を信じて、最後まであきらめずにチャレンジしてください。

 前回試験の合格率は、前々回や前々々回と比べるとやや高くなりました。第100回試験~第143回試験の平均合格率29.4%と比べるとやや低い数字ではありますが、きちんと努力をした人が順当に合格できる試験回だったと思います。

 第144回試験に関しても、第5のポイントでこうやって明言している以上、第141回・第142回試験のようなひどい合格率になる可能性は低いですし、また、来年度からは連結や外貨・リースなどの重たい論点が試験範囲に入ってくるので、ぜひ今年度中に合格してください。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。上述のとおり、びっくりするような情報はなかったと思いますが、「きちんと努力した人が報われる問題を出しますから、受験生の皆さんも新論点を過度に恐れることなくがんばって勉強してくださいね」というメッセージは心強いですよね。

 この記事を書いている時点で、第144回日商簿記検定までは残り38日。受験生の皆さんは「もう1か月しかない…」と考えるのではなく、「まだ1か月以上ある!」と前向きに考えて、ラストスパート頑張ってください。簿記検定ナビも出来るかぎりサポートいたします!!