新論点の出題状況

 2016年度の試験(第143回~)から日商簿記2級の試験範囲が大きく変わりました。

 「特殊商品売買」「社債(発行側)」「為替手形」等の論点が試験範囲から外れた一方、「ソフトウェア」「収益・費用の認識基準」「電子記録債権・債務」等の論点が新たに試験範囲に追加されました。

 2016年度の試験における新論点の出題状況と、今後の追加論点は以下のとおりです。

新論点の出題状況まとめ
新論点の出題状況まとめ( PDFはこちら

 こうやって表にしてみると、「収益・費用の認識基準」が3回連続で出題されている一方、「貸倒引当金の個別評価・一括評価」や「株主資本の計数の変動」などがまだ1度も出題されていないことが分かります。

 今回は、2016年度から新たに試験範囲に追加された論点の出題状況を簡単にまとめつつ、処理のポイントや今後の対策方法について私見を述べたいと思います。




月次決算の処理

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 出題なし 第3問

 月次決算の処理は、第145回試験の第3問で出題されています。

 減価償却費の処理は、「概算額11か月分の合計」と「年間確定額」との差額を計上します。月割りの概算額をそのまま計上しないように気をつけてください。

売上原価対立法

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 第2問 出題なし

 売上原価対立法は、第144回試験の第2問で出題されています。

 売上原価対立法の仕訳は、「商品を仕入れるさいに商品勘定を使う」と「販売のつど商品勘定を売上原価勘定に振り替える」の2点がポイントです。仕訳の基本形をきちんと押さえておきましょう。

参考・仕入時の仕訳
(借)商品 ×××
 (貸)現金など ×××
参考・売上時の仕訳
(借)売掛金など ×××
 (貸)売上 ×××
(借)売上原価 ×××
 (貸)商品 ×××

クレジット売掛金

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
第3問 第1問 出題なし

 クレジット売掛金は、第143回試験の第3問と第144回試験の第1問で出題されています。

 「売掛金や受取手形とともに売上債権に分類されるため、貸倒引当金の設定対象になる」と「信販会社に支払う決済手数料を支払手数料勘定で処理する」の2つのポイントを押さえておきましょう。

電子記録債権・債務

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 第2問 第3問

 電子記録債権・債務は、第144回試験の第2問と第145回試験の第3問で出題されています。

 買掛金を支払うために電子記録債権・債務を利用する場合、どちらを使うのか問題文から正確に判断できるようにしておきましょう。

 問題文に「(買掛金を返済するために)取引銀行を通して電子記録債権の譲渡記録を行った」とある場合は、買掛金勘定と電子記録債権勘定を相殺する仕訳を切ります。

(借)買掛金 ×××
 (貸)電子記録債権 ×××

 また、問題文に「(買掛金を返済するために)取引銀行を通じて電子債権記録機関に債務の発生記録を請求した」とある場合は、買掛金勘定を電子記録債務勘定に振り替えます。

(借)買掛金 ×××
 (貸)電子記録債務 ×××

 なお、電子記録債権・債務は既に2回出題されているため、第146回試験で出題される場合はもう一歩踏み込んだ「電子記録債権の割引き」の処理が問われる可能性があります。

 仕訳の考え方は「受取手形の割引き」と同じです。手形売却損勘定の代わりに電子記録債権売却損勘定を使って処理する点をきちんと押さえておきましょう。

(借)現金預金など ×××
(借)電子記録債権売却損 ×××
 (貸)電子記録債権 ×××

貸倒引当金の個別評価と一括評価

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 出題なし 出題なし

 貸倒引当金の個別評価と一括評価は、まだ1度も出題されていません。

 貸倒れる可能性が一般債権よりも高い債権(貸倒懸念債権など)については、一般債権とは別に、債権の期末残高から担保処分見込額を差し引いた残額に貸倒設定率を乗じて貸倒引当金要設定額を計算します。

 なお、貸借対照表上の表示場所に関しては、問題資料で「貸倒れる可能性が他よりも高い債権も含めて売掛金は流動資産に表示する」などの指示が入るはずです。指示を見落とさないように気をつけましょう。

貸倒引当金繰入の損益計算書上の表示

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
第3問 出題なし 出題なし

 貸倒引当金繰入の損益計算書上の表示は、第143回試験の第3問で出題されています。

 売掛金や受取手形などの営業債権にかかる貸倒引当金繰入は販売費及び一般管理費の欄に、貸付金などの営業外債権にかかる貸倒引当金繰入は営業外費用の欄に計上します。

 第143回試験では、答案用紙の損益計算書の「販売費及び一般管理費」および「営業外費用」の欄に、貸倒引当金繰入と予め書かれていたので金額を計算するだけでしたが、第146回試験で出題される場合は、答案用紙の科目欄が空欄になっている可能性もあります。

 科目欄が空欄になっていても自信をもって解答できるよう、試験前に今一度、貸倒引当金繰入の表示場所を確認しておきましょう。

賞与引当金・返品調整引当金

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 出題なし 出題なし

 賞与引当金・返品調整引当金は、新論点というよりも2級の範囲であることが明確化された論点です。143回試験以降はまだ1度も出題されていません。

 賞与引当金は「設定時」だけでなく「賞与支払時」の仕訳を、また、返品調整引当金も「設定時」だけでなく「売上戻り時」の仕訳をきちんと押さえておきましょう。

賞与引当金の仕訳

参考・賞与引当金設定時の仕訳
(借)賞与引当金繰入 ×××
 (貸)賞与引当金 ×××
参考・賞与支払時の仕訳
(借)賞与引当金 ×××
(借)賞与 ×××
 (貸)預り金 ××× ※1
 (貸)現金など ×××

※1 所得税の源泉徴収分

返品調整引当金の仕訳

参考・返品調整引当金設定時の仕訳
(借)返品調整引当金繰入 ×××
 (貸)返品調整引当金 ×××
参考・売上戻り時の仕訳(※前期以前に販売した商品が戻ってきた場合)
(借)仕入 ××× ※2
(借)返品調整引当金 ××× ※3
 (貸)売掛金 ×××

※2 原価部分

※3 利益部分

 前期以前に販売した商品が戻ってきた場合は、原価部分に関しては新たな仕入と考えて仕入勘定で処理するとともに、利益部分に関しては返品調整引当金を取り崩して処理します。

参考・売上戻り時の仕訳(※当期に販売した商品が戻ってきた場合)
(借)売上 ×××
 (貸)売掛金 ×××

 当期に販売した商品が戻ってきた場合は、売上時の逆仕訳をするだけです。うっかり返品調整引当金を取り崩さないように気をつけましょう。

 なお、賞与引当金・返品調整引当金の他には、「売上割戻引当金」や「商品保証引当金」などが出題される可能性もじゅうぶんあります。あわせて押さえておきましょう。

有形固定資産の割賦購入

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 出題なし 第1問

 有形固定資産の割賦購入は、第145回試験の第1問で出題されています。

 第145回試験では、利息相当額を前払利息で処理する問題が出題されましたが、購入時に支払利息で処理するパターンもあります。両者の仕訳の基本形をきちんと押さえておきましょう。

【例題】3月1日に備品(現金購入価格200円)を割賦購入し、代金は4回の分割払いで毎月末に60円ずつ払うこととした。なお、決算日は3月31日である。

利息相当額を前払利息で処理する場合

参考1-1・購入時の仕訳(3月1日)
(借)備品 200
(借)前払利息 40 ※4
 (貸)未払金 240

※4 @60円×4回-200円=40円

参考1-2・分割払い時の仕訳(3月31日)
(借)未払金 60
 (貸)現金など 60
(借)支払利息 10 ※5
 (貸)前払利息 10

※5 40円÷4回=10円

参考1-3・決算整理仕訳(3月31日)
なし

 利息相当額を前払利息で処理する場合は、分割払いした時に、支払期間で按分した前払利息を支払利息に振り替えます。なお、決算においては何もしません。

利息相当額を支払利息で処理する場合

参考2-1・購入時の仕訳(3月1日)
(借)備品 200
(借)支払利息 40 ※6
 (貸)未払金 240

※6 @60円×4回-200円=40円

参考2-2・分割払い時の仕訳(3月31日)
(借)未払金 60
 (貸)現金など 60
参考2-3・決算整理仕訳(3月31日)
(借)前払利息 30 ※7
 (貸)支払利息 30

※7 40円÷4回=@10円 @10円×3回=30円

 利息相当額を支払利息で処理する場合は、決算整理仕訳で未経過分(本例題の場合は3か月分)を翌期に繰り延べます。

割賦金の支払日と決算日が異なる場合は?

 可能性はかなり低いものの「割賦金の支払日と決算日が異なる場合の仕訳」が問われる可能性もあります。参考までに以下の仕訳をご確認ください。

【例題】3月1日に備品(現金購入価格200円)を割賦購入し、代金は4回の分割払いで偶数月末に60円ずつ払うこととした。なお、利息相当額は前払利息で処理すること。決算日は3月31日である。

参考3-1・購入時の仕訳(3月1日)
(借)備品 200
(借)前払利息 40
 (貸)未払金 240
参考3-2・決算整理仕訳(3月31日)
(借)支払利息 5 ※8
 (貸)前払利息 5

※8 40円÷4回=@10円 @10円÷2=5円

 偶数月末払いということは、具体的には「4月末日に1回目の支払い」「6月末日に2回目の支払い」「8月末日に3回目の支払い」「10月末日に4回目の支払い」というタイムスケジュールになります。

 決算において、割賦購入日(3月1日)から1回目の支払日である4月末日までの2か月間のうち、当期に属する1か月(3月1日~3月31日)分だけを前払利息から支払利息に振り替えます。

ソフトウェア

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
第2問 第1問 出題なし

 ソフトウェアは、第143回試験の第2問および第144回試験の第1問で出題されています。

 ソフトウェアに関しては、この2問以上に難しい処理が問われる可能性は低いので、過去問対策をきちんとやっておけばバッチリです。バッチリチリ脚です(←ネタが古い)

子会社株式・関連会社株式

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 第1問 出題なし

 子会社株式・関連会社株式は、第144回試験の第1問で出題されています。

 子会社株式・関連会社株式に関しては、第1問の仕訳問題や第3問の決算整理仕訳だけでなく、第2問で売買目的有価証券・満期保有目的債券・その他有価証券と絡めて問われる可能性もあります。

 発行済み株式数による分類や決算整理時の処理、貸借対照表上の表示場所などをきちんと押さえておきましょう。

  • 発行済み株式数による分類
    • 発行済み株式数の20%以上50%以下を保有:関連会社株式
    • 発行済み株式数の50%超を保有:子会社株式
  • 決算整理時の処理
    • 売買目的有価証券:時価評価
    • 満期保有目的債券:償却原価法を適用して評価替え(※適用しない場合もアリ)
    • その他有価証券:時価評価(※償却原価法を適用する場合もアリ)
    • 子会社株式・関連会社株式:時価評価しない(→処理なし)
  • 貸借対照表上の表示場所
    • 有価証券(流動資産):売買目的有価証券、満期までの期間が1年以内の満期保有目的債券、満期までの期間が1年以内のその他有価証券(債券)
    • 投資有価証券(固定資産):満期までの期間が1年超の満期保有目的債券、満期までの期間が1年超のその他有価証券(債券)、その他有価証券(株式)
    • 会社株式(固定資産):子会社株式、関会社株式

その他有価証券(税効果なし)

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
第3問 出題なし 第2問

 その他有価証券は、第143回試験の第3問および第145回試験の第2問で出題されています。

 基本的には、帳簿価額と期末時価との差額をその他有価証券評価差額金勘定で処理するだけなので特に問題ないと思いますが、第146回試験ではもう一歩踏み込んだ「その他有価証券に償却原価法を適用する場合の処理」が問われる可能性があります。

 その他有価証券に償却原価法を適用する場合は、先に償却原価法を適用して評価替えをしたうえで、評価替え後の帳簿価額と期末時価との差額をその他有価証券評価差額金勘定で処理します。

 この処理は、現在無料配布中の予想問題「簿記ナビ模試」の第3問でも出題していますので、参考までに一度ご確認ください。

収益・費用の認識基準

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
第3問 第2問 第3問

 収益・費用の認識基準は、3回連続で出題されています。

  • 第143回試験:売上の認識基準→検収基準
  • 第144回試験:売上の認識基準→出荷基準
  • 第145回試験:売上および売上原価の認識基準→検収基準

 収益の認識基準は、上記の「検収基準」「出荷基準」の他に「引渡基準」もあります。3つを混同しないように、内容をきちんと押さえておきましょう。

  • 出荷基準:商品を出荷したタイミングで収益を計上する
  • 引渡基準:相手方に商品が到着したタイミングで収益を計上する
  • 検収基準:相手方の検収が完了したタイミングで収益を計上する

役務収益・役務費用

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 出題なし 第1問

 役務収益・役務費用は、第145回試験の第1問で出題されています。

 第145回試験では、発生原価を仕掛品勘定に振り替えるだけの簡単な問題でしたが、第146回試験で出題されるとしたら以下のような形式が考えられます。

  • 第1問:仕掛品勘定を役務費用勘定に振り替えるとともに役務収益を計上する仕訳問題
  • 第3問:サービス業に関する損益計算書の作成問題

 サービス業に関する損益計算書の作成問題は、役務収益・役務費用の計算が複雑になることが多いので、事前に何度か解いて慣れておく必要があります。市販の予想問題を使ってきちんと対策しておきましょう。

資本剰余金からの配当

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 出題なし 第2問

 資本剰余金からの配当は、第145回試験の第2問で出題されています。

 考え方自体は繰越利益剰余金を財源として配当を行う場合と同じなので、第145回試験の第2問を使って「準備金要積立額の按分計算」をマスターしておきましょう。

  • その他資本剰余金を財源として配当を行う場合:資本準備金要積立額を計算する
  • 繰越利益剰余金を財源として配当を行う場合:利益準備金要積立額を計算する
  • 両方を財源として配当を行う場合:資本準備金・利益準備金の要積立額を按分計算する

株主資本の計数の変動

2016年度の出題状況
第143回 第144回 第145回
出題なし 出題なし 出題なし

 株主資本の計数の変動は、まだ1度も出題されていません。

 ただ、出題されたとしても準備金や剰余金などを資本金に振り替えるだけなので簡単です。問題の指示に従ってサクッと処理しましょう。

【例題1】株主総会の決議により、利益準備金100,000円を資本金に組み入れた。

(借)利益準備金 100,000
 (貸)資本金 100,000

【例題2】株主総会の決議により、繰越利益剰余金200,000円を資本金に組み入れた。

(借)繰越利益剰余金 200,000
 (貸)資本金 200,000

【例題3】株主総会の決議により、資本準備金300,000円を資本金に組み入れた。

(借)資本準備金 300,000
 (貸)資本金 300,000

【例題4】株主総会の決議により、その他資本剰余金400,000円を資本金に組み入れた。

(借)その他資本剰余金 400,000
 (貸)資本金 400,000

2017年度から新たに試験範囲に追加された論点について

 2017年度(第146回~)から新たに試験範囲に追加された論点は「固定資産の圧縮記帳」「外貨建取引」「リース取引」「課税所得の計算」の4つです(※「連結会計」は第147回試験から追加予定)。

 試験の主催団体である日本商工会議所が「新論点を1回目に出題するときは、受験生の負担をじゅうぶん考慮して基本的な内容にとどめる」と明言しているので、過度に恐れる必要はありません。テキストレベルの基本的な処理きちんと押さえておけばじゅうぶんです。