第152回日商簿記検定2級 第3問(貸借対照表)の過去問分析

第3問 貸借対照表の作成問題。税効果会計の処理はかなり難しいです。

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【貸借対照表】の作成問題でした。

 税効果会計の処理がかなり難しかったので、20点満点を取ろうとするとかなり大変だと思います。ただ、税効果以外の他の取引は普通レベルのものばかりでしたので、税効果以外をどれだけ正確に処理できたかがカギになりそうです。

 あまり大きな声でおすすめすることはできませんが…税効果が苦手な方や解答時間に余裕がない場合は、最初から税効果に関する処理をすべて捨てて解答する戦略もアリだと思います。この方法でも10点~12点は確保できます。

 なお、受験生アンケートでは「やや難しかった」という回答が一番多かったです。

解答手順

 問題資料2の「決算にあたっての修正事項」と、問題資料3の「決算整理事項等」の仕訳を下書きし、答案用紙の貸借対照表を作成しましょう。

修正事項1

(借)未収入金 1,540,000
(借)火災損失 2,060,000 ※1
 (貸)火災未決算 3,600,000

※1 3,600,000円-1,540,000円=2,060,000円

 問題文に「保険会社から20×9年4月末日に保険金 ¥ 1,540,000 が当社の普通預金口座に入金されることが決定したとの連絡が入った」とあるので、火災未決算3,600,000円のうち1,540,000円を未収入金に振り替えるとともに、貸借差額を火災損失で処理します。

 なお、1,540,000円は普通預金口座に入金されることが決定しただけで、実際に入金されたわけではありません。うっかり普通預金で処理しないように気をつけましょう。

修正事項2

(借)当座預金 740,000
 (貸)売掛金 740,000

 売掛金の回収に関する取引です。下の決算整理事項等2で貸倒引当金を計算するさいに、期末残高から回収分を差し引くことを忘れないように気をつけましょう。

決算整理事項等1

(借)仕入 8,400,000
 (貸)繰越商品 8,400,000
(借)繰越商品 8,900,000
 (貸)仕入 8,900,000
(借)商品評価損 170,000
(借)棚卸減耗損 230,000
 (貸)繰越商品 400,000
(借)仕入 400,000
 (貸)商品評価損 170,000
 (貸)棚卸減耗損 230,000

 解答にあたっては、上記の仕訳を考える必要はありません。

 なぜなら、本問は貸借対照表の作成問題であるため、流動資産の区分に「商品」という表示科目で記載する期末商品実地棚卸高さえ分かればいいからです。

 問題文の「期末商品帳簿棚卸高は ¥ 8,900,000 」「商品評価損 ¥ 170,000 」「棚卸減耗損 ¥ 230,000 」から、電卓でサクッと期末商品実地棚卸高を計算しましょう。

期末商品実地棚卸高=8,900,000円-170,000円-230,000円=8,500,000円

決算整理事項等2

(借)貸倒引当金繰入 80,200 ※2
 (貸)貸倒引当金 80,200

※2 (9,960,000円-740,000円)×1%-12,000円=80,200円

 修正事項2の仕訳で売掛金が減っているので、売掛金の期末残高は9,220,000円(=9,960,000円-740,000円)になります。

決算整理事項等3

(借)減価償却費 1,700,000
 (借)建物減価償却累計額 500,000 ※3
 (貸)備品減価償却累計額 1,200,000 ※4
(借)繰延税金資産 75,000 ※5
 (貸)法人税等調整額 75,000

※3 15,000,000円÷30年=500,000円

※4 7,200,000円÷6年=1,200,000円

※5 (1,200,000円-900,000円)×25%=75,000円

 建物と備品の減価償却の仕訳は、取得原価を耐用年数で割って1年あたりの金額を求めるだけです。

 ただし、備品に関しては税効果会計を適用する旨の指示があるため、減価償却費損金不算入額を計算したうえで適切に処理しましょう。

  • 会計上の減価償却費:7,200,000円÷6年=1,200,000円
  • 税務上の減価償却費:7,200,000円÷8年=900,000円
  • 減価償却費損金不算入額:1,200,000円-900,000円=300,000円
  • 法人税等調整額:300,000円×25%=75,000円

決算整理事項等4

(借)仮受消費税 7,280,000
 (貸)仮払消費税 6,064,000
 (貸)未払消費税 1,216,000 ※6

※6 7,280,000円-6,064,000円=1,216,000円(貸借差額)

 問題資料1に「仮払消費税 6,064,000」と「仮受消費税 7,280,000」があるので両者を相殺して、貸方残の1,216,000円を未払消費税で処理します。

決算整理事項等5

(借)貸倒引当金繰入 450,000 ※7
 (貸)貸倒引当金 450,000
(借)繰延税金資産 112,500 ※8
 (貸)法人税等調整額 112,500

※7 3,000,000円×15%=450,000円

※8 450,000円×25%=112,500円

 問題文に「貸付額につき15%の貸倒引当金を計上する」とあるので、貸付額3,000,000円の15%分の貸倒引当金を繰り入れます。

 さらに、問題文に「これに対する貸倒引当金繰入について損金算入が全額とも認められなかった」とあるので、貸倒引当金繰入損金不算入額を計算したうえで適切に処理しましょう。

  • 会計上の貸倒引当金繰入:3,000,000円×15%=450,000円
  • 税務上の貸倒引当金繰入:ゼロ
  • 貸倒引当金繰入損金不算入額:450,000円-0円=450,000円
  • 法人税等調整額:450,000円×25%=112,500円

決算整理事項等6

(借)その他有価証券 100,000
 (貸)その他有価証券評価差額金 75,000
 (貸)繰延税金資産 25,000
(借)その他有価証券 800,000
 (貸)その他有価証券評価差額金 600,000 ※9
 (貸)繰延税金負債 200,000 ※10

※9 (7,700,000円-6,900,000円)×75%=600,000円

※10 (7,700,000円-6,900,000円)×25%=200,000円

 問題文に「期首に戻し入れる洗替処理を行っていなかった」とあるので、まずは再振替仕訳を処理する必要があります。

 問題文のその他の情報と、決算整理前残高試算表の「繰延税金資産 25,000」「その他有価証券評価差額金 75,000」から、前期末に以下のような仕訳を切ったことが分かるので、前期末の仕訳の逆仕訳で再振替仕訳を処理しましょう。

参考:前期末の評価替えの仕訳
(借)その他有価証券評価差額金 75,000
(借)繰延税金資産 25,000
 (貸)その他有価証券 100,000
解答①(再振替仕訳)
(借)その他有価証券 100,000
 (貸)その他有価証券評価差額金 75,000
 (貸)繰延税金資産 25,000

 当期末の評価替えの仕訳は、その他有価証券の取得原価と時価との差額をその他有価証券評価差額金および繰延税金負債で処理します。

 なお、問題資料1の決算整理前残高試算表の「その他有価証券 6,800,000」は、再振替仕訳が行われる前の前期末の時価になります。取得原価を求めるさいは、この6,800,000円に前期末の評価替えで減らした100,000円を足しましょう。

  • 取得原価:6,800,000円+100,000円=6,900,000円
  • 時価:7,700,000円
  • その他有価証券評価差額金:(7,700,000円-6,900,000円)×75%=600,000円
  • 繰延税金負債:(7,700,000円-6,900,000円)×25%=200,000円
解答②(決算整理仕訳)
(借)その他有価証券 800,000
 (貸)その他有価証券評価差額金 200,000
 (貸)繰延税金資産 600,000

 以上、①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります。

決算整理事項等7

(借)法人税、住民税及び事業税 2,054,000
 (貸)仮払法人税等 720,000
 (貸)未払法人税等 1,334,000 ※11

※11 2,054,000円-720,000円=1,334,000円(貸借差額)

 問題文の「法人税、住民税及び事業税に ¥ 2,054,000 を計上」から、当期の法人税等の金額が分かるので、問題資料1の決算整理前残高試算表で与えられている「仮払法人税等 720,000」との差額を未払法人税等で処理します。

決算整理事項等8

決算整理事項等8
(借)繰延税金負債 187,500
 (貸)繰延税金資産 187,500

 まず、繰延税金資産と繰延税金負債の期末残高を確認しましょう。

  • 繰延税金資産:25,000円(決算整理前残高試算表)+75,000円(決算整理事項等3)+112,500円(決算整理事項等5)-25,000円(決算整理事項等6)=187,500円
  • 繰延税金負債:200,000円(決算整理事項等6)

 期末残高が確認できたら繰延税金資産と繰延税金負債を相殺し、純額12,500円(=200,000円-187,500円)を繰延税金負債(固定負債)として貸借対照表に表示します。

貸借対照表の繰越利益剰余金について

 繰越利益剰余金については、損益計算書を自作して当期純利益を計算し、これに決算整理前残高試算表の金額(5,192,000円)を加えて計算するか、もしくは答案用紙の貸借対照表の貸借差額で計算するかの2パターンの算定方法が考えられます。

  • 繰越利益剰余金の計算方法
    1. 当期純利益+前T/Bの繰越利益剰余金の合計額
    2. 貸借対照表の貸借差額

 ただ、限られた解答時間の中で損益計算書を自作するのは現実的ではありませんし、貸借差額で計算する方法も修正事項や決算整理事項等の処理をひとつでも間違えると金額が合わなくなるため、基本的には「捨て問(解かずに捨てるべき問題)」と考えてください。

 解答時間が余った場合にのみ、答案用紙の貸借対照表の貸借差額でサクッと計算しましょう。

繰越利益剰余金=4,795,300円(当期純利益)+5,192,000円(前T/Bの繰越利益剰余金)=9,987,300円

繰越利益剰余金=52,705,800円(資産合計)-12,118,500円(負債合計)-30,600,000円(繰越利益剰余金以外の純資産合計)=9,987,300円

解答テクニックと注意事項

 全体的な解答の流れとしては、まず問題資料の修正事項および決算整理事項等の仕訳を下書きし、答案用紙の貸借対照表を完成させる形が一般的ですが、下書きが完成した時点で損益計算書に関する勘定科目には打ち消し線を引いて集計から除外しましょう。

 本問は貸借対照表のみを作成する問題なので、損益計算書に関する勘定科目の増減は関係ありません。貸借対照表に関する勘定科目のみを効率よく集計するために、また集計漏れを防ぐために、集計作業に先立って損益計算書に関する勘定科目を除外しておくことをおすすめします。

 また、貸借対照表の貸倒引当金や減価償却累計額の金額の前には、マイナスを意味する△マークを勝手に付けてはいけません(※答案用紙に△マークが付いている場合はそのままでOKです)。

 筆記試験は模範解答以外は不正解になるため、△マークを勝手に付けた場合、金額が合っていても不正解になる可能性が高いです。解答にあたって特段の指示がない場合は、金額だけを記入しましょう。



ページの先頭へ