第145回・日商簿記検定2級 第3問(財務諸表作成問題)の過去問分析

第3問 難度の高いF/S作成問題。未払法人税等と繰越利益剰余金は捨てましょう。

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【財務諸表作成問題】でした。

 決算にあたっての修正事項・決算整理事項のひとつひとつの処理の難度が高く、また、1年基準による貸借対照表の表示も細かいところまで問われていたのでかなり大変だったと思います。私も震えました…。

 受験生アンケートでも、80%以上の方が「かなり難しかった」「やや難しかった」と回答しており、(20点満点中)8点~10点ぐらい取れれば御の字の問題だったと思います。

決算にあたっての修正事項1(売上の取消)

(借)売上 600,000
 (貸)売掛金 600,000

 検収基準を採用している場合、得意先の検収が完了していない分を売上にカウントすることはできないので、売上を取り消します。なお、このさいには売価を使う点に気をつけてください。

決算にあたっての修正事項2(備品の取得原価の修正)

(借)保守費 3,600
 (貸)備品 3,600
(借)前払費用 3,300 ※1
 (貸)保守費 3,300

※1 3,600円×11か月/12か月=3,300円

 備品の取得原価に保守料が混入していた場合、保守料を取り除いて一件落着…といきたいところですが、この保守料は3月から翌2月までの1年分なので、次期に属する11か月分(平成28年4月1日から平成29年2月末まで)を前払い処理する必要があります。この処理は難しい!

決算にあたっての修正事項3(利息受取時の仕訳の修正)

(借)仮払法人税等 4,000
 (貸)受取利息 4,000

 利息を受け取るさいに源泉所得税が差し引かれた場合、利息の総額を計上するとともに、控除された源泉所得税を仮払法人税等で処理する必要があります。よって、本来は以下のような仕訳を切らなければいけなかったわけです。

利息計上時に切った仕訳(処理済み)
(借)現金など 16,000
 (貸)受取利息 16,000
本来、切らなければいけなかった仕訳
(借)現金など 16,000
(借)仮払法人税等 4,000 ※3
 (貸)受取利息 20,000 ※2

※2 16,000円÷80%=20,000円

※3 20,000円×20%=4,000円

 よって、決算期末において計上できていなかった源泉税分を追加計上します。

決算にあたっての修正事項4(電子記録債務の計上漏れ)

(借)買掛金 140,000
 (貸)電子記録債務 140,000

 買掛金を電子記録債務に振り替えるだけです。

決算整理事項1(売上原価の算定)

(借)仕入 1,601,000
 (貸)繰越商品 1,601,000
(借)繰越商品 2,150,000 ※4
 (貸)仕入 2,150,000
(借)棚卸減耗損 40,000 ※5
 (貸)繰越商品 40,000

※4 1,750,000円+400,000円=2,150,000円

※5 1,750,000円-1,710,000円=40,000円

 出荷基準にもとづき算定された期末帳簿棚卸高・実地棚卸高には、修正事項1で行った売上の取消にかかる原価が含まれていません。よって、売上原価算定の仕訳の金額を考えるさいは、取消分の原価400,000円を考慮し忘れないように気をつけましょう。

  • 期末帳簿棚卸高:1,750,000円+400,000円=2,150,000円
  • 期末実地棚卸高:1,710,000円+400,000円=2,110,000円
  • 棚卸減耗損:1,750,000円-1,710,000円=40,000円

 …とまぁ仕訳とそれにかかる説明をしましたが、本問は貸借対照表しか問われていませんので、期末実地棚卸高1,710,000円に売上の取消にかかる原価400,000円を足し合わせて貸借対照表の商品2,110,000円を算定すればOKです(仕訳は不要です)。

決算整理事項2(未払費用の処理)

(借)未払費用 113,000
 (貸)給料 23,000
 (貸)水道光熱費 90,000
(借)給料 35,000
(借)水道光熱費 105,000
 (貸)未払費用 140,000

 ここ最近の試験でよく問われる形ですが、未払費用を振り替えるだけなので簡単です。

決算整理事項3(長期前払費用の振り替え)

(借)保険料 500 ※6
(借)前払費用 6,000 ※7
 (貸)長期前払費用 6,500

※6 18,000円×1か月/36か月=500円

※7 18,000円×12か月/36か月=6,000円

 問題文に「長期前払費用の残高は、3月1日に3年分の火災保険料を支払ったものである」とあるので、まず、「当期に属する分」「決算日の翌日から起算して1年以内の分」「それを超える先の分」の3つに分類しましょう。

  • 当期に属する分:1か月(平成28年3月1日~平成28年3月末日)→保険料として費用処理
  • 決算日の翌日から起算して1年以内の分:12か月(平成28年4月1日~平成29年3月末日)→前払費用として処理
  • それを超える先の分:23か月(平成29年4月1日~平成31年2月末日)→長期前払費用として処理

 よって、当期に属する分500円(=@500円×1か月)を保険料勘定に、決算日の翌日から起算して1年以内の分6,000円(=@500円×12か月)を前払費用勘定に振り替えます。

決算整理事項4(減価償却)

(借)減価償却費 7,050
 (貸)建物減価償却累計額 2,800
 (貸)備品減価償却累計額 4,250 ※8

※8 2,250円+2,000円=4,250円

  • 建物
    • 当期の減価償却費:810,000円÷30年=27,000円
    • 期中に計上した減価償却費:@2,200円×11か月=24,200円
    • 決算において計上する減価償却費:27,000円-24,200円=2,800円

 決算において計上する建物の減価償却費は、1年分の減価償却費から期中に計上した11か月分の減価償却費(概算額)を差し引いて求めます。

  • 備品(旧備品100,000円、新備品60,000円)
    • 期中に計上した旧備品の減価償却費:@1,500円×11か月=16,500円
    • 旧備品の償却率:1÷8年×200%=25%
    • 当期の旧備品の減価償却費:100,000円-(41,500円-16,500円)×25%=18,750円
    • 決算において計上する旧備品の減価償却費:18,750円-16,500円=2,250円
    • 新備品の償却率:1÷5年×200%=40%
    • 決算において計上する新備品の減価償却費:60,000円×40%×1か月/12か月=2,000円

 備品に関しては、まず従前から保有しているもの(旧備品)と、期中に新たに購入したもの(新備品)とに分けたうえで、決算において計上する減価償却費を計算します。

 旧備品に関しては、上述の建物と同様に1年分の減価償却費から期中に計上した11か月分の減価償却費(概算額)を差し引いて求めます。

 計算にあたっては、決算整理前残高試算表の「備品減価償却累計額 41,500」に、期中に計上した11か月分の減価償却費が含まれていることにご留意ください。

 一方、新備品に関しては、1年分の減価償却費を計算したうえで、そのうちの1か月分(平成28年3月分)のみを当期の減価償却費として計上します。

決算整理事項5(借入金の長短分類・利息の前払い)

(借)短期借入金 600,000
 (貸)長期借入金 600,000
(借)支払利息 2,200 ※9
 (貸)前払費用 2,200

※9 400円+1,800円=2,200円

 借入金の貸借対照表上での取り扱いに関しては、決算日の翌日から起算して1年以内に返済期日が到来するものは短期借入金として表示し、1年を超えて到来するものは長期借入金として表示します。

  • 返済期日が平成29年1月31日の借入金200,000円:決算日の翌日から起算して1年以内に返済期日が到来する→短期借入金
  • 返済期日が平成29年1月31日の借入金600,000円:決算日の翌日から起算して1年を超えて返済期日が到来する→長期借入金

 よって、決算整理前残高試算表に計上されている「短期借入金 800,000」のうち、600,000円を長期借入金に振り替えます。

 さらに、2月1日に6か月分の利息を前払いし、前払費用に計上している旨の記載があるので、当期に属する2か月分(2月分・3月分)の利息を支払利息に振り替えます。

  • 200,000円×1.2%×2か月/12か月=400円
  • 600,000円×1.8%×2か月/12か月=1,800円

決算整理事項6(貸付金の長短分類)

(借)短期貸付金 50,000
 (貸)長期貸付金 50,000

 貸付金の貸借対照表上での取り扱いに関しては、上述の借入金と同様、決算日の翌日から起算して1年以内に返済期日が到来するものは短期貸付金として表示し、1年を超えて到来するものは長期貸付金として表示します。

  • 返済期日が平成28年9月30日の貸付金50,000円:決算日の翌日から起算して1年以内に返済期日が到来する→短期貸付金
  • 返済期日が平成30年9月30日の貸付金200,000円:決算日の翌日から起算して1年を超えて返済期日が到来する→長期貸付金

 よって、決算整理前残高試算表に計上されている「長期貸付金 250,000」のうち、50,000円を短期貸付金に振り替えます。

 利息に関しては、問題文に「期末までの利息(利率年2.4%)は全額受領済みである」とあるので、決算において調整する必要はありません。

決算整理事項7(貸倒引当金の設定)

(借)貸倒引当金繰入 11,180 ※10
 (貸)貸倒引当金 11,180

※10 140,000円+(2,078,000円-600,000円)×1%-5,000円=11,180円

 繰入額の計算にあたっては、「決算にあたっての修正事項1」で減らした売掛金600,000円を考慮し忘れないように気をつけてください。

決算整理事項8(退職給付引当金の設定)

(借)退職給付費用 60,000
 (貸)退職給付引当金 60,000

 問題の指示通りに退職給付費用を計上するだけです。

決算整理事項9(法人税等の計上)

(借)法人税等 148,800
 (貸)仮払法人税等 7,000
 (貸)未払法人税等 141,800

 本問は法人税等の金額が与えられていないので、損益計算書を自分で作って税引前当期純利益の金額を計算する必要があります。

 ただ、決算にあたっての修正事項および決算整理事項の処理が1つでも間違っていると正しい税引前当期純利益の金額を算定することは出来ないので、答案用紙の未払法人税等と繰越利益剰余金の金額は、基本的には捨て問(本試験では無理して解かなくて良い問題)になります。

 以下の解説は参考までにご確認ください。

損益計算書を自分で作って税引前当期純利益を計算する方法

 下書き用紙に以下のような損益計算書を書いて、貸借差額で税引前当期純利益を計算します。

損益計算書
売上原価
給料手当
賃借料
保険料
水道光熱費
減価償却費
保守料
棚卸減耗損
貸倒引当金繰入
退職給付費用
支払利息
税引前当期純利益
6,000,800 ※11
3,822,000 ※12
885,000 ※13
15,500 ※14
214,400 ※15
47,750 ※16
300 ※17
40,000 ※18
11,180 ※19
60,000 ※20
42,200 ※21
500,000 ※22
売上高
受取利息
11,614,130 ※23
25,000 ※24

※11 1,601,000円+6,549,800円-2,150,000円=6,000,800円

※12 3,810,000円-23,000円+35,000円=3,822,000円

※13 問題資料1の「賃借料 885,000」より

※14 15,000円+500円=15,500円

※15 199,400円-90,000円+105,000円=214,400円

※16 40,700円+2,800円+4,250円=47,750円

※17 3,600円-3,300円=300円

※18 2,150,000円-2,110,000円=40,000円

※19 決算整理事項7の仕訳より

※20 決算整理事項8の仕訳より

※21 40,000円+2,200円=42,200円

※22 貸借差額

※23 12,214,130円-600,000円=11,614,130円

※24 21,000円+4,000円=25,000円

 税引前当期純利益の金額が500,000円と分かったら、その30%分の150,000円を法人税等として計上し…たいところですが、本問は問題文に「当期の税引前当期純利益の30%を、差額補充法により未払法人税等に計上する」という指示があるので、決算整理前残高試算表の「未払法人税等 1,200」を忘れずに考慮する必要があります。

解答仕訳1
(借)法人税等 148,800 ※25
 (貸)未払法人税等 148,800

※25 150,000円-1,200円=148,800円

 さらに、「仮払法人税等の額は、未払法人税等と相殺して表示する」という指示もあるので、決算整理前残高試算表の「仮払法人税等 3,000」と、決算にあたっての修正事項3で計上した4,000円の合計額を、未払法人税等から差し引きます。

解答仕訳2
(借)未払法人税等 7,000
 (貸)仮払法人税等 7,000

 以上、2本の仕訳をまとめると解答仕訳になりますが…こんな正直計算できませんよね。私も無理です。よって、本問の未払法人税等と繰越利益剰余金の金額は思い切って捨ててください。浮いた時間で他の問題を解いたほうがよっぽど効率的です。

繰越利益剰余金の金額は?

 決算整理前残高試算表の「繰越利益剰余金 886,470」と、税引前当期純利益500,000円から法人税等148,800円を差し引いた351,200円(=税引後当期純利益)との合計額1,237,670円になります。参考までにご確認ください。



ページの先頭へ