第143回・日商簿記検定2級 第3問(財務諸表作成問題)の過去問分析

第3問 質・量ともに平均レベルの損益計算書作成問題。貸引の処理がポイント!

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【財務諸表作成問題】でした。具体的には…資料1の決算整理前残高試算表に、資料2の決算にあたっての修正事項と、資料3の決算整理事項を加味して、答案用紙の損益計算書を作成する問題でした。

 貸倒引当金繰入の処理が少し難しかったかもしれませんが、その他は質・量ともに平均レベルの問題なので、過去問対策をきちんとやっていた方にとってはボーナス問題だったと思います。

 受験生アンケートでは半分以上の方が「普通ぐらいだった」と回答していますが、第2問の難度を考えると…合格するためには最低でも7割(14点)は取らなければいけない問題です。

資料2-1 内装工事の処理

(借)建物 600,000
 (貸)修繕費 600,000

 固定資産を購入した場合、購入代価と付随費用(取得に伴い発生した費用)の合計額を取得原価として資産計上するので、本問の内装工事代の600,000円についても取得原価に含めて処理すべきです。

 にもかかわらず、問題文に「建物に関し、使用できる状態にするための内装工事に ¥ 600,000 を支出していたが、これをすべて修繕費として処理していた」とあるので、決算にあたって修繕費勘定を建物勘定に振り替えます。

資料2-2 売上の追加計上

(借)売掛金 70,000
 (貸)売上 70,000

 検収基準を採用している場合、得意先の検収作業が完了し、完了の通知を受けたタイミングで収益を計上します。よって、新たに検収が完了した70,000円について、掛け売上を計上します。仕訳自体はとても簡単です。

資料2-3 売掛金の貸倒れ

(借)貸倒引当金 20,000
(借)貸倒損失 30,000
 (貸)売掛金 50,000

 当期に販売した商品にかかる売掛金が貸倒れた場合、貸倒引当金を取り崩すことはできない(※前期末の決算をまたいでいないから)ので、貸倒損失勘定で費用処理します。

 一方、残りの20,000円(=50,000円-30,000円)については、貸倒引当金を取り崩して処理します。

資料3-1 売上原価の算定

(借)仕入 3,800,000
 (貸)繰越商品 3,800,000
(借)繰越商品 4,200,000
 (貸)仕入 4,200,000
(借)棚卸減耗損 180,000
(借)商品評価損 180,000
 (貸)繰越商品 370,000

 解説上は、毎度おなじみの「しーくりくりしー」という売上原価算定の仕訳を切りますが、実際に問題を解くさいにはこれらの仕訳を書く必要はありません。以下のような商品ボックス図を書いてパパっと処理しましょう。

商品ボックス図
商品ボックス図

資料3-2 貸倒引当金の繰り入れ

(借)貸倒引当金繰入 35,700
 (貸)貸倒引当金 35,700

 受取手形および売掛金の貸倒引当金を計算するさいは、「資料2-2 売上の追加計上」と「資料2-3 売掛金の貸倒れ」の売掛金の増減を考慮し忘れないように気をつけましょう。

(3,087,000円+5,163,000円+70,000円-50,000円)×1%=82,700円

 クレジット売掛金はそのまま計算するだけです。

1,800,000円×0.5%=9,000円

 貸倒引当金の繰入額を計算するさいは、「資料2-3 売掛金の貸倒れ」の貸倒引当金の減少を考慮し忘れないように気をつけましょう。

(82,700円+9,000円)-(76,000円-20,000円)=35,700円

資料3-3 固定資産の減価償却

(借)減価償却費 463,500
 (貸)建物減価償却累計額 103,500
 (貸)車両減価償却累計額 360,000

 建物の減価償却に関しては、既存分4,000,000円(=7,000,000円-3,000,000円)と新規取得分3,600,000円(=3,000,000円+600,000円)を別々に計算しましょう。

 なお、新規取得分は、問題文に「翌年2月1日より使用している」とあるので、期末までの2か月分(平成28年2月1日~3月31日)を月割計上します。12月1日からの4か月分を計上しないように気をつけてください。

既存分:4,000,000円×90%÷40年=90,000円

新規取得分:3,600,000円×90%÷40年×2か月/12か月13,500円

 車両の減価償却に関しては、普通に計算するだけなので特に問題ないと思います。

2,000,000円×90%×40,000km/200,000km=360,000円

資料3-4 有価証券の評価替え

(借)売買目的有価証券 50,000
 (貸)有価証券評価益 50,000
(借)その他有価証券 30,000
 (貸)その他有価証券評価差額金 30,000

 売買目的有価証券の時価と帳簿価額との差額を、有価証券評価損または評価益(有価証券運用損または運用益でもOK)勘定で処理します。一方、その他有価証券は時価と帳簿価額との差額をその他有価証券評価差額金勘定で処理します。

  • 売買目的有価証券の帳簿価額:550,000円
  • 売買目的有価証券の時価:600,000円
  • 差額:50,000円(帳簿価額<時価…評価益)
  • その他有価証券の帳簿価額:720,000円
  • その他有価証券の時価:750,000円
  • 差額:30,000円(帳簿価額<時価…貸方に評価差額金)

資料3-5 退職給付引当金の繰り入れ

(借)退職給付費用 490,000
 (貸)退職給付引当金 490,000

 問題文に「当期の退職給付費用は ¥ 490,000 と見積もられた」とあるので、指示通り処理するだけです。

資料3-6 保険料の繰り延べ

(借)前払保険料 60,000
 (貸)保険料 60,000

 保険料の繰り延べはほぼ毎回出題される頻出論点なので、ここで考え方・処理方法を改めて確認しておきたいと思います。まずは前期末の仕訳を考えてみましょう。

前期末の(保険料の繰延べの)仕訳
(借)前払保険料 2か月分の保険料
 (貸)保険料 2か月分の保険料

 問題文に「毎年同額を6月1日に向こう1年分をまとめて支払っている」とあるので、前期末に「当期の4月1日から5月末までの2か月分の保険料」を前払保険料勘定を使って繰延処理したことが分かります。

 なお、この時点では2か月分の保険料の具体的な金額が分からないので、仕訳の金額部分は暫定的に「2か月分の保険料」としています。

 それでは次に、上記の仕訳を参考にして当期首の再振替仕訳を考えます。

【4月1日】再振替仕訳
(借)保険料 2か月分の保険料
 (貸)前払保険料 2か月分の保険料

 当期首の再振替仕訳については、前期末の仕訳の逆仕訳をするだけなので特に問題ないと思います。では次に、6月1日(保険料支払日)の仕訳を考えてみましょう。

【6月1日】1年分の保険料を支払った時の仕訳
(借)保険料 12か月分の保険料
 (貸)現金など 12か月分の保険料

 この結果、資料1の決算整理前残高試算表に記載されている保険料420,000円というのは、2か月分の保険料+12か月分の保険料=14か月分の保険料の金額ということになるので、この420,000円を14か月で割ると、1か月あたりの保険料が30,000円であることが分かります。

 1か月あたりの保険料を算定することが出来たら、最後に当期末の費用の繰り延べの仕訳を考えますが、この仕訳の金額については今までのように「~か月分の保険料」という形ではなくて、1か月あたりの保険料を元に正しい金額を記入します。

 具体的には、前期末と同様に2か月分の費用の繰り延べを行うので、1か月あたりの保険料30,000円×2か月=60,000円になります。

【解答】費用の繰り延べの仕訳
(借)前払保険料 60,000
 (貸)保険料 60,000

資料3-7 貸付金の処理

(借)未収利息 100,000
 (貸)受取利息 100,000
(借)貸倒引当金繰入 150,000
 (貸)貸倒引当金 150,000

 貸付金に関する処理は【利息の見越計上に関する取引】と【貸倒引当金の繰り入れに関する取引】に分けて考えましょう。

利息の見越計上に関する取引

 問題文に「貸付金は、平成27年11月1日に取引先甲斐商店に期間1年、利息は年利率4.8%にて返済時に元本とともに受け取る条件で貸し付けたものである」とあるので、当期に属する5か月分(平成27年11月1日~平成28年3月31日)の利息を見越計上します。

5,000,000円×4.8%×5か月/12か月100,000円

貸倒引当金の繰り入れに関する取引

 問題文に「3%の貸倒引当金を設定する」とあるので、指示に従って繰入額を計算しましょう。

5,000,000円×3%=150,000円

 なお、貸付金等の営業外債権にかかる貸倒引当金繰入額は、販売費及び一般管理費ではなく営業外費用として処理します。損益計算書の計上場所を間違えないように気をつけてください。

  • 売上債権(営業債権)にかかる貸倒引当金繰入額→販売費及び一般管理費に計上
  • 営業外債権にかかる貸倒引当金繰入額→営業外費用に計上

資料3-8 法人税の処理

(借)法人税、住民税及び事業税 1,000,000
 (貸)未払法人税等 1,000,000

 問題文に「税引前当期純利益の25%に当たる ¥ 1,000,000 を「法人税、住民税及び事業税」に計上する」とあるので、指示に従って法人税等の金額を処理するとともに、逆算で税引前当期純利益の金額を算定し、差額で当期純利益の金額を求めましょう。

税引前当期純利益=1,000,000円÷25%=4,000,000円

当期純利益=税引前当期純利益-法人税等=4,000,000円-1,000,000円=3,000,000円



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