第142回・日商簿記検定2級 第3問(財務諸表作成問題)の過去問分析

第3問 過去最高難度の財務諸表作成問題。特に減価償却の処理が難しすぎおすぎ…

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【財務諸表作成問題】でした。具体的には…資料Ⅰの決算整理前残高試算表に資料Ⅱの未処理事項と資料Ⅲの決算整理事項を加味して、答案用紙の貸借対照表を作成する問題でした。

 本問は、処理すべき問題の量が多く、しかもひとつひとつの難度も高いので(特に減価償却の処理)、解いている途中に戦意を喪失してしまった受験生も多かったと思います。

 私も実際に問題を解きましたが、過去の本試験問題の中で最も難しい問題と言っても過言ではありません。初見では20点満点中、8点~10点ぐらい取れれば十分だと思います。

 受験生アンケートでも80%以上の方が「かなり難しかった」と回答しています。

[資料Ⅱ]未処理事項

1.
(借)貸倒引当金 5,000
 (貸)売掛金 5,000
2.
(借)仮受金 2,000
 (貸)償却債権取立益 2,000
3.
(借)通信費 7,500
 (貸)現金預金 7,500
4.
(借)売上 6,000
 (貸)前受金 6,000

1. 売掛金の貸倒れ処理

 前期に発生した売掛金の貸倒れを、貸倒引当金を取り崩して処理するだけです。

2. 貸倒れ債権の回収

 問題文の「これが仮受金に計上されたままとなっていた」から、前期に貸倒れ処理した売掛金(の一部)を回収したさいに仮受金勘定で処理していたことが分かるので、仮受金勘定を償却債権取立益勘定に振り替えます。

参考・回収時の仕訳
(借)現金など 2,000
 (貸)仮受金 2,000
解答仕訳
(借)仮受金 2,000
 (貸)償却債権取立益 2,000

3. 通信費の処理

 未処理となっていた通信費7,500円を通信費勘定で費用処理するだけです。

4. 売上の取消処理

 まず、問題文の「すでに代金を現金で受領していた商品の売上(売価 ¥ 6,000、原価 ¥ 4,900)」から、売上時の仕訳をイメージします。

参考・売上時の仕訳
(借)前受金 6,000
 (貸)売上 6,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、売上の取り消し処理を考えますが、仕訳自体は単に売上時の逆仕訳をするだけなので特に問題ないと思います。

解答仕訳
(借)売上 6,000
 (貸)前受金 6,000

[資料Ⅲ]決算整理事項

1.
(借)貸倒引当金繰入 3,800
 (貸)貸倒引当金 3,800
2.
(借)仕入 8,500
 (貸)買掛金 8,500
(借)仕入 1,040,000
 (貸)繰越商品 1,040,000
(借)繰越商品 953,400
 (貸)仕入 953,400
(借)棚卸減耗損 2,500
 (貸)繰越商品 2,500
3.
(借)未払費用 150,000
 (貸)給料 140,000
 (貸)水道光熱費 10,000
(借)給料 143,000
(借)水道光熱費 12,000
 (貸)未払費用 155,000
4.
(借)保険料 2,000
(借)前払費用 24,000
 (貸)長期前払費用 26,000
5.
(借)減価償却費 6,000
 (貸)建物減価償却累計額 4,500
 (貸)備品減価償却累計額 1,500
6.
(借)借入金 1,600,000
 (貸)短期借入金 600,000
 (貸)長期借入金 1,000,000
(借)支払利息 8,400
 (貸)前払費用 8,400
7.
(借)商標権償却 20,000
 (貸)商標権 20,000
8.
(借)賞与引当金繰入 50,000
 (貸)賞与引当金 50,000
9.
(借)未収還付法人税等 4,000
 (貸)仮払法人税等 4,000

1. 貸倒引当金の設定

 貸倒引当金を計算するさいは、資料Ⅱの未処理事項1の売掛金および貸倒引当金の減少を考慮し忘れないように気をつけましょう。

(75,000円+610,000円-5,000円)×1%-(8,000円-5,000円)=3,800円

貸倒引当金の設定
(借)貸倒引当金繰入 3,800
 (貸)貸倒引当金 3,800

2. 売上原価の算定

 売上原価を算定する前に、調査の結果判明した差異を原因①②を適切に処理しましょう。

 まず、問題文に「①3月30日に納入された商品 ¥ 8,500の掛仕入が帳簿上で計上もれであった」とあるので、正しい仕訳を切って帳簿上の差異の原因を解消しましょう。

①計上もれになっていた仕訳
(借)仕入 8,500
 (貸)買掛金 8,500

 また、「帳簿上で計上もれ」という一文から、期末の帳簿棚卸高940,000円の中にこの商品が含まれていないことが分かるので、8,500円を加算します。

  • 帳簿棚卸高:940,000円+8,500円=948,500円
  • 実地棚卸高:946,000円

 次に、問題文に「②[資料Ⅱ]4.の商品は帳簿棚卸高と実地棚卸高のいずれにも含まれていない」とあるので、商品の原価4,900円を帳簿棚卸高と実地棚卸高に加算します。売価を足さないように気をつけてください。

  • 帳簿棚卸高:948,500円+4,900円=953,400円
  • 実地棚卸高:946,000円+4,900円=950,900円

 ①②を適切に処理したことにより期末の帳簿棚卸高が953,400円、実地棚卸高が950,900円と分かるので、あとは毎度おなじみの「しーくりくりしー」という売上原価算定の仕訳を切ります。

売上原価算定の仕訳
(借)仕入 1,040,000
 (貸)繰越商品 1,040,000
(借)繰越商品 953,400
 (貸)仕入 953,400

 最後に、帳簿棚卸高と実地棚卸高との差額2,500円(=953,400円-950,900円)を棚卸減耗損として処理します。

棚卸減耗損の処理
(借)棚卸減耗損 2,500
 (貸)繰越商品 2,500

3. 未払費用の処理

 問題文に「期首の再振替仕訳は行われていない」とあるので、(XYZ商事株式会社の経理担当者に対して「おまえ、第140回試験の問題でも再振替仕訳を忘れてたぞ!」と舌打ちしたあと)前期末に計上された未払費用150,000円を適切な勘定科目に振り替えます。

前期末に計上した未払費用の処理
(借)未払費用 150,000
 (貸)給料 140,000
 (貸)水道光熱費 10,000

 また、問題文に「当期末の未払額は給料143,000円および水道光熱費12,000円であった」とあるので、(お好きな電力会社に対して「また今年も値上げかよ!」と舌打ちしたあと)当期末時点の未払分を計上します。

当期末に計上する未払費用の処理
(借)給料 143,000
(借)水道光熱費 12,000
 (貸)未払費用 155,000

4. 長期前払費用の処理

 まず、問題文の「長期前払費用の残高は、平成28年3月1日に2年分の火災保険料を支払ったものである」から、保険料支払時の仕訳をイメージしてみましょう。

参考・保険料支払時の仕訳
(借)長期前払費用 48,000
 (貸)現金など 48,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、問題文の「当期分を月割りで費用に計上するとともに、1年以内に費用化される部分の金額を前払費用に振り替える」という指示に従って、長期前払費用を適切な勘定科目に振り替えます。

  • 当期に費用処理される分:1か月(平成28年3月1日~平成28年3月31日)
  • 1年以内に費用化される分:12か月(平成28年4月1日~平成29年3月31日)
  • 1年以上先に費用化される分:11か月(平成29年4月1日~平成30年2月28日)
  • 48,000円÷24か月=@2,000円 @2,000円×1か月=2,000円
  • 48,000円÷24か月=@2,000円 @2,000円×12か月=24,000円
解答仕訳
(借)保険料 2,000
(借)前払費用 24,000
 (貸)長期未払費用 26,000

5. 減価償却

 建物に関しては、問題文に「建物の取得原価のうち ¥ 150,000は平成27年10月1日に取得し使用開始したもの…」とあるので、決算整理前残高試算表に計上されている1,200,000円を「旧建物分」と「新建物分」に分けましょう。

  • 新建物:150,000円
  • 旧建物:1,050,000円(=1,200,000円-150,000円)

 そのうえで、当期の減価償却費を月割りで計算しましょう。計算自体は簡単なので特に問題ないと思います。

  • 新建物:150,000円÷30年×6か月/12か月=2,500円
  • 旧建物:1,050,000円÷30年=35,000円

 さらに、問題文に「減価償却費は概算額で建物は ¥ 3,000~を4月から2月までの月次決算で計上してきているが、減価償却費の年間確定額との差額を決算月で計上する」とあるので、決算においては減価償却費の差額分のみを計上します。

  • 4月から2月までの月次決算で計上してきた減価償却費:3,000円×11か月=33,000円
  • 当期の減価償却費:37,500円(=2,500円+35,000円)
  • 決算において追加計上する減価償却費:37,500円-33,000円=4,500円
解答仕訳
(借)減価償却費 4,500
 (貸)建物減価償却累計額 4,500

 備品に関しては、償却方法が「200%定率法」としか書かれておらず、具体的な償却率が書かれていないので各自で計算する必要があります。

 200%定率法の償却率は「定額法の償却率×200%(つまり2倍)」で計算できるので、まず先に定額法の償却率を算定したうえで、それを2倍して200%定率法の償却率を求めましょう。

  • 定額法の償却率:1÷8年=0.125(12.5%)
  • 200%定率法の償却率:0.125×2=0.25(25%)

 上のような流れで償却率を計算したら、備品の当期の減価償却費を計算しましょう。

 定率法なので「(取得原価-期首減価償却累計額)×償却率」という計算式になりますが、決算整理前残高試算表の「備品減価償却累計額 436,000」には、当期の11か月分の減価償却費が含まれている点に気をつけてください。

  • 取得原価:640,000円
  • 期首減価償却累計額:436,000円-@6,000円×11か月=370,000円
  • 当期の減価償却費:(640,000円-370,000円)×25%=67,500円

 当期の減価償却費を計算したら、建物と同様に、決算において計上する減価償却費の差額分を求めましょう。

  • 4月から2月までの月次決算で計上してきた減価償却費:6,000円×11か月=66,000円
  • 当期の減価償却費:67,500円
  • 決算において追加計上する減価償却費:67,500円-66,000円=1,500円
解答仕訳
(借)減価償却費 1,500
 (貸)備品減価償却累計額 1,500

6. 借入金の処理

 借入金の貸借対照表の表示に関しては、決算日の翌日から起算して1年以内に期限が到来するものは短期借入金(流動負債)として表示し、1年を超えて期限が到来するものは長期借入金(固定負債)として表示します。

  • 平成29年1月31日に返済期日が到来する借入金600,000円:短期借入金
  • 平成31年1月31日に返済期日が到来する借入金1,000,000円:長期借入金
解答仕訳
(借)借入金 1,600,000
 (貸)短期借入金 600,000
 (貸)長期借入金 1,000,000

 利息に関しては、問題文に「利息は2月1日と8月1日に6か月分を前払いすることとし、支払時に全額を前払費用に計上している」とあるので、まずは利息の前払時の仕訳をイメージしてみましょう。

  • 借入金600,000円の6か月分の利息:600,000円×2.4%×6か月/12か月=7,200円
  • 借入金1,000,000円の6か月分の利息:1,000,000円×3.6%×6か月/12か月=18,000円
参考・利息の前払時の仕訳
(借)前払費用 25,200
 (貸)現金など 25,200

 上記の仕訳を踏まえたうえで、当期に属する2か月分(2月1日~3月31日)の利息を前払費用勘定から支払利息勘定に振り替えます。

  • 借入金600,000円の2か月分の利息:600,000円×2.4%×2か月/12か月=2,400円
  • 借入金1,000,000円の2か月分の利息:1,000,000円×3.6%×2か月/12か月=6,000円
解答仕訳
(借)支払利息 8,400
 (貸)前払費用 8,400

7. 商標権の処理

 問題文の「商標権は、平成23年4月1日に取得した」から、決算整理前残高試算表の「商標権 120,000」は、既に4回(平成24年3月31日、平成25年3月31日、平成26年3月31日、平成27年3月31日)償却された残額であると分かるので、120,000円を残りの償却期間6年(=10年-4年)で割って1年あたりの償却額20,000円を計算します。

 よくある間違いとしては、単純に「10年で割ってしまう」のと、平成23年4月1日から決算日の平成28年3月31日まで5年経っているから「5年で割ってしまう」の2つが考えられます。

 本問の場合、10年でも5年でも割りきれてしまうので、間違えてしまった方も多かったようです。この2つの間違いはのれん償却の「典型的なひっかけポイント」なので気をつけてください。

解答仕訳
(借)商標権償却 20,000
 (貸)商標権 20,000

8. 賞与引当金の処理

 問題文に「平成27年10月から平成28年2月まで、毎月 ¥ 30,000を計上してきた」とあるので、まずは5か月分の仕訳をイメージしてみましょう。

参考・平成27年10月の仕訳
(借)賞与引当金繰入 30,000
 (貸)賞与引当金 30,000
参考・平成27年11月の仕訳
(借)賞与引当金繰入 30,000
 (貸)賞与引当金 30,000
参考・平成27年12月の仕訳
(借)賞与引当金繰入 30,000
 (貸)賞与引当金 30,000
参考・平成28年1月の仕訳
(借)賞与引当金繰入 30,000
 (貸)賞与引当金 30,000
参考・平成28年2月の仕訳
(借)賞与引当金繰入 30,000
 (貸)賞与引当金 30,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、問題文に「期末に支給見積額が ¥ 200,000となり追加計上を行う」とあるので、すでに計上済みの150,000円との差額50,000円(=200,000円-150,000円)を決算において追加計上します。

解答仕訳
(借)賞与引当金繰入 50,000
 (貸)賞与引当金 50,000

9. 法人税の計算

 問題文に「当期の税引前利益の40%を、未払法人税等に計上することとしている」とあるので、まず、以下のような損益計算書を自作して税引前当期純利益(または純損失)の金額を計算する必要があります。

損益計算書
売上原価
給料
旅費交通費
水道光熱費
通信費
保険料
減価償却費
賞与引当金繰入
貸倒引当金繰入
棚卸減耗損
商標権償却
支払利息
8,495,100
1,603,000
150,000
102,000
87,500
34,000
105,000
200,000
3,800
2,500
20,000
56,400
売上
受取利息
償却債権取立益
当期純損失
10,394,000
20,000
2,000
443,300
10,859,300 10,859,300

 上記の損益計算書から当期純損失が発生していることが分かるので、「利益がマイナス→法人税ゼロ」と判断し、決算整理前残高試算表に計上されている仮払法人税等4,000円の全額を未収還付法人税等に振り替えます。

 ※ 8.までの処理が1つでも間違っていると正しい税引前当期純利益(または純損失)の金額を算定することは出来ないので、答案用紙の未収還付法人税等と繰越利益剰余金の金額は、基本的には捨て問(本試験では無理して解かなくて良い問題)になります。



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