第141回・日商簿記検定3級 第5問(財務諸表作成問題)の過去問分析

第5問 問題の資料が読みづらい財務諸表作成問題!現金と備品の推定がつらい…

第5問の難度アンケート結果

 第5問は、【財務諸表作成問題】でした。決算整理前の各勘定の残高が試算表ではなく、仕訳問題の勘定科目のように並べられていて読み取りづらかったですし、しかも現金勘定の残高を貸借差額で算定させるという嫌なおまけ付きでした。

 財務諸表作成問題は第138回の第5問でも出題されていますが、問題の難度自体は本問のほうが高いですし、しかも第138回は第3問が簡単な試算表作成問題だったのに対し、今回の第3問はボリュームの大きい試算表作成問題だったこともあり、解答時間が足らなかったという受験生も多かったようです。

 受験生アンケートでも、70%以上の方が「かなり難しかった」と回答しています。

財務諸表作成問題と精算表作成問題の違いについて

 どちらもやることは同じです。決算整理前の各勘定の残高に、未処理事項・決算整理事項等を反映させて貸借対照表・損益計算書を作成します。両者は表示形式が異なるだけです。

 「財務諸表作成問題は精算表作成問題よりも難しい」という先入観は捨てて、やることは精算表作成問題と同じなんだ、と前向きに考えて問題を解き進めてください。

本問の解答手順について

 本問は決算整理前の現金勘定と資本金勘定を各自で推定する必要があります。資本金勘定は問題の資料(1)で記入状況が明らかになっているので、貸借差額で3,200,000円を計算します。

 一方、現金勘定は問題の資料(1)から自分で前T/B(決算整理前残高試算表)を作成して貸借差額で計算する必要があります。下書き用紙に、以下の様な前T/Bを作って計算しましょう。

 なお、資産の金額を計算するさいには、資産の勘定科目群にこっそり混じっている「貸倒引当金 10,000」を、うっかり足さないように気をつけてください(私はうっかり足してしまいました…)。

現金勘定を推定するために作成する前T/B
現金勘定を推定するために作成する前T/B
  • 資産の合計額:現金+当座預金+受取手形+売掛金+繰越商品+備品=?円+2,725,000円+650,000円+800,000円+370,000円+1,300,000円=?+5,845,000円
  • 費用の合計額:仕入+給料+支払家賃+水道光熱費+保険料+通信費+消耗品費+支払利息=12,500,000円+2,800,000円+900,000円+240,000円+174,000円+96,000円+75,000円+20,000円=16,805,000円
  • 借方合計:?+5,845,000円+16,805,000円=?+22,650,000円
  • 負債の合計額:貸倒引当金+支払手形+買掛金+借入金=10,000円+400,000円+600,000円+2,000,000円=3,010,000円
  • 純資産の合計額:3,200,000円
  • 収益の合計額:売上+受取手数料=17,000,000円+30,000円=17,030,000円
  • 貸方合計:3,010,000円+3,200,000円+17,030,000円=23,240,000円
  • 借方合計=貸方合計
  • ?+22,650,000円=23,240,000円
  • ?=590,000円 → 決算整理前の現金の残高は590,000円

 上記のような流れで現金勘定と資本金勘定の金額を計算しますが、現金勘定を計算するのにかなり時間がかかりますし、ケアレスミスをする可能性も高いです。

 よって、もし解答時間に余裕が無い場合は…資料(2)の1.の「期末の現金実際有高は580,000円」から、貸借対照表の現金の金額が580,000円ということが分かるので、ひとまず貸借対照表の現金欄に580,000円と記入しておき、決算整理前の現金勘定の残高の計算は後回しにしても構いません。

 解答時間は有限なので、効率よく点数が取れそうなところを優先して解いてください。


 それでは次の作業に進みましょう。資料(2)の決算整理事項等の全取引の仕訳を下書き用紙に書きだしたうえで、それらを集計して答案用紙の損益計算書と貸借対照表を完成させます。

決算整理事項等

1. 現金過不足の処理
(借)雑損 10,000
 (貸)現金 10,000
2. 未処理取引
(借)当座預金 50,000
 (貸)売掛金 50,000
3. 貸倒引当金
(借)貸倒引当金繰入 4,000
 (貸)貸倒引当金 4,000
4. 売上原価の算定
(借)仕入 370,000
 (貸)繰越商品 370,000
(借)繰越商品 420,000
 (貸)仕入 420,000
5. 減価償却
(借)減価償却費 260,000
 (貸)備品 260,000
6. 消耗品の処理
(借)消耗品 22,000
 (貸)消耗品費 22,000
7. 保険料の繰延処理
(借)前払費用 36,000
 (貸)保険料 36,000
8. 利息の見越計上
(借)支払利息 4,000
 (貸)未払費用 4,000

1. 現金過不足の処理

 帳簿残高590,000円と実際有高580,000円との差額10,000円を雑損勘定で処理します。帳簿残高と実際有高のズレが判明した場合、常に「帳簿残高を実際有高に合わせる」のが簿記のルールなので、間違えないように気をつけてください。

 また、決算整理時に帳簿残高と実際有高のズレが判明した場合、現金過不足勘定は使わずに差額を雑損または雑益勘定で処理します。現金過不足勘定は、期中に価不足が判明した場合に一時的に使う勘定科目なので、こちらも間違えないように気をつけてください。

参考:期末に現金のズレが判明した場合の仕訳

期末時の処理(帳簿>実際)
(借)雑損 *****
 (貸)現金 *****

参考:期中に現金のズレが判明した場合の仕訳

期中の処理(帳簿>実際)
(借)現金過不足 *****
 (貸)現金 *****
期末時の処理
(借)雑損 *****
 (貸)現金過不足 *****

2. 未処理取引

 売掛金50,000円が当座預金口座に振り込まれただけなので仕訳は簡単です。

3. 貸倒引当金

 2.の未処理取引の仕訳で減少した売掛金50,000円を考慮して繰入額を計算します。

(650,000円+800,000円-50,000円)×1%-10,000円=4,000円

4. 売上原価の算定

 「しーくりくりしー」の語呂でおなじみの仕訳を切るだけです。期首商品棚卸高は、問題の資料(1)の「繰越商品 370,000」から金額を引っ張ってきます。

5. 減価償却

 本問の備品は取得原価が不明なので各自で計算する必要があります。

 まず、問題文の「備品はすべて平成25年の期首に取得した」「耐用年数は6年」から、前期首の平成25年1月1日に購入し、その後、6年にわたって減価償却を行うことが分かります。

  • 平成25年1月1日:購入
  • 平成25年12月31日:1回目の減価償却
  • 平成26年12月31日:2回目の減価償却
  • 平成27年12月31日:3回目の減価償却
  • 平成28年12月31日:4回目の減価償却
  • 平成29年12月31日:5回目の減価償却
  • 平成30年12月31日:6回目の減価償却

 また、固定資産を直接法で記帳する場合、固定資産の金額は帳簿価額(=取得原価-減価償却累計額)を表すので、決算整理前の備品勘定の残高1,300,000円は前期末(平成25年12月31日)時点の帳簿価額であることが分かります。

  • 平成25年1月1日:購入
  • 平成25年12月31日:1回目の減価償却 → この時点の帳簿価額が1,300,000円
  • 平成26年12月31日:2回目の減価償却
  • 平成27年12月31日:3回目の減価償却
  • 平成28年12月31日:4回目の減価償却
  • 平成29年12月31日:5回目の減価償却
  • 平成30年12月31日:6回目の減価償却

 よって、残り5回の減価償却で1,300,000円を償却する計算になるので(残存価額はゼロ)、1年あたりの減価償却費は260,000円(=1,300,000円÷5年)になります。この計算が今回の一番のポイントになります。

  • 平成25年1月1日:購入 → 取得原価:1,300,000円+260,000円=1,560,000円
  • 平成25年12月31日:1回目の減価償却 260,000円 → 帳簿価額:1,300,000円
  • 平成26年12月31日:2回目の減価償却 260,000円 → 帳簿価額:1,040,000円
  • 平成27年12月31日:3回目の減価償却 260,000円 → 帳簿価額:780,000円
  • 平成28年12月31日:4回目の減価償却 260,000円 → 帳簿価額:520,000円
  • 平成29年12月31日:5回目の減価償却 260,000円 → 帳簿価額:260,000円
  • 平成30年12月31日:6回目の減価償却 260,000円 → 帳簿価額:0円

 ちなみに、6年間の仕訳はこんな感じになります。参考までにご確認ください。

平成25年1月1日:購入時の仕訳
(借)備品 1,560,000
 (貸)現金など 1,560,000
平成25年12月31日:1回目の減価償却の仕訳
(借)減価償却費 260,000
 (貸)備品 260,000
平成26年12月31日:2回目の減価償却の仕訳(当期の仕訳)
(借)減価償却費 260,000
 (貸)備品 260,000
平成27年12月31日:3回目の減価償却の仕訳
(借)減価償却費 260,000
 (貸)備品 260,000
平成28年12月31日:4回目の減価償却の仕訳
(借)減価償却費 260,000
 (貸)備品 260,000
平成29年12月31日:5回目の減価償却の仕訳
(借)減価償却費 260,000
 (貸)備品 260,000
平成30年12月31日:6回目の減価償却の仕訳
(借)減価償却費 260,000
 (貸)備品 260,000

6. 消耗品の処理

 問題の資料(1)の「消耗品費 75,000」から、決算期末に残っている分を消耗品勘定に振り替える(購入時に費用処理する)方法を採用していることが分かるので、22,000円を消耗品費勘定から消耗品勘定に振り替えます。

参考:購入時に費用処理(消耗品費勘定で処理)した場合の仕訳

購入時の仕訳
(借)消耗品費 75,000
 (貸)現金など 75,000
決算期末時の仕訳(期末に残っている分を消耗品に振り替える)
(借)消耗品 22,000
 (貸)消耗品費 22,000

参考:購入時に資産処理(消耗品勘定で処理)した場合の仕訳

購入時の仕訳
(借)消耗品 75,000
 (貸)現金など 75,000
決算期末時の仕訳(期中に使った分を消耗品費に振り替える)
(借)消耗品費 53,000
 (貸)消耗品 53,000

7. 保険料の繰延処理

 問題文の「保険料のうち144,000円は、当期の4月1日に支払った店舗に対する1年分の損害保険料である」から、翌期に属する3か月分(平成27年1月1日~3月31日)を前払いしていることが分かるので、3か月分の保険料を繰延処理します。

144,000円÷12か月=@12,000円

@12,000円×3か月=36,000円

8. 利息の見越計上

 問題の資料(1)の「支払利息 20,000」と、問題文の「当期首から10月31日(利払日)までの借入金に対する利息である」から、1か月分の利息が計算できるので、前回の利払日から決算日までの2か月間(平成26年11月1日~12月31日)の利息を見越計上します。

20,000円÷10か月=@2,000円

@2,000円×2か月=4,000円


答案用紙の貸借対照表・損益計算書の注意点

 貸借対照表の貸倒引当金は、受取手形と売掛金で別々に計上する形になっています。各残高に1%を掛けてそれぞれの貸倒引当金を計算しましょう。

 損益計算書の売上原価には「期首商品棚卸高(370,000円)+当期商品仕入高(12,500,000円)-期末商品棚卸高(420,000円)」の金額が入ります。



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