第140回・日商簿記検定2級 第3問(財務諸表作成問題)の過去問分析

第3問 4回連続の財務諸表作成問題。難度は「やや難しい」ぐらいです。

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【財務諸表作成問題】でした。財務諸表作成問題は前回まで3回連続で出題されていたので、さすがに今回は精算表作成問題かな…と思っていたんですが、蓋を開けてみたら今回も財務諸表作成問題で、4回連続の出題になりました。

 全体的な難度は前回の第139回と同じぐらいですが、未処理事項2および決算整理事項1.の不渡手形の処理、3.の売上原価の算定、7.の退職給付の処理…これらの処理はかなり難しかったと思います。

 受験生アンケートでは、約80%の方が「かなり難しかった」「やや難しかった」と回答していますが、合格するためには最低でも10点は取りたいところです。

 それでは、ひとつひとつ処理を確認していきましょう。

[資料Ⅱ]未処理事項

1.
(借)退職給付引当金 49,000
 (貸)仮払金 49,000
2.
(借)不渡手形 8,000
 (貸)現金預金 8,000
3.
(借)売上 15,000
 (貸)売掛金 15,000

1. 仮払金の処理

 仮払金勘定を退職給付引当金に振り替えるだけです。仕訳をパッとイメージできない場合は、先に「仮払時の仕訳」を考えると分かりやすいと思います。

参考・仮払時の仕訳
(借)仮払金 49,000
 (貸)現金など 49,000
解答仕訳
(借)退職給付引当金 49,000
 (貸)仮払金 49,000

2. 入金処理済みの手形の不渡処理

 3級の第1問・仕訳問題でたまに問われる「訂正仕訳」の処理と同じ流れで考えましょう。

1. 間違って切ってしまった仕訳を書く
(借)現金預金 8,000
 (貸)受取手形 8,000
2. 1.の逆仕訳を書く
(借)受取手形 8,000
 (貸)現金預金 8,000
3. 正しい仕訳を書く
(借)不渡手形 8,000
 (貸)受取手形 8,000
4. 2.と3.の仕訳をまとめる
(借)不渡手形 8,000
 (貸)現金預金 8,000

3. 売上戻り

 売価(15,000円)を使って売上時の逆仕訳をするだけです。


[資料Ⅲ]決算整理事項

1.
(借)貸倒損失 8,000
 (貸)不渡手形 8,000
(借)貸倒引当金繰入 24,050
 (貸)貸倒引当金 24,050
2.
(借)未払費用 355,000
 (貸)給料 320,000
 (貸)水道光熱費 35,000
(借)給料 335,000
(借)水道光熱費 40,000
 (貸)未払費用 375,000
3.
(借)仕入 3,316,600
 (貸)繰越商品 3,316,600
(借)繰越商品 3,212,000
 (貸)仕入 3,212,000
(借)棚卸減耗損 10,000
(借)商品評価損 15,000
 (貸)繰越商品 25,000
4.
(借)支払利息 4,000
 (貸)前払費用 4,000
5.
(借)減価償却費 7,500
 (貸)建物減価償却累計額 4,000
 (貸)備品減価償却累計額 3,500
6.
(借)固定資産除却損 4,000
 (貸)建設仮勘定 4,000
7.
(借)退職給付費用 116,000
 (貸)退職給付引当金 116,000
8.
(借)のれん償却 2,000
 (貸)のれん 2,000
9.
(借)法人税等 185,000
 (貸)未払法人税等 185,000

1. 貸倒損失の処理・貸倒引当金の設定

 問題文に「不渡手形は~全額回収不能と判断されたため、貸倒損失として処理する」という指示があるので、手形額面8,000円の全額を貸倒損失として処理します。

 指示を見落として(または無視して)、決算整理前残高試算表に計上されている貸倒引当金2,400円を充当しないように気をつけてください。

貸倒損失の処理
(借)貸倒損失 8,000
 (貸)不渡手形 8,000

 貸倒引当金を計算するさいは、資料Ⅱの未処理事項3の売掛金の減少を考慮し忘れないように気をつけましょう。

(188,000円+2,472,000円-15,000円)×1%-2,400円=24,050円

貸倒引当金の設定
(借)貸倒引当金繰入 24,050
 (貸)貸倒引当金 24,050

2. 未払費用の処理

 問題文に「期首の再振替仕訳は行われていない」とあるので、(XYZ商事株式会社の経理担当者に対して「期首にきちんと処理しとけよ!」と舌打ちしたあと)前期末に計上された未払費用355,000円を適切な勘定科目に振り替えます。

前期末に計上した未払費用の処理
(借)未払費用 355,000
 (貸)給料 320,000
 (貸)水道光熱費 35,000

 また、問題文に「当期の未払額は給料335,000円および水道光熱費40,000円であった」とあるので、(お好きな電力会社に対して「また今年も値上げかよ!」と舌打ちしたあと)当期末時点の未払分を見越し計上します。

当期末に計上する未払費用の処理
(借)給料 335,000
(借)水道光熱費 40,000
 (貸)未払費用 375,000

3. 売上原価の算定

 問題文を読んで、期末帳簿棚卸高が3,200,000円で、実地棚卸高(原価)が3,202,000円…あれ?実地棚卸高のほうが大きい!と思った方もいらっしゃると思います。

 ただ、その後に「棚卸差異の原因を調査したところ、[資料Ⅱ]3.の返品が実地棚卸高にのみ含まれていることが判明した」とあるので、期末帳簿棚卸高にも返品分を加算しましょう。

期末帳簿棚卸高3,200,000円+12,000円=3,212,000円

 ここで注意していただきたいのは、期末帳簿棚卸高に加算する金額です。売上戻りの処理のさいには売価(15,000円)を使いましたが、今回は売上原価を計算するので、売価ではなく原価(12,000円)を使います。

 期末帳簿棚卸高の正しい金額を求めたら、毎度おなじみの「仕入勘定で売上原価を算定する仕訳(しーくりくりしー)」を切りますが、本問は勘定科目の指定がないので売上原価勘定で売上原価を算定してもOKです。

仕入勘定で売上原価を算定する仕訳
(借)仕入 3,316,600
 (貸)繰越商品 3,316,600
(借)繰越商品 3,212,000
 (貸)仕入 3,212,000
売上原価勘定で売上原価を算定する仕訳
(借)売上原価 3,316,600
 (貸)繰越商品 3,316,600
(借)売上原価 11,640,000
 (貸)仕入 11,640,000
(借)繰越商品 3,212,000
 (貸)売上原価 3,212,000

 さらに、期末帳簿棚卸高3,212,000円と実地棚卸高(原価)3,202,000円との差額10,000円を棚卸減耗損として処理します。

棚卸減耗損の処理
(借)棚卸減耗損 10,000
 (貸)繰越商品 10,000

 また、問題文の最後に「この返品分と同様な品質不良がこれとあわせて原価で30,000円分あり、販売可能価額は原価の50%と見積もられた」とあるので、15,000円(=30,000円×50%)を商品評価損として処理します。

 「これとあわせて」の部分を見落として、12,000円+30,000円=42,000円と計算しないように気をつけましょう。

商品評価損の処理
(借)商品評価損 15,000
 (貸)繰越商品 15,000

 売上原価の算定の処理は以上です。初見ではなかなか対応できないレベルの問題ですが、第138回試験の財務諸表作成問題でも似たような問われ方をしていたので、過去問対策をきちんとやっていれば解答できたと思います。

4. 前払費用の計算

 問題文に「借入金2,000,000円に対する利息3か月分を平成27年3月1日に支払い、その全額を前払費用に計上している」とあるので、まずは前払費用を計上した時の仕訳を考えましょう。

2,000,000円×2.4%×3か月/12か月=12,000円

参考・前払費用を計上した時の仕訳
(借)前払費用 12,000
 (貸)現金など 12,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、3か月分の利息のうち当期に属する1か月分(平成27年3月1日から3月31日まで)の利息を、当期の費用(支払利息)に振り替えます。

2,000,000円×2.4%×1か月/12か月=4,000円

解答・当期に属する1か月分の利息を支払利息に振り替える仕訳
(借)支払利息 4,000
 (貸)前払費用 4,000

5. 固定資産の減価償却

 減価償却費を月割りで計上する問題です。同じような問題が第138回試験でも出題されているので、過去問対策をきちんとやっていれば簡単に処理できたと思います。

参考・毎月末に切っていた減価償却の仕訳
(借)減価償却費 7,500
 (貸)建物減価償却累計額 4,000
 (貸)備品減価償却累計額 3,500
解答・決算整理時の減価償却の仕訳
(借)減価償却費 7,500
 (貸)建物減価償却累計額 4,000
 (貸)備品減価償却累計額 3,500

 3月分の減価償却費を計上したら、答案用紙の損益計算書に計上される減価償却費(1年分)の金額を計算しましょう。計算方法はいくつか考えられるので、お好きなもので計算してください。

  • 決算整理前残高試算表の減価償却費の金額82,500円+建物の3月分の減価償却費4,000円+備品の3月分の減価償却費3,500円=90,000円
  • 建物の1月分の減価償却費4,000円×12か月+備品の1月分の減価償却費3,500円×12か月=90,000円
  • 建物の1年分の減価償却費48,000円(=1,440,000円÷30年)+備品の1年分の減価償却費42,000円(={300,000円-(128,500円-3,500円×11か月)}×20%)=90,000円

6. 固定資産の除却

 建設仮勘定の一部を除却処理する問題です。あまり見かけない処理なので、一瞬、ん?と思った方もいらっしゃると思いますが、建設仮勘定を固定資産除却損に振り替えるだけです。

固定資産の除却
(借)固定資産除却損 4,000
 (貸)建設仮勘定 4,000

7. 退職給付債務

 退職給付引当金の繰入額(退職給付費用)を計算するさいは、資料Ⅱの未処理事項1で充当した退職給付引当金49,000円を忘れないように気をつけましょう。

 また、問題文で与えられている590,000円は、期末に引当金として計上すべき残高です。590,000円をそのまま費用計上しないように気をつけましょう。

590,000円-(523,000円-49,000円)=116,000円

退職給付引当金の設定
(借)退職給付費用 116,000
 (貸)退職給付引当金 116,000

8. のれんの償却

 問題文の「のれんは平成23年4月1日に取得したもの」から、決算整理前残高試算表の「のれん 14,000」は、既に3回(平成24年3月31日、平成25年3月31日、平成26年3月31日)償却された残額であると分かるので、14,000円を残りの償却期間7年(=10年-3年)で割って1年あたりの償却額2,000円を計算します。

 よくある間違いとしては、単純に「10年で割ってしまう」のと、平成23年4月1日から決算日の平成27年3月31日まで4年経っているから「6年で割ってしまう」の2つが考えられます。

 本問の場合、6年では割り切れないのでその時点で間違いに気づくことが出来ますが、10年では割りきれてしまうので間違えてしまった方も多かったようです。この2つはのれん償却の「典型的なひっかけポイント」なので気をつけてください。

のれんの償却
(借)のれん償却 2,000
 (貸)のれん 2,000

9. 法人税の計算

 税引前当期純利益500,000円に40%を掛けて、200,000円の法人税等…と処理したいところですが、問題文に「残高試算表の未払法人税等の額は、前期末計上分からの過剰額であり、当期計上額から控除する」という指示があります。

 これは、例えば…会計上の利益を元に300,000円の法人税等を前期末に計上していたんだけど、税法に則って正確に計算したら285,000円だったので、過剰に計上していた15,000円は当期の計上額と相殺してね…ということです。

参考・前期末に計上した法人税等
(借)法人税等 300,000
 (貸)未払法人税等 300,000
参考・期中に支払った法人税等
(借)未払法人税等 285,000
 (貸)現金など 285,000
解答1・過剰額の修正
(借)未払法人税等 15,000
 (貸)法人税等 15,000
解答2・当期に計上する法人税等
(借)法人税等 200,000 185,000
 (貸)未払法人税等 200,000 185,000

 なお、法人税等と当期純利益は、8.までの処理が全て適正に行われていないと金額がズレるので、本試験ではよっぽど時間に余裕がある場合を除き、基本的には「捨て」と考えて良いと思います。

その他のあれこれ

 答案用紙の営業外収益の一部と特別利益が空欄になっているので、有価証券売却益と土地売却益をどちらに書くか迷った方もいると思います。

 営業外収益は、簡単に言うと「本業以外で発生した収益」を計上するところです。有価証券売却益以外にも、利息・配当の受取額や有価証券評価益等がここに入ります。

  • 有価証券売却益→本業以外で発生した収益→営業外収益

 一方、特別利益は、簡単に言うと「特別に発生した利益」を計上するところです。土地売却益以外にも、保険差益など滅多に発生しないものがここに入ります。

  • 土地売却益→滅多に発生しない特別な利益→特別利益

 また、本問は、答案用紙の損益計算書の「売上総利益」「営業利益」「経常利益」欄が空欄になっていますが、(作問者側の立場で考えると)これらに配点してしまうと平均点がグッと下がってしまうので、普通は配点しません。

 よって、今後、本問と同じような問題に遭遇した場合は利益の名称に固執せずに、分かる範囲で素早く記入して、その他の問題に解答時間を割くように心がけてください。



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