第139回・日商簿記検定2級 第1問(仕訳問題)の過去問分析

第1問 直近10年の試験の中で一番の難問。なんとか8点取りましょう!

第1問の難度アンケート結果

 第1問は今回も【仕訳問題】が出題されました…が、問4以外は今までに出題されたことのない形式で、しかも指示があいまいで分かりにくい問題だったので、非常に解きにくかったと思います。

 仕訳問題だけで考えますと、直近10年の試験の中で最も難しい試験回だったのではないでしょうか。受験生アンケートでも80%近くの方が「かなり難しかった」と回答しています。

問1 固定資産の購入・改良と修繕

模範解答(最終回の支払いをいったん建設仮勘定に計上する仕訳)
(借)建設仮勘定 10,000,000
 (貸)当座預金 10,000,000
(借)建物 29,200,000
(借)修繕費 800,000
 (貸)建設仮勘定 30,000,000

 固定資産の購入&改良と修繕に関する問題です。本問はまず、問題文の「既存の工場の増設工事について~締結しそれぞれ建設仮勘定に計上している。これが完成して最終回の支払いを当座預金から行い」という一文から、既に2回分の分割払いが終わっていることが分かります。

参考・分割払い1回目の仕訳
(借)建設仮勘定 10,000,000
 (貸)当座預金など 10,000,000
参考・分割払い2回目の仕訳
(借)建設仮勘定 10,000,000
 (貸)当座預金など 10,000,000

 上記の2本の仕訳を踏まえたうえで、最終回の支払いに関する仕訳を切ります。仕訳自体は簡単なので、特に問題ないと思います。

解答①・分割払い3回目(最終回)の仕訳
(借)建設仮勘定 10,000,000
 (貸)当座預金 10,000,000

 次に、問題文の「建設工事代金の総額30,000,000円を、建物と既存の工場の修繕費800,000円に振り替えた」という指示に従って、建設仮勘定を適正な勘定科目に振り替えます。

解答②・建設仮勘定を適正な勘定科目に振り替える仕訳
(借)建物 29,200,000
(借)修繕費 800,000
 (貸)建設仮勘定 30,000,000

 最後に、①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります。

模範解答を出している学校・会社の中には、最終回の支払いについては「建設仮勘定を経由しない仕訳」を解答としているところもあります。

  • 最終回の支払いをいったん建設仮勘定に計上する…TAC、大原、NS、大栄、東京CPA
  • 最終回の支払いを建設仮勘定を経由しないで処理する…LEC、メイプル、弥生カレッジ

 建設仮勘定は、対象となる有形固定資産の工事が完了し、事業の用に供した時に適切な勘定に振り替えます。よって、本問の場合は「最終回の支払い」と「工事が完了して事業の用に供したタイミング」が同時であれば、建設仮勘定を経由しないで処理する仕訳も正解になりそうです。

 ただ、本問は「最終回の支払い」と「工事が完了して事業の用に供したタイミング」が同時とは書かれていないので、最終回の支払いのタイミングで一度、建設仮勘定を計上し、工事が完了して事業の用に供したタイミングで建設仮勘定の全額を適切な勘定に振り替えた、と考えるほうが自然だと思います。

 日商簿記検定は模範解答が公表されないので、建設仮勘定を経由しない仕訳も正解になるのかどうかは分かりませんが、参考までに別解としてご紹介しておきます。

別解(最終回の支払いを建設仮勘定を経由しないで処理する仕訳)
(借)建物 29,200,000
(借)修繕費 800,000
 (貸)建設仮勘定 20,000,000
 (貸)当座預金 10,000,000

問2 一年基準

模範解答
(借)長期前払費用 2,700,000
 (貸)普通預金 2,700,000
(借)広告宣伝費 75,000
 (貸)長期前払費用 75,000

 一年基準に関する問題です。本問は【支払時に資産計上する仕訳】と【計上した資産の一部を費用に振り替える仕訳】の2つに分けて、解答仕訳を考えましょう。

 それでは、まず【支払時に資産計上する仕訳】から考えますが、こちらは問題文の「今後3年分の広告料金2,700,000円を普通預金から支払ってその総額をいったん資産に計上」という一文から、費用処理するのではなく資産の勘定科目を使って仕訳をすると判断します。

 本問は、広告費の前払いなので前払費用勘定でオッケー…とサクッといきたいところですが、問題に列挙されている勘定科目に前払費用勘定がないので、代わりに長期前払費用という(固定)資産の勘定科目を使って仕訳をします。

 また、本問は広告料金を普通預金から支払っているので、貸方の勘定科目は普通預金になります。いつものクセで、うっかり当座預金勘定を使わないように気をつけましょう。

解答①・支払時に資産計上する仕訳
(借)長期前払費用 2,700,000
 (貸)普通預金 2,700,000

 次に【計上した資産の一部を費用に振り替える仕訳】を考えますが、こちらは問題文の「さらに計上した資産から当月分(1か月分)の費用の計上を行った」という一文から、1か月分の広告費を月割計算して費用に振り替えると判断します。

2,700,000円÷36か月(3年)=75,000円/月

解答②・計上した資産の一部を費用に振り替える仕訳
(借)広告宣伝費 75,000
 (貸)長期前払費用 75,000

 最後に、①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります。

 本問は、長期前払費用という普段見慣れない勘定科目&普通預金勘定のひっかけという2段構えの難問で、正答率はかなり低い(1割~2割ぐらい?)と思います。

問3 定期預金

模範解答
(借)定期預金 15,120,000
 (貸)定期預金 15,120,000
(借)仮払法人税等 30,000
 (貸)受取利息 30,000

 定期預金に関する問題です。問1も問2も、今までに出題されたことのない形で大変だったと思いますが、ごめんなさい…はじめにお伝えしておきますが、問3はもっと大変です。

 本試験での正答率はおそらく1割を切っていて、俗にいう捨て問(=解答せずに捨てるべき問題)なので、時間に余裕のない方は(本問は)参考程度に留めておくことをおすすめします。


 それでは早速、解答仕訳を考えていきますが、まずは問題の全体像を把握しましょう。問題文を読むと、預け入れていた定期預金が満期になったので、利息の金額を上乗せして定期預金を継続したことが分かります。

 預け入れていた定期預金の金額は15,000,000円、利息の金額は150,000円(=15,000,000円×1%)なので、ひとまず問題文の「仮払法人税等に計上する源泉所得税(20%)控除~」の一文を無視して考えると、仕訳は以下のような形になります。

 仕訳のイメージとしては、第126回の問1第136回の問4で出題された手形の更改が近いと思います。手形の更改の仕訳も旧手形と新手形の両方を計上しますよね。

 なお、借方の定期預金の金額(=新たな定期預金の金額)はこの時点では確定しないので、とりあえず「?」にしておきます。

参考・定期預金の満期到来→利息を上乗せして継続するさいの仕訳
(借)定期預金 ?
 (貸)定期預金 15,000,000
 (貸)受取利息 150,000

 次に、先ほど飛ばした「仮払法人税等に計上する源泉所得税(20%)控除後の受取利息手取額」を考えてみましょう。

 「仮払法人税等に計上する源泉所得税」というのは、銀行が当社に利息を支払うさいに、源泉徴収する(=手元に残しておく)税金のことです。後日、銀行は各社から源泉徴収した税金をまとめて国に納付します。

 当社側からすると、決算後に税金として納付すべき金額の一部を、銀行が先に徴収して国に納めてくれた…という形になるので、帳簿上では税金の先払い(仮払い)として処理します。

 具体的な計算手順は、先ほど計算した受取利息の金額に税率20%を掛けて「源泉所得税」の金額を計算し、受取利息の金額から源泉所得税の金額を差し引いて「受取利息手取額」を計算し、最後に「満期額に受取利息手取額を加えた金額」を計算します。

  • 受取利息の金額=15,000,000円×1%=150,000円
  • 仮払法人税等に計上する源泉所得税=150,000円×20%=30,000円
  • 所得税控除後の受取利息手取額=150,000円-30,000円=120,000円
  • 満期額に受取利息手取額を加えた金額=15,000,000円+120,000円=15,120,000円

 上記の計算で、仮払法人税等に計上する源泉所得税が30,000円、および、満期額に受取利息手取額を加えた金額(=新たな定期預金の金額)が15,120,000円と分かるので、それぞれ借方に計上します。

解答仕訳
(借)定期預金 15,120,000
(借)仮払法人税等 30,000
 (貸)定期預金 15,000,000
 (貸)受取利息 150,000

 冒頭にも書きましたが、本問は難度が高い割に重要性は低い論点なので、時間に余裕がない場合は後回しにしても大丈夫です。

問4 固定資産の改良と修繕

模範解答
(借)修繕引当金 5,000,000
(借)修繕費 1,000,000
 (貸)普通預金 6,000,000

 固定資産の改良と修繕に関する問題です。改良と修繕に関しては、①修繕のみを問われる問題②改良と修繕の両方を問われる問題の2つに分けることが出来ますが、本問は①のケースに該当します。

 本問はとても簡単で、修繕費総額6,000,000円のうち5,000,000円に関しては修繕引当金を取り崩し、残りの1,000,000円に関しては修繕費を計上して処理するだけです。

 なお、本問は問2と同様に修繕費用を普通預金から支払っているので、貸方の勘定科目は普通預金になります。ついうっかり当座預金勘定を使わないように気をつけましょう。

問5 固定資産の購入・租税公課

模範解答
(借)租税公課 2,400,000
(借)土地 1,100,000
 (貸)未払金 3,500,000

 固定資産の購入&租税公課に関する問題です。不動産取得税は指示に従って処理するだけなので簡単ですが、固定資産税はカッコ書きに惑わされてしまった受験生が多かったようです。

 それではまず、固定資産税から考えます。問題文のカッコ書きの「これを4期に分けて分納」から、全4期分ではなく1期分の600,000円だけを計上した方がいらっしゃるかもしれませんが、このカッコ書きの内容はあくまでも未払金の支払方法を示したものに過ぎません。

 固定資産税は納税通知書を受け取った時点で税金の金額が確定するので、1期分だけでなく全4期分の金額2,400,000円を租税公課勘定で処理します。

解答①・固定資産税の処理の仕訳
(借)租税公課 2,400,000
 (貸)未払金 2,400,000

 次に、不動産取得税を考えますが、問題文に「土地の取得原価に含める不動産取得税」という明確な指示があるので、その指示に従って土地勘定で処理します。

解答②・不動産取得税の処理の仕訳
(借)土地 1,100,000
 (貸)未払金 1,100,000

 最後に、①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります。

試験直後の解答速報では、資格の大原のみ「固定資産税を1期分のみ計上する仕訳」を別解としています(TAC、LEC、NS、大栄、メイプル、弥生カレッジなどは別解なし)。

 未払計上するタイミングの問題なので、別解の仕訳も間違いではないと思いますが…個人的には、あえて1期分のみを計上する意味はないと思います(2期以降の分はいつ計上するの?支払時?じゃあなんで1期分だけ未払計上するの?1期分も支払時でいいじゃん…となるので)。

 日商簿記検定は模範解答が公表されないので、大原の別解でも正解になるのかどうかは分かりませんが、参考までに大原の別解をご紹介しておきます。

参考・大原の別解(固定資産税を1期分のみ計上する仕訳)
(借)租税公課 600,000
(借)土地 1,100,000
 (貸)未払金 1,700,000


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