第138回・日商簿記検定2級 第3問(財務諸表作成問題)の過去問分析

第3問 多くの受験生を絶望の淵に追い込んだ財務諸表作成問題!超難問!

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【財務諸表作成問題】でした。具体的には、資料で与えられた決算整理前残高試算表に未処理事項と決算整理事項を反映させて答案用紙の貸借対照表を作成するという問題でしたが、未処理事項と決算整理事項の数が多く、しかもひとつひとつの難度も高かったので、出来は非常に悪いと思います。

 受験生アンケートでも、90%以上の方が「かなり難しかった」と回答しています。もう10回以上、難度アンケートを実施していますが、こんなに極端な結果になったのは初めてです。

 個人的には、直近10年の試験の第3問の中では1番難しい問題だと思いますので、初見では22点満点中10点も取れれば十分です。

 それでは、ひとつひとつ処理を確認していきましょう。

[資料Ⅱ]決算整理前の未処理事項

1.
(借)貸倒引当金 4,000
 (貸)売掛金 4,000
2.
(借)通信費 15,000
 (貸)現金預金 15,000
3.
(借)売上 30,000
 (貸)売掛金 30,000

 1.の前期に発生した売掛金の貸倒れは、貸倒引当金を取り崩して処理するだけなので特に問題ないと思います。

 2.の電話料の自動引き落としは、通信費を計上してその分だけ現金預金を減らすだけなので、こちらの処理も特に問題ないと思います。

 3.の掛け売上の返品は、売上時の逆仕訳をするだけです。原価22,000円はこの仕訳では関係ありません。

 未処理事項の上記3つはいずれも基本的な処理なので大丈夫ですよね。問題はここからです…。

[資料Ⅲ]決算整理事項

1.
(借)仕入 20,000
 (貸)買掛金 20,000
(借)仕入 2,350,000
 (貸)繰越商品 2,350,000
(借)繰越商品 2,242,000
 (貸)仕入 2,242,000
(借)棚卸減耗損 10,000
 (貸)繰越商品 10,000
(借)商品評価損 11,000
 (貸)繰越商品 11,000
2.
(借)貸倒引当金繰入 11,660
 (貸)貸倒引当金 11,660
3.
(借)前渡金 120,000
 (貸)買掛金 120,000
4.
(借)未払費用 210,000
 (貸)給料 150,000
 (貸)水道光熱費 60,000
(借)給料 165,000
(借)水道光熱費 63,000
 (貸)未払費用 228,000
5.
(借)保険料 15,000
 (貸)前払費用 15,000
6.
(借)減価償却費 76,000
 (貸)建物減価償却累計額 75,000
 (貸)備品減価償却累計額 1,000
(借)建物 840,000
 (貸)修繕費 840,000
(借)減価償却費 7,000
 (貸)建物減価償却累計額 7,000
7.
(借)支払利息 21,250
 (貸)未払費用 21,250
8.
(借)退職給付費用 40,000
 (貸)退職給付引当金 40,000
9.
(借)のれん償却 12,000
 (貸)のれん 12,000
10.
(借)法人税等 240,000
 (貸)仮払法人税等 140,000
 (貸)未払法人税等 100,000

1. 売上原価の算定および商品の期末評価

 問題文に「①[資料Ⅱ]3.の返品未処理分と、②期末日直前に仕入れた商品20,000円の買掛金計上もれ分とが、実地棚卸高だけに反映されていたことが判明した」とありますが、①の仕訳は上の未処理事項で処理済みなので、ここではまず②の仕訳を切ります。

解答1
(借)仕入 20,000
 (貸)買掛金 20,000

 ここで、問題の資料Ⅲの1.で金額が与えられている期末の帳簿棚卸高2,200,000円について考えてみましょう。この2,200,000円には①[資料Ⅱ]3.の返品未処理分と、②期末日直前に仕入れた商品20,000円の買掛金計上もれ分は反映されていないので、この2つを適切に処理して正しい帳簿棚卸高を計算します。

帳簿棚卸高2,200,000円+①22,000円+②20,000円=2,242,000円

 注意していただきたいのは「①22,000円」です。ここでは実地棚卸高の原価の金額を計算しているので、返品された商品の売価30,000円ではなく原価22,000円を使います。

 正しい帳簿棚卸高の計算ができたら、毎度おなじみの売上原価算定の仕訳を切ります。なお、本問は勘定の指定がないので売上原価勘定を使って仕訳を切っても構いません。

解答2
(借)仕入 2,350,000
 (貸)繰越商品 2,350,000
(借)繰越商品 2,242,000
 (貸)仕入 2,242,000
解答2(別解)
(借)売上原価0 2,350,000
 (貸)繰越商品 2,350,000
(借)売上原価 19,020,000
 (貸)仕入 19,020,000
(借)繰越商品 2,242,000
 (貸)売上原価 2,242,000

 さらに、問題文に「実地棚卸高(原価)は2,232,000円であった」とあるので、帳簿棚卸高2,242,000円との差額10,000円を棚卸減耗損として処理します。

解答3
(借)棚卸減耗損 10,000
 (貸)繰越商品 10,000

 また、問題文の最後に「この返品未処理分の商品の販売可能価額は11,000円であることも判明した」とありますが、販売可能価額とは正味売却価額(低価法に用いる時価)のことなので、原価22,000円と販売可能価額11,000円との差額11,000円を商品評価損として処理します。

解答4
(借)商品評価損 11,000
 (貸)繰越商品 11,000

 最後に1~4の仕訳をまとめると解答仕訳になりますが、全体的にかなり難しい処理なので、初見では解けないと思います。

2. 貸倒引当金の設定

 未処理事項の「1.売掛金の貸倒れ」と「3.売上の返品」を考慮して金額を計算します。

(200,000円+1,200,000円-4,000円-30,000円)×1%-(6,000円-4,000円)=11,660円

3. 前渡金への振り替え

 問題文に「買掛金の明細を調査した結果、借方残高となっている仕入先の合計金額が120,000円」とありますが、これは仕入代金の一部を前払いしたさいに以下のような仕訳を切っていたことを意味します。

【参考】仕入代金の一部を前払いしたさいの仕訳
(借)買掛金 120,000
 (貸)現金など 120,000

 おい、経理担当者!なんでそんな仕訳を切ってるんだよ…と思わずつっこみたくなりますが、問われている仕訳はこの借方に計上した買掛金を前渡金に振り替えるだけなので簡単です。

【解答】買掛金を前渡金に振り替える仕訳
(借)前渡金 120,000
 (貸)買掛金 120,000

 なお、前渡金という勘定はあまり耳慣れないかもしれませんが、日商の許容勘定科目表には「標準的な勘定科目:前払金、許容勘定科目:前渡金」と明記されています。出題頻度は低いので「前払金の仲間」ぐらいのイメージで押さえておけば十分です。

4. 未払費用の処理

 問題文に「未払費用の残高は前期末の決算整理により計上されたものであり、期首の再振替仕訳は行われておらず」とあるので、(さっきからミスが多い経理担当者に対して「期首にきちんと処理しとけよ!」と舌打ちしたあと)以下のような仕訳を切ります。

 仕訳をすんなりイメージできない方は、前期末の決算整理で切った仕訳を先に書きだしてから、再振替仕訳を考えると分かりやすいと思います。

【参考】前期末に切った仕訳
(借)給料 150,000
(借)水道光熱費 60,000
 (貸)未払費用 210,000
【解答①】未払費用の再振替仕訳
(借)未払費用 210,000
 (貸)給料 150,000
 (貸)水道光熱費 60,000

 さらに、問題文に「今期の未払額は給料165,000円および電力料63,000円であった」とあるので、(お好きな電力会社に対して「また今年も値上げかよ!」と舌打ちしたあと)以下のような仕訳を切ります。

【解答②】未払費用の見越し
(借)給料 165,000
(借)水道光熱費 63,000
 (貸)未払費用 228,000

 最後に①②の仕訳をまとめると解答仕訳になります

5. 前払費用の処理

 問題文に「前払費用の残高は、平成25年11月1日に1年分の損害保険料180,000円を前払いしたもの」とあるので、まずは保険料の支払時の仕訳を書きだしてみましょう。

【参考】平成25年11月1日の保険料の支払時の仕訳
(借)前払費用 180,000
 (貸)現金など 180,000

 上記の仕訳を踏まえたうえで、問題文の「平成26年2月まで毎月15,000円が費用に計上されており、決算月も同様な処理を行う」という指示に従って、解答仕訳を考えます。

【参考】平成25年11月30日の仕訳
(借)保険料 15,000
 (貸)前払費用 15,000
【参考】平成25年12月31日の仕訳
(借)保険料 15,000
 (貸)前払費用 15,0000
【参考】平成26年1月31日の仕訳
(借)保険料 15,000
 (貸)前払費用 15,000
【参考】平成26年2月28日の仕訳
(借)保険料 15,000
 (貸)前払費用 15,000
【解答】平成26年3月31日の決算整理仕訳
(借)保険料 15,000
 (貸)前払費用 15,000

 本問のように、支払時に資産処理をしておいて、毎月末に費用の繰延処理をする問題はあまり見かけませんし、資料の日本語もややおかしい(「~であり、~されており」)ので非常に解きにくかったと思います。

6. 固定資産の減価償却

 ①は普通の減価償却の仕訳…と思いきや、問題文に「4月から2月までの11か月間に毎月見積計上してきており」とあるので、毎月末に以下のような仕訳を切っていたことが分かります。

【参考】毎月末に切っていた減価償却の仕訳
(借)減価償却費 76,000
 (貸)建物減価償却累計額 75,000
 (貸)備品減価償却累計額 1,000

 私自身、今までに減価償却費を毎月見積計上する問題を見たことがなかったのでびっくりしましたが、仕訳自体は簡単ですし「決算月も同様な処理を行う」という指示があるので、深く考えずに同じ仕訳を切りましょう。

【解答①】決算整理時の減価償却
(借)減価償却費 76,000
 (貸)建物減価償却累計額 75,000
 (貸)備品減価償却累計額 1,000

 ②は、収益的支出として処理していた修繕費の中に資本的支出として処理すべき840,000円が含まれているので、それを固定資産に計上したうえで当期の減価償却も月割で計算しなさい、という問題です。仕訳自体は簡単なので特に問題ないと思います。

840,000円÷20年=42,000円/年 42,000円×2か月/12か月=7,000円

【解答②】資本的支出を計上
(借)建物 840,000
 (貸)修繕費 840,000
【解答③】資本的支出分の減価償却
(借)減価償却費 7,000
 (貸)建物減価償却累計額 7,000

 最後に①②③の仕訳をまとめると解答仕訳になります

7. 利息の見越し

 利息の未払分(3月1日から3月31日までの1か月分)を月割で見越し計上します。金額の計算自体は簡単なので特に問題ないと思います。

借入金7,500,000円×年利率1.8%×1か月/12か月=11,250円

借入金5,000,000円×年利率2.4%×1か月/12か月=10,000円

 ここで、答案用紙の負債の部をチェックしてください。支払手形、買掛金の下に短期借入金という勘定があります。勘の良い方はこの短期借入金を見た瞬間に「借入金の長短分類が必要なんだな」と気づいたと思います。

 前払費用(経過勘定)や貸付金、借入金には一年基準(ワンイヤールール)が適用されます。借入金の場合、決算日の翌日から起算して1年以内に返済の期限が到来するものは短期借入金に区分し、1年を超えて期限が到来するものは長期借入金に区分する必要があります。

 本問の決算日は平成26年3月31日なので、平成27年3月31日を基準にして長短分類をします。まず、返済期日が平成27年2月28日の借入金7,500,000円は、決算日の翌日から起算して1年以内に返済の期限が到来するので短期借入金に区分します。

 一方、返済期日が平成29年2月28日の借入金5,000,000円は、決算日の翌日から起算して1年以内に返済の期限が到来しない(1年を超えて期限が到来する)ので長期借入金に区分します。

  • 借入金7,500,000円→1年以内に返済の期限が到来する→流動負債の短期借入金
  • 借入金5,000,000円→1年を超えて期限が到来する→固定負債の長期借入金

 なお、一年基準に関しては第109回の第1問・仕訳問題の問3でも問われているので、参考までにご確認ください。

8. 退職給付

 見積額40,000円を退職給付費用で処理するだけです。

9. のれんの償却

 問題文の「のれんは平成20年4月1日に取得したもの」から、決算整理前残高試算表の「のれん 180,000」は、既に5回(平成21年3月31日、平成22年3月31日、平成23年3月31日、平成24年3月31日、平成25年3月31日)償却された残額であると分かるので、180,000円を残りの償却期間15年(=20年-5年)で割って1年あたりの償却額12,000円を計算します。

 よくある間違いとしては、単純に「20年で割ってしまう」のと、平成20年4月1日から決算日の平成26年3月31日まで6年経っているから「14年で割ってしまう」の2つが考えられます。

 本問の場合、14年では割り切れないのでその時点で間違いに気づくことが出来ますが、20年では割りきれてしまうので間違えてしまった方も多かったようです。この2つはのれん償却の典型的なひっかけなので気をつけてください。

10. 法人税等

 本問は法人税等の金額が与えられていないので、税引前当期純利益の金額を自分で計算する必要があります。

 計算方法は「貸借対照表の貸借差額と1次方程式を使って税引前当期純利益を計算する方法」と「損益計算書を作って税引前当期純利益を計算する方法」の2つがあるので、どちらで計算しても構いません。

 ただ、いずれの方法にしても9.までの処理が1つでも間違っていると正しい税引前当期純利益の金額を算定することは出来ないので、答案用紙の未払法人税等と繰越利益剰余金の金額は、基本的には捨て問(本試験では無理して解かなくて良い問題)になります。

 以下の解説は参考までにご確認ください。

貸借対照表の貸借差額と1次方程式を使って税引前当期純利益を計算する方法

 まず、答案用紙の貸借対照表の未払法人税等と繰越利益剰余金以外の金額を全て埋めて、貸借差額を計算します。

  • 借方合計:22,118,350円
  • 貸方合計:20,258,350円
  • 貸借差額:1,860,000円(=未払法人税等と繰越利益剰余金の合計金額)

 次に、税引前当期純利益の金額をXと置いて「未払法人税等+繰越利益剰余金=1,860,000円」という1次方程式を作ります。

  • 未払法人税等=法人税等-仮払法人税等=X×0.4-140,000円
  • 繰越利益剰余金=決算整理前残高試算表の繰越利益剰余金+当期純利益=1,400,000円+X×0.6
  • (0.4X-140,000円)+(1,400,000円+0.6X)=1,860,000円

 上記の1次方程式を計算すると「X=600,000円」になるので、その40%分の240,000円を法人税等として計上し、さらに仮払法人税等140,000円との差額100,000円を未払法人税等として計上します。

損益計算書を作って税引前当期純利益を計算する方法

 下書き用紙に以下のような損益計算書を書いて、貸借差額で税引前当期純利益を計算することも出来ます。ただ、これもかなり難度が高いので現実的とは思えませんが…。

損益計算書
期首商品棚卸高
当期商品仕入高
商品評価損
棚卸減耗損
貸倒引当金繰入額
退職給付費用
給料
旅費交通費
水道光熱費
通信費
保険料
修繕費
のれん償却額
減価償却費
支払利息
税引前当期純利益
2,350,000
19,020,000
11,000
10,000
11,660
40,000
1,765,000
120,000
543,000
175,000
195,000
160,000
12,000
919,000
321,250
600,000
売上高
期末商品棚卸高
受取利息
24,005,000
2,242,000
5,910

 税引前当期純利益の金額が600,000円と分かったら、上と同様に、その40%分の240,000円を法人税等として計上し、さらに仮払法人税等140,000円との差額100,000円を未払法人税等として計上します。

 上にも書きましたが、本問の法人税等の計算は「労多くして功少なし」の典型例なので、未払法人税等と繰越利益剰余金の金額は思い切って捨ててください。浮いた時間で他の問題を解いたほうがよっぽど効率的です。



ページの先頭へ