日商簿記検定2級 第131回総評(過去問分析)

第1問 普通レベルの仕訳問題です。ケアレスミスに気をつけて!

第1問の難度アンケート結果

 第1問は今回も【仕訳】問題でした。ひっかけもなく、5問とも過去問類似問題でしたので、きちんと過去問対策をやっていれば満点が取れる問題でした。

 ちなみに、第1問の仕訳問題で3問以下しか取れないと合格がかなり遠のきますので、仕訳に不安がある方は仕訳問題対策を使って仕訳力を強化しておいてください。


 問1固定資産の焼失・未決算に関する問題ですが、火災の発生によって資産が焼失してしまった場合、焼失時の帳簿価額を未決算勘定に振り替えることになります。

 本問はたったそれだけの簡単な仕訳ですが、派生論点が3つほどありますので、仕訳問題対策の該当ページで確認しておいてください。なお、固定資産の焼失・未決算に関する問題は同じような形式で何度も出題されており、過去問対策をきちんとやっていた方にとってはボーナス問題になったと思います。

 問2荷為替手形に関する問題です。本問は【仕入勘定から積送品勘定への振り替える仕訳】と【荷為替を取り組む仕訳】に分けて考えるといいと思います。

 第117回の問5でも同じような問題が出題されていますので、問1同様に過去問対策をきちんとやっていた方にとってはボーナス問題になったと思います。

 問3固定資産の購入・建設仮勘定に関する問題です。本問のように、建設に先立って代金の一部を支払った場合には、建設仮勘定を計上して支出額を記録しておき、建設完了・引渡時に建物勘定に振り替えます。とても簡単な問題です。

 問4増資時の新株発行に関する問題です。毎度おなじみの頻出仕訳で、ひっかけ等も無かったので特に問題ないと思います。なお、本問は第114回の問1とほとんど同じ問題です。

 問5繰越利益剰余金の補填に関する問題です。別途積立金勘定を繰越利益剰余金勘定に振り替えるだけの簡単な問題です。なお、本問は第108回の問5とほとんど同じ問題です。


 なお、各問の詳細な解説に関しては、仕訳問題対策のほうで個別にまとめましたので、必要に応じてご覧いただければと思います。(仕訳問題対策に掲載しているのは過去問類題ですので、過去問の解答仕訳とは異なる点に留意してください)


 最後に、仕訳問題の解答手順をもう一度確認しておいてください。最近の試験では…第124回の2級で現金預金勘定を使う仕訳問題が出題されましたが、勘定科目のチェックを怠ってしまった受験生は、現金勘定や当座預金勘定を使って解答してしまい、それだけでマイナス12点になってしまいましたので、練習時から「勘定科目のチェック」を忘れないようにしてください。

  1. 問題文を読んで、一度、問題用紙の余白部分に仕訳をする
  2. 問題で列挙されている勘定科目を使っているか確認する
  3. ない場合は代替できる勘定を探す(例・従業員預り金→預り金など)
  4. 解答用紙に仕訳をする

第2問 難度の高い特殊仕訳帳の問題。下書きの書き方がポイントです!

第2問の難度アンケート結果

 第2問は【特殊仕訳帳】からの出題でした。具体的な解き方としては、4月中の普通仕訳帳&特殊仕訳帳に記入された取引の仕訳を下書き用紙に全部書き出して、次に二重仕訳部分を除外する作業をしたうえで、除外されずに残ったものを集計して解答用紙の残高試算表に書き込んでいきます。

 簿記検定ナビではしつこいくらい下書きの書き方を紹介していますので、きちんとマスターできた方にとってはボーナス問題になったと思います。ただ、今回の問題は一部当座取引が多かったり、過去問ではあまり見かけない小口現金出納帳が出ましたので、多くの受験生は難しく感じたようです。

 それでは、今回も順を追って考えていきますが、文字で書いてもなかなか分かりづらいと思いますので、まずは私が書いた下書き用紙をご覧ください。

第2問・特殊仕訳帳の下書き1
第2問・特殊仕訳帳の下書き1

 自分で金額を算定する必要がある箇所には赤字を入れてみました。「解答用紙・前期末残高」や「解答用紙・4月中の取引高」など、問題用紙だけでなく解答用紙にもたくさんのヒントがあることがお分かりいただけると思います。

① 全ての仕訳を(下書き用紙に)切る

 まず、下書き用紙を横長の状態にして4つの区分に区切ってください。左から【普通仕訳帳に記入された仕訳】【当座預金出納帳に記入された仕訳】【仕入帳および売上帳に記入された仕訳】【受取手形記入帳および仕入手形記入帳に記入された仕訳】という順番になります。

 なお、資料[Ⅱ]の小口現金出納帳は特殊仕訳帳ではないので、下書きを書く際は普通仕訳帳の列に記入します。

第2問・特殊仕訳帳の下書き2
第2問・特殊仕訳帳の下書き2

 次に、普通仕訳帳と特殊仕訳帳に記入された取引の仕訳を下書き用紙に全て書き出しますが、この際にいくつかルールがありますので、それを守って書き出してみてください。ルールは以下の通りです。


  1. 特殊仕訳帳(本問では当座預金出納帳・売上帳・仕入帳・受取手形記入帳・支払手形記入帳)に記入される仕訳のうち、普通仕訳帳を通さずに総勘定元帳に個別転記する勘定についてはアンダーラインを付す
    これは個別転記分と合計転記分を分けて解答する問題に対応するためのルールですが、本問のように分類する必要のない簡単な問題でもきちんと分類するクセをつけておくと、帳簿組織に関する理解も深まりますし、上位資格の勉強をする際にも役に立ちます。
  2. 普通仕訳帳と特殊仕訳帳に記入される仕訳のうち、他の特殊仕訳帳の親勘定となる勘定については二重仕訳を回避するために()で括る。一部当座取引の二重仕訳となる勘定も同じく()で括る
  3. 仕訳を書き出していく際には、諸口勘定を使わずに、内訳をきちんと書く。本問ですと、当座預金出納帳の借方の売買目的有価証券・有価証券売却益、貸方の建物・小口現金のことです。

 上記のルールに沿って書き出していくと、冒頭で紹介した私の下書きが出来上がるはずです。4月3日の「手形の割引」、4月4日の「固定資産の売却」、4月20日の「給料の支払い」に関する仕訳は一部当座取引に該当しますので、見落とさないように注意してください。

 なお、一部当座取引の記帳方法に関しては、「取引を分解する方法」や「取引を擬制する方法」や「取引全体を普通仕訳帳に記帳する方法」などがありますが、受験簿記では十中八九、二重仕訳が生じる「取引のすべてを普通仕訳帳に記帳する方法」で出題されますので、考え方や処理方法を必ずマスターしておいてください。

② 二重仕訳を把握する

 下書き用紙に仕訳を切ったら、次は二重仕訳を把握するための作業を行うことになります。私の場合は、下書き用紙右側部分のような図を書いて二重仕訳を把握するようにしていますが、正確に二重仕訳を把握できる方法であれば、もちろん他の方法でも構いません。

 二重仕訳を把握できたら、これらの金額をきちんとカッコで囲んでいるか下書き用紙の仕訳を再確認してください。なお、普通仕訳帳と当座預金出納帳に関する二重仕訳(本問では78,800円、150,000円、124,000円)を忘れてしまう人が多いので、拾い漏れの無いように細心の注意を払うようにしてください。

③ 残ったもの(カッコで囲まれていない勘定)を集計する

 最後に、カッコで囲まれていない勘定(アンダーラインを付した勘定も含む)を集計して解答用紙の残高試算表に金額を記入していきます。

 この作業に関しては、ひたすら集計していくだけですのでテクニカルなポイントはありませんが、集計した勘定には必ず打ち消し線を引くなどといった自己ルールを決めて、拾い漏れの無いようにしてください。


 日商簿記検定2級の第2問で出題される帳簿組織は毎回ワンパターンですので、下書きを定型化することによって短時間で満点を狙えるようになります。直近では、第125回第127回第129回の帳簿組織の問題も本問と同じ解答手順で解けますので、過去問等を使って対策しておいてください。

第3問 財務諸表作成問題!問題資料が試算表形式でない場合もあります!

第3問の難度アンケート結果

 第3問は精算表作成問題が大本命(第130回が本支店会計かつ第129回が財務諸表作成問題だったから)だったんですが、蓋を開けてみれば【財務諸表作成問題】で、しかも今回は資料の与えられ方が見慣れない形だったので、問題を見ただけで戦意を喪失してしまった方も多かったようです。

 ただ、個別の問題の難度・量はたいしたことはありませんので、ひとつひとつ部分点を積み上げていけば7割~8割は十分取れる問題だったと思います。

資料Ⅱの処理

1.
(借)貸倒引当金 10,000
 (貸)売掛金 10,000
2.
(借)当座預金 5,000
 (貸)有価証券利息 5,000
3.
(借)研究開発費 80,000
 (貸)消耗品費 80,000
4.
(借)退職給付引当金 20,000
 (貸)給料手当 20,000

 資料Ⅱの4つの処理については特に問題ないと思いますが、1.の売掛金の貸倒れの処理は、資料Ⅲの1.貸倒引当金の設定の仕訳に影響を与えますので、金額算定時に忘れないように気をつけましょう。

資料Ⅲの処理

1.
(借)貸倒引当金繰入 11,800
 (貸)貸倒引当金 11,800
2.
(借)仕入 380,000
 (貸)繰越商品 380,000
(借)繰越商品 324,000
 (貸)仕入 324,000
(借)棚卸減耗損 18,000
 (貸)繰越商品 18,000
(借)商品評価損 6,800
 (貸)繰越商品 6,800
(借)仕入 18,000
 (貸)棚卸減耗損 18,000
(借)仕入 6,800
 (貸)商品評価損 6,800
3.
(借)減価償却費 121,250
 (貸)建物減価償却累計額 40,000
 (貸)備品減価償却累計額 81,250
4.
(借)満期保有目的債券 1,500
 (貸)有価証券利息 1,500
5.
(借)のれん償却 40,000
 (貸)のれん 40,000
6.
(借)退職給付引当金繰入 80,000
 (貸)退職給付引当金 80,000
7.
(借)支払利息 16,000
 (貸)未払利息 16,000
8.
(借)受取家賃 62,500
 (貸)前受家賃 62,500
9.
(借)消耗品 30,000
 (貸)消耗品費 30,000
10.
(借)法人税等 72,000
 (貸)仮払法人税等 50,000
 (貸)未払法人税等 22,000

 1.の貸倒引当金の繰入については、上でも述べましたが資料Ⅱの売掛金の減少を考慮して計算する必要があるので気をつけましょう。

 2.の期末商品の処理については、問題文に「棚卸減耗損と商品評価損は売上原価の内訳科目として処理する」とありますので、理論的には5本目と6本目の仕訳が必要になります。

 ただ、実際に問題を解く際には仕訳にこだわる必要はありません。360個×@900=324,000円で期末商品棚卸高の金額を算定し、(360個-340個)×@900=18,000円で棚卸減耗損の金額を、340個×(@900-@880)=6,800円で商品評価損の金額を算定し、解答用紙に書きこめばOKです。

 3.の固定資産の減価償却については、備品の追加購入分の減価償却費を月割で計算する点に気をつけてください。4.の満期保有目的債券の評価替えについては、償却原価法により計算するだけですが、下半期分の利息については資料Ⅱの2.で既に計上済みなので、重複計上しないように気をつけましょう。

 5.ののれんの償却については、既に4年分を償却済みなので、残りの6年間で借方残高の240,000円を均等償却します。240,000円を10で割らないように気をつけましょう。

 6.の退職給付引当金については簡単なので特に問題ないと思います。7.の費用の見越しについては、8か月分(8月1日~3月31日)の利息を計算します。按分するのを忘れないように気をつけましょう。8.の収益の繰延べについては6.と同様に簡単なので特に問題ないと思います。

 9.の消耗品については、資料Ⅰの借方残高の「消耗品費 370,000円」から、期末未使用高30,000円を消耗品勘定に振り替えると判断します。仮に、資料Ⅰの借方残高が「消耗品 370,000円」だった場合は、期中使用高340,000円を消耗品費勘定に振り替えます。あわせて押さえておいてください。

 10.の法人税等についても簡単なので特に問題ないと思います。

第4問 ようやく出題された本社工場会計!問題の勘定科目が大きなヒント!

第4問の難度アンケート結果

 第4問は【本社工場会計】の問題でした。問題の資料が文章だらけなので、なんとなく処理が面倒くさそうに見えるかもしれませんが、解答手順はとてもシンプルです。

 各取引の仕訳を何の制限もなく書きだした上で、問題で列挙されている「材料」「賃金」「設備減価償却累計額」「仕掛品」「製造間接費」「予算差異」「操業度差異」以外の勘定科目が出てきたら、それを本社勘定に置き換えるだけです。

工場での仕訳

1.
(借)材料 1,550,000
 (貸)買掛金 → 本社 1,500,000
 (貸)現金など → 本社 50,000
2.
(借)仕掛品 2,184,000
(借)製造間接費 3,146,000
 (貸)賃金 5,330,000
3.
(借)製造間接費 1,200,000
 (貸)設備減価償却累計額 1,200,000
4.
(借)仕掛品 7,488,000
 (貸)製造間接費 7,488,000
5.
(借)予算差異 28,000
(借)操業度差異 104,000
 (貸)製造間接費 132,000

 1.の部品の掛け購入については特に問題ないと思いますが、買掛金勘定・現金など勘定は工場元帳に設定されていないので、本社勘定に置き換えます。なお、実際に解答するときは貸方の1,500,000と50,000をひとつにまとめて1,550,000と書きましょう。

 2.の労務費の計上について、直接労務費については予定総平均賃率に直接作業時間を掛けあわせて算定するだけですが、間接労務費については間接工の労務費だけでなく直接工の間接労務費も含まれる点に気をつけましょう。

 3.の減価償却費の計上については特に問題ないと思います。4.の製造間接費の予定配賦については、製造間接費変動予算を年間予定総直接作業時間で割って予定配賦率を算定し、それに直接作業時間を掛けて金額を算定します。

 5.の各差異の振り替えについては、毎度おなじみのシュラッター図を機械的に描いて各差異を算定するだけです。

シュラッター図の下書き画像
シュラッター図の下書き画像

第5問 工程別総合原価計算の問題!超簡単なのでとりこぼしのないように!

第5問の難度アンケート結果

 第5問は【工程別総合原価計算】からの出題でした。第1工程の正常減損(終点発生)を完成品に含めて処理する点を間違えなければ、余裕で20点満点が取れる超簡単な問題でした。アンケートでも9割近くの受験生が「かなり簡単だった」と回答しています。

 私が書いた下書きを載せておきますので、下書きの書き方がイマイチよく分からないという方は参考にしてください。ちなみに、FIFOというのは「First In, First Out」の頭字語で、先入先出法を意味します。また、Ave.というのは「Average」の略語で、平均法を意味します。

第5問・工程別総合原価計算の下書き
第5問・工程別総合原価計算の下書き

 なお、本問は第1工程の原価配分は先入先出法により行い、第2工程の原価配分は平均法により行いますので、最初に問題文を読んだときに「先入先出法」「平均法」という部分を目立たせておくと、ケアレスミスを減らせると思います。

 なお、これは本問だけでなく全ての問題に言えることですので、意識して問題文を読んだ時に、大事なところは目立たせておくクセをつけてください。

まとめ

全体的な難度に関するアンケート結果

 今回の試験は第1問が普通レベルで、第2問・第3問が難しく、第4問・第5問が簡単だったというアンケート結果になりました。総合的には「やや難しい」と感じた受験生が多かったようです。

 合格率は30.7%という平均的な数値になりましたが、これは第2問・第3問の商業簿記にはまってしまった方が多かったことを表しています。

 本問のように商業簿記と工業簿記の難度に大きな開きがある場合は、解答手順を「簡単→難しい」にすることをおすすめします。具体的には第1問→第4問→第5問→第2問→第3問とし、とにかく工業簿記で出来るかぎり点数を稼いで、商業簿記は部分点を拾っていく…というスタイルです。

 日商簿記検定2級の勉強法については、3級同様、「テキストと問題集を何度も繰り返し、ある程度力が付いてきたら過去問・予想問題を購入して典型論点の問題をこなしておく」という王道的なスタイルできちんと勉強すれば、よっぽどのことがない限り短期&1発合格できますので、地道にコツコツ勉強するようにしてください。

 なお、過去問・予想問題を解く際には「必ず時間を計ってやること」「なるべく少ない下書きで正解が導き出せるように毎回工夫すること」の2点に気をつけてください。

 計測したタイムは解答用紙に記入しておき、回数を重ねるごとに短縮できているか毎回チェックし、下書き用紙については捨てずに解答用紙に挟んでおいて、前回のものと比べられるようにしておいてください。

新形式の問題について

 新形式の問題については、第126回の第2問(特殊商品売買)、第127回の第3問(本支店会計)と立て続けに出題されましたので、第132回以降の試験でも出題される可能性は十分にあります。

 ただ、事前に予想して対策を講じるのは費用対効果の面で現実的ではありませんので、運悪く出題されてしまった場合には、とにかく諦めずに部分点を積み上げていくようにしてください。

 日商簿記検定2級には各科目の足きり制度はなく、合計で70点以上取れれば合格できる試験ですので、「取れるところから取る!難しいところは部分点を積み上げる!」ということを、試験時だけでなく練習時にも常に意識して問題を解くようにしてください。



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