日商簿記検定2級 第130回総評(過去問分析)

第1問 普通レベルの仕訳問題です。ケアレスミスに気をつけて!

第1問の難度アンケート結果

 第1問は今回も【仕訳】問題でした。保有していた他店振出受取手形が不渡りになった問2や、試用販売の対照勘定法による処理を問われた問5などはあまり見かけない問題ですが、仕訳の考え方が特に難しいわけではないので、過去問対策をきちんとやっていれば最低でも4問(16点)は取れたはずです。

 第1問の仕訳問題で3問以下しか取れないと合格がかなり遠のきますので、不安がある方は仕訳問題対策などを使って仕訳力を強化しておいてください。


 問1有価証券の購入に関する問題ですが、「購入に関する仕訳」と「利息の支払いに関する仕訳」とに分けて考えると分かりやすいです。

 「購入に関する仕訳」は取得原価に付随費用(証券会社への手数料)を含めて処理する点、「利息の支払いに関する仕訳」は前回の利払日の翌日から購入日までの端数利息を日割計算する点がポイントになります。

 なお、有価証券の購入に関する問題は第102回の問3第124回の問4など、過去にも同じような形式で何度も出題されていますので、過去問対策をきちんとやっていた方にとっては、ボーナス問題になったと思います。

 問2不渡手形に関する問題です。第1問の仕訳問題では、過去に割り引いた手形が不渡りになるケースの問題が多く、本問のように保有していた他店振出受取手形が不渡りになるケースは珍しいです。

 ただ、仕訳自体は受取手形勘定を割引手形勘定に振り替えるだけなので簡単です。なお、償還請求に要した費用(本問は30,000円)は不渡手形勘定に含めて処理します。

 問3固定資産の減価償却に関する問題です。生産高比例法により減価償却費を算定するだけの簡単な問題ですが、問題文の「営業用トラック2台」といういう指示を見落として、1台で計算してしまった受験生がかなりいたようです。

 なお、固定資産の減価償却に関する問題は第104回の問2第116回の問1でも出題されていますが、いずれも絶対に落としてはいけない部類の問題になりますので、指示の見落とし等のケアレスミスに気をつけてください。

 問4設立時の新株発行に関する問題です。毎度おなじみの頻出仕訳で、ひっかけ等も無かったので特に問題ないと思います。なお、本問は第120回の問2とほとんど同じ問題です。

 問5試用販売(特殊商品売買)に関する問題です。問2同様、第1問の仕訳問題では手許商品区分法による処理が問われるケースの問題が多く、本問のように対照勘定法による処理が問われるケースは珍しいです。

 ただ、仕訳自体は売価で備忘記録をするだけなので簡単です。なお、勘定科目については試用仮売上勘定や試用販売売掛金勘定ではなく、試用販売勘定や試用販売契約勘定を使う場合もありますので、毎回、問題文に列挙されている勘定科目をチェックするクセをつけてください。


 なお、各問の詳細な解説に関しては、仕訳問題対策のほうで個別にまとめましたので、必要に応じてご覧いただければと思います。(仕訳問題対策に掲載しているのは過去問類題ですので、過去問の解答仕訳とは異なる点に留意してください)


 最後に、仕訳問題の解答手順をもう一度確認しておいてください。最近の試験では…第124回の2級で現金預金勘定を使う仕訳問題が出題されましたが、勘定科目のチェックを怠ってしまった受験生は、現金勘定や当座預金勘定を使って解答してしまい、それだけでマイナス12点になってしまいましたので、練習時から「勘定科目のチェック」を忘れないようにしてください。

  1. 問題文を読んで、一度、問題用紙の余白部分に仕訳をする
  2. 問題で列挙されている勘定科目を使っているか確認する
  3. ない場合は代替できる勘定を探す(例・従業員預り金→預り金など)
  4. 解答用紙に仕訳をする

第2問 いわゆる普通の伝票会計。時間をかけずに満点を狙いたい問題!

第2問の難度アンケート結果

 第2問は【伝票会計】からの出題でした。仕訳日計表と総勘定元帳(現金と買掛金)、得意先元帳(磐田商店・清水商店)を作成する問題で、第115回や第119回で出題された伝票会計と同じタイプの簡単な問題でした。

 アンケートでも多くの受験生が「かなり簡単だった」と回答しており、本問は単に満点を取るだけでなく、なるべく短い解答時間で満点を取ることが合格へのカギになります。

 以下の下書き画像は、管理人が実際に問題を解く際に書いたものですが、磐田商店と清水商店に対する売掛金については、後の集計作業が楽になるように勘定科目に「~いわ」「~しみ」と付けることをおすすめします(買掛金については商店別に分ける必要はありません)

第2問・伝票会計の下書き
第2問・伝票会計の下書き

 下書きの書き方は千差万別で絶対的な正解はありませんが、出来るかぎりシンプルにまとめることをおすすめします。

 簿記検定ナビでも勘定科目を省略して書いたり、金額の下3桁が「000」のときは「-」で代用するなど、「塵も積もれば山となる」的なテクニックをいろいろ紹介していますので、興味のある方は勘定科目の省略パターン一覧表ページをご覧下さい。

 なお、第2問で出題される伝票会計については、第115回・第119回・今回のように各伝票の金額が全て埋まっている問題と、第121回・第123回・第128回のように一部の金額を推定する問題の2つのパターンがありますが、どちらも過去問に類似した問題が何度も繰り返し出題されるので、過去問対策が非常に効果的です。

 最後に、伝票会計に関しては下の画像の内容をきちんと理解できているか確認してください。この画像は管理人が実際に作ったまとめノートの一部ですが、この画像の内容を確実に理解しておけば、たいていの伝票会計の問題に対応できるはずです。

伝票会計のまとめノート1
伝票会計のまとめノート1
伝票会計のまとめノート2
伝票会計のまとめノート2

第3問 普通レベルの本支店会計!下書きを定型化して高得点を狙おう!

第3問の難度アンケート結果

 第3問は【本支店会計】からの出題でした。質・量ともに普通レベルの問題なので、下書きを定型化できている人にとってはボーナス問題になったと思います。

 日商簿記検定2級で出題される本支店会計の問題は、下書きを定型化して数字を当てはめていくという作業だけで高得点を狙えます。下に管理人が問題を解く際に実際に書いた下書きを載せておきますので、本支店会計が苦手な方は参考にして問題を解いてみてください。

第3問・本支店会計の下書き
第3問・本支店会計の下書き

1.下書き用紙に4つの勘定を書く

 下書き作成の流れを簡単に説明していきます。まず本店の「支店」「支店へ売上」勘定と、支店の「本店」「本店より仕入」勘定の4つを下書き用紙に書きます。

 資料(Ⅰ)の決算整理前残高試算表から金額が分かる「本店」「支店へ売上」勘定はその金額を記入し、金額が分からない「支店」「本店より仕入」勘定は【?】と記入しておきます。

2.未達事項を処理する

 次に、「本店」と「支店」、「支店へ売上」と「本店より仕入」の各勘定の残高を一致させるために、資料(Ⅱ)の未達取引の処理を行ないます。

 具体的な手順としては…仕訳をして、「支店勘定」「支店へ売上」「本店勘定」「本店より仕入」勘定の4つについては下書き用紙に設定した勘定に、その他の勘定科目については資料Ⅰの残高試算表に加減する形で記入していきます。

3.商品BOXを使って商品の流れを把握する

 その後、商品BOXを使って本店と支店の商品の流れを把握しますが、商品BOXの書き方については上記のように本店と支店を1つにまとめて書いてもいいですし、第125回の過去問分析ページで紹介している下書きのように、本店と支店とに分けて書いてもどちらでもいいです。

 商品BOXについては、金額の分かるところからどんどん埋めていきます。支店の期首・期末の上下にある四角の部分には内部利益の金額を書いてください。

 商品BOX内の金額を全て埋め終わったら、(Ⅲ)期末整理事項の処理を行う前に損益計算書の「期首商品棚卸高」「当期商品仕入高」「売上高」「期末商品棚卸高」、貸借対照表の「商品」の金額を解答用紙に書き込んでください。

  • 期首商品棚卸高:34,500円+12,000円-1,750円=44,750円
  • 当期商品仕入高:951,200円+279,700円=1,230,900円
  • 売上高:1,056,500円+352,300円=1,408,800円
  • 期末商品棚卸高:36,500円+18,500円+11,250円-5,000円=61,250円
  • 商品:61,250円

 「期首商品棚卸高」と「期末商品棚卸高」に関しては、内部利益を控除することを忘れないように気をつけてください。また、「当期商品仕入高」と「売上高」に関しては、外部仕入高と外部売上高のみを集計し、内部取引(支店売上=本店仕入)を含まない点に気をつけてください。

 なお、貸借対照表の「商品」に関しては、期末実地棚卸高の金額が入ります、本問は棚卸減耗損や商品評価損がありませんので「期末商品棚卸高=期末実地棚卸高」となり、損益計算書の期末商品棚卸高と同じ金額(61,250円)になります。

4.資料Ⅲの期末整理事項を処理する

 以上で商品関係の処理が終わりますので、あとは(Ⅲ)期末整理事項の処理を行うだけです。こちらに関しては特に問題はないと思います。

 なお、本支店会計の具体的な下書きの書き方については、第117回日商簿記検定の2級総評にも詳しく載せてありますので、そちらのほうも参考にしてみてください。

 日商簿記検定2級の本支店会計対策は、下書き用紙の書き方をマスターして過去問を何回も繰り返すだけで十分です。

第4問 工程別総合原価計算の問題!出来不出来の差が激しい問題!

第4問の難度アンケート結果

 第4問は【工程別総合原価計算】からの出題でした。40%以上の方が「かなり簡単だった」と回答している一方、20%以上の方が「かなり難しかった」と回答しており、今回はこの第4問が合否を分ける問題になったと思われます。

 具体的な解答手順としては、(1)BOXを書いて金額を埋めていき、次に(2)製造間接費の実際発生額を算定して、製造間接費配賦差異を求めて、最後に(3)解答用紙の空欄を埋めていく、という流れになります。

 以下に、私が書いた下書き用紙を載せておきます。シンプルな下書きは解答時間の短縮だけでなく、ケアレスミス防止の効果もありますので、書き方が分からない方はぜひ参考にしてください。

第4問・工程別総合原価計算の下書き
第4問・工程別総合原価計算の下書き

第5問 単純総合原価計算の問題!材料Bの処理方法がポイントです。

第5問の難度アンケート結果

 第5問は【単純総合原価計算】からの出題でした。本問は、工程を通して平均的に投入された材料Bの取り扱い(平均投入された材料は、加工費と同じように完成品換算量にもとづいて原価を配分する)がポイントになります。

 ただ仮に材料Bの処理が全く出来なかったとしても、材料Aと加工費については普通に計算すれば解答欄を埋められるので、最低限の部分点は確保できたと思います。

 下の画像は私が問題を解く際に書いた下書きですが、①②③は金額を算定する順番です。まず、問題の資料2の当月製造費用から、解答用紙の材料Aと材料Bの当月投入金額の合計額を差し引いて①の金額を算定します。

 次に、解答用紙の加工費の合計額から、上で算定した当月投入の金額を差し引いて②の金額を算定します。最後に、問題の資料2の月初製品原価から、解答用紙の材料Aと加工費の月初仕掛品の合計額を差し引いて③の金額を算定します

第5問・単純総合原価計算の下書き
第5問・単純総合原価計算の下書き

 なお、本問は仕掛品の原価配分は先入先出法により行い、製品の原価配分は平均法により行いますので、最初に読んだときに「先入先出法」「平均法」という部分を目立たせておくと、実際に計算をする時に便利です。

 これは本問だけでなく全ての問題に言えることですので、意識して問題文を読んだ時に、大事なところは目立たせておくクセをつけてください。

まとめ

全体的な難度に関するアンケート結果

 今回の試験は、個別でみていくと第1問・第2問・第4問は簡単で、第3問が普通、第5問が難しかったというアンケート結果になりました。総合的には普通レベルと感じた受験生が多かったようです。

 工業簿記にはまってしまった方が多く、合格率はおそらく30%台前半になると予想していますが、簿記検定ナビで第1問の仕訳問題対策をし、第2問・第3問の下書きの書き方をマスターしていれば、工業簿記については部分点を拾っていくだけで合格できたと思います。

 日商簿記検定2級の勉強法については、3級同様、「テキストと問題集を何度も繰り返し、ある程度力が付いてきたら過去問・予想問題を購入して典型論点の問題をこなしておく」という王道的なスタイルできちんと勉強すれば、よっぽどのことがない限り短期&1発合格できますので、地道にコツコツ勉強するようにしてください。

 なお、過去問・予想問題を解く際には「必ず時間を計ってやること」「なるべく少ない下書きで正解が導き出せるように毎回工夫すること」の2点に気をつけてください。

 計測したタイムは解答用紙に記入しておき、回数を重ねるごとに短縮できているか毎回チェックし、下書き用紙については捨てずに解答用紙に挟んでおいて、前回のものと比べられるようにしておいてください。

新形式の問題について

 新形式の問題については、第126回の第2問(特殊商品売買)、第127回の第3問(本支店会計)と立て続けに出題されましたので、第131回以降の試験でも出題される可能性は十分にあります。

 ただ、事前に予想して対策を講じるのは費用対効果の面で現実的ではありませんので、運悪く出題されてしまった場合には、とにかく諦めずに部分点を積み上げていくようにしてください。

 日商簿記検定2級には各科目の足きり制度はなく、合計で70点以上取れれば合格できる試験ですので、「取れるところから取る!難しいところは部分点を積み上げる!」ということを、試験時だけでなく練習時にも常に意識して問題を解くようにしてください。



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