日商簿記検定3級 第127回総評(過去問分析)

第1問 今回も仕訳問題!仕訳問題対策をやっていれば余裕で満点取れたはず!

第1問の難度アンケート結果

 第1問は今回も【仕訳】問題でした。5問とも過去に似たような形式の問題が出題されていましたので、過去問対策をきちんとやっていれば十分満点が狙える回だったと思います。それではまず、仕訳問題の解答手順をもう一度確認してから個々の問題を考えていきましょう。

  1. 問題文を読んで、問題用紙の余白部分に仕訳を切る
  2. 仕訳の勘定科目が問題文で列挙されているか確認する
  3. ない場合は代替できる勘定を探す(例・従業員預り金→預り金など)
  4. 解答用紙に仕訳を写す
  5. 解答用紙の勘定科目と問題文で列挙されている勘定科目を再チェックする

 上記の解答手順は試験時にいきなりやろうと思っても無理ですので、練習時から基本的な解き方を常に心がけるようにしてください。


 問1仕入取引・手形取引に関する問題は、【為替手形に関する仕訳】【掛け仕入に関する仕訳】に分けて考えると分かりやすいです。本問は第117回の問2とほとんど同じ問題でしたので、仕訳の過去問対策をきちんとやっていた方にとってはボーナス問題になったと思います。

 問2前払金に関する問題は、手付金として支払った40,000円を前払金勘定で処理するだけです。仕入勘定や仮払金勘定を使って仕訳を切らないように気をつけてください

 問3貸倒れ債権の回収に関する問題は、当該貸倒れ債権が当期に貸倒処理されたものなのか、前期以前に貸倒処理されたものなのかによって仕訳が変わってきますので、そのことを念頭において問題を解くようにしてください。

 問4仮受金・前受金に関する問題は、両者の違いについてはきちんと区別できるようにしておいてください。本問はとても簡単な問題です。

 問5資本の引き出しに関する問題は、【営業用店舗の固定資産税】に関する部分と、【事業主の所得税】に関する部分とに分けて考えると分かりやすいと思います。資本の引き出しに関しては、資本金勘定を使う場合と引出金勘定を使う場合の両方が考えられますので、どちらで問われても大丈夫なように対策しておいてください。

 なお、各問の詳細な解説に関しては、仕訳問題対策のほうで個別にまとめましたので、必要に応じてご覧いただければと思います。

第2問 消耗品の勘定記入問題!こちらもボーナス問題でした!

第2問の難度アンケート結果

 第2問は【勘定記入】に関する問題で、支出時に全額を消耗品費で処理した場合の勘定を、支出時に全額を消耗品勘定で処理した場合の勘定に直してくださいね、というよくありがちなパターンの問題でした。具体的な解き方は、以下のようになります。

  1. 問題文で与えられている消耗品費勘定・消耗品勘定から仕訳をイメージする
  2. その仕訳から支出時に全額を消耗品勘定で処理した場合の仕訳をイメージする
  3. 解答用紙の勘定に記入する

問題文で与えられている消耗品費勘定・消耗品勘定から仕訳をイメージする

 問題文で与えられている消耗品費勘定・消耗品勘定から、1月6日に現金で消耗品50,000円を購入し、決算期末の12月31日に未費消2,000円分を把握し、それぞれの勘定を締め切っていることが分かります。

1月6日の取引
(借)消耗品費 50,000
 (貸)現金 50,000
12月31日の取引
(借)消耗品 2,000
 (貸)消耗品費 2,000
(借)損益 48,000
 (貸)消耗品費 48,000

その仕訳から支出時に全額を消耗品勘定で処理した場合の仕訳をイメージする

 上記の仕訳から、支出時に全額を消耗品勘定で処理した場合の仕訳をイメージします。こちらも簡単な処理ですので、特に問題ないと思います。

1月6日の取引
(借)消耗品 50,000
 (貸)現金 50,000
12月31日の取引
(借)消耗品費 48,000
 (貸)消耗品 48,000
(借)損益 48,000
 (貸)消耗品費 48,000

解答用紙の勘定に記入する

 勘定の締め切りに関して苦手意識を持っていらっしゃる受験生も多いと思いますが、本問は問題文に締め切り方法のヒントがありますので、それを参考にして解答用紙に記入すればOKです。消耗品費勘定については損益勘定に振り替え、消耗品勘定については次期繰越という形で処理します。

第3問 今回は「残高」ではなく「合計」試算表の作成問題です!

第3問の難度アンケート結果

 第3問は予想通り【試算表作成問題】でした。

 問題文で与えられた1月1日の資産・負債・純資産の諸勘定の残高に1月中の取引を反映させて、1月31日における合計試算表を作成するというスタンダードな問題ですが、1月中の取引が補助簿で与えられていますので、一部取引が二重になっていることをきちんと読み取れたかどうかがポイントになります。

 なお、本問は合計試算表の作成問題ですが、必ずしなければならない「残高?合計?」のチェックを怠った結果、残高試算表を作成してしまった方が結構いらっしゃったようです。配点比重の大きい第3問で合計試算表と残高試算表を逆に書いてしまうと、合格可能性はほとんど無くなりますのでご注意ください。

 最近の出題傾向をチェックしてみますと、第118回・第119回・第127回は合計試算表の作成問題が、第116回・第117回・第120回・第121回・第122回・第123回・第124回・第126回は残高試算表の作成問題が出題されています。


 それでは早速、具体的な問題の解き方を考えていきたいと思いますが…、個人的には「下書き用紙に全ての取引の仕訳を切った上で、二重取引を考慮して集計する方法」がベストだと思いますので、まずは下書き用紙に全ての取引の仕訳を書いてください。

 なお、仕訳を切る際に「現金出納帳に記入されている取引」「当座預金出納帳に記入されている取引」「売上帳に記入されている取引」「仕入帳に記入されている取引」「補助記入帳に記入されていない取引」をきちんと分けて書いておくと、集計時の二重取引のピックアップ作業が楽になりますので、下の管理人が実際に問題を解く際に書いた下書き画像を参考にして書いてください。

第3問・試算表作成問題の下書き1
第3問・試算表作成問題の下書き1

 今回の問題は合計試算表の作成だけでなく、売掛金及び買掛金の人名勘定別の明細表を作成する必要がありますので、売掛金については「う×秋」「う×青」と、買掛金については「か×ふ」「か×や」というように区別して仕訳を切っておくと、明細表作成時の集計が楽になると思います。


 それでは次に集計に移りますが、現金勘定・当座預金勘定・仕入勘定・売上勘定については、一部が二重に計上されている可能性がありますので、上記の4勘定についてはそれぞれの欄に計上されている金額のみを集計するようにしてください。

 具体的には…例えば現金勘定であれば、「現金出納帳に記入されている取引」で切った仕訳から現金勘定を集計して、「当座預金出納帳に記入されている取引」「売上帳に記入されている取引」「仕入帳に記入されている取引」に計上されている、いわゆる二重取引に該当する現金勘定については集計時に無視することになります。

第3問・試算表作成問題の下書き2
第3問・試算表作成問題の下書き2

 あとは、現金勘定と同じように当座預金勘定・仕入勘定・売上勘定を集計していくだけです。この方法ですと、全ての仕訳を切った後に、簡単なルールに従って機械的に集計するだけで二重取引を排除することが出来ます。なお、その他の勘定科目については普通に集計するだけですので特に問題ないと思います。

第4問 2回連続で伝票会計に関する問題!今回も簡単な問題です。

第4問の難度アンケート結果

 第4問は【伝票会計】の問題でした。非常に簡単な問題ですので、確実に10点満点を取りたい問題です。具体的な解答方法は…取引の仕訳を書き出した上で、それを伝票に起票し直すという形が良いと思います。

解答のベースとなる仕訳
(借)現金 20,000
(借)売掛金 100,000
 (貸)売上 120,000

 (1)は3伝票制を採用している場合の伝票への記入を問う問題ですが、問題文に「一部振替取引については、取引を分解して起票する方法を採用している」とありますので、120,000円の取引を現金売上分の20,000円と掛け売上分の100,000円に分けて起票することになります。

仕訳
(借)現金 20,000
 (貸)売上 20,000
(借)売掛金 100,000
 (貸)売上 100,000
★入金伝票
(借)現金 20,000
 (貸)売上 20,000
★振替伝票
(借)売掛金 100,000
 (貸)売上 100,000

 (2)は5伝票制を採用している場合の伝票への記入を問う問題ですので、売上伝票の相手勘定は自動的に売掛金勘定になります。

仕訳
(借)売掛金 120,000
 (貸)売上 120,000
(借)現金 20,000
 (貸)売掛金 20,000
★売上伝票
(借)売掛金 120,000
 (貸)売上 120,000
★入金伝票
(借)現金 20,000
 (貸)売掛金 20,000

 本問は上記のような流れで問題を解いていくことになりますが、解答用紙に起票すべき伝票や相手勘定科目が予め記入されていますので、伝票の書き方を正確に理解していない人でも正解にたどり着ける問題でした。

 日商簿記検定は問題用紙だけでなく解答用紙にもたくさんのヒントが散りばめられていますので、問題を解き始める前に「問題用紙のチェック→解答用紙のチェック」の2つを忘れずに行うようにしてください。

伝票会計のまとめ

 最後に、3伝票制と5伝票制の違いについて確認しておきます。3伝票制は、入金に関する取引を入金伝票で、出金に関する取引を出金伝票で、それら以外に関する取引を振替伝票で処理する方法です。3つの伝票を使いますので「3伝票制」と呼ばれています。

 なお、一部振替取引の処理方法としては、取引を分解する方法(本問)と取引を擬制する方法の2つがありますので、必ず両方の考え方・処理方法を押さえておいてください。

 一方、5伝票制は入金に関する取引は入金伝票で、出金伝票に関する取引は出金伝票で、それら以外に関する取引を振替伝票で処理する点は3伝票制と同じですが、これらに加えて、売上に関する取引を売上伝票で、仕入に関する取引を仕入伝票で処理する方法です。5つの伝票を使いますので「5伝票制」と呼ばれています。

 なお、5伝票制の売上伝票の相手勘定科目は売掛金、仕入伝票の相手勘定科目は買掛金で固定されていますので、きちんと頭の中に入れておいてください。

 最後に、伝票会計は下の画像2枚の内容を押さえていると応用が利きますから、よろしければ参考にしてください。

伝票会計のまとめノート1
伝票会計のまとめノート1
伝票会計のまとめノート2
伝票会計のまとめノート2

第5問 難度・分量ともに普通レベルの精算表作成問題!

第5問の難度アンケート結果

 第5問は、難度・分量ともに普通レベルの【精算表作成問題】でしたので、きちんと過去問対策をしていた方にとってはボーナス問題になりました。

 解答手順としては、決算整理事項の全ての仕訳を下書き用紙に書き出した上で、それらを集計して精算表の整理記入欄に反映させ、損益計算書と貸借対照表を完成させる流れが一番いいと思います。

 なお、決算整理事項のひとつひとつの取引については、いずれも基本的なものばかりなので特に言及することはありません。ただ、4番の「広告宣伝費の未払い」に関しては未払費用か未払金かで迷ってしまった方が多かったようですので、ここで考え方・処理方法を確認しておきます。

未払費用と未払金

 未払費用と未払金については「債務が確定しているかどうか」で判断するようにしてください。それではここで、「12月末日決算の企業が、7月1日に100,000円の借り入れを行った(借入期間1年、年利率4%、利息は元本返済時に支払うものとする)」という例題を使って、両者の違いを具体的に見ていきたいと思います。

7月1日の借入時の仕訳
(借)現金 100,000
 (貸)借入金 100,000
12月31日の決算整理仕訳
(借)支払利息 2,000
 (貸)未払利息 2,000
1月1日の再振替仕訳
(借)未払利息 2,000
 (貸)支払利息 2,000
6月30日の借入金返済時の仕訳
(借)借入金 100,000
(借)支払利息 4,000
 (貸)現金など 104,000

 ここまでは問題ないと思いますが、ここで仮に6月30日に支払利息4,000円が払えなかった場合を考えてみましょう。ここで貸方に未払金勘定を使うのは、債務が確定したにも関わらず、その支払いが行われていないからです。

6月30日に利息の支払が出来なかった場合の仕訳
(借)借入金 100,000
 (貸)現金など 100,000
(借)支払利息 4,000
 (貸)未払金 4,000

 つまり、債務が確定する6月29日以前に計上した未払い(ex.12月末の費用の見越し)については未払費用として処理し、債務が確定した6月30日以降の未払いについては未払金として処理することになります。

 ちなみに、「固定資産購入時の未払い」に未払金勘定を使って処理するのも同じことです。固定資産の場合、購入日に債務が確定することになりますから、「債務確定後の未払い→未払金勘定を使って処理」という流れになります。

 それでは最後に、上記の考え方を本問に当てはめて考えてみましょう。問題文に「商品の広告宣伝に係る請求書(12月分:50,000円)が決算直前に到着していた」とあり、当該12月分の未払いは12月31日に債務が確定していることになりますので、未払費用(未払広告宣伝費)勘定ではなく未払金勘定を使って仕訳を切ることになります。

【解答】広告宣伝費の未払いに係る仕訳
(借)広告宣伝費 50,000
 (貸)未払金 50,000

 あと、9番の「家賃の前払い」に関しても4番同様、正解率が芳しくないようなので、ここで考え方・処理方法を確認しておきたいと思います。

家賃の前払い

 費用の繰り延べに関する問題は、前年度末に切った仕訳まで遡って考えると分かりやすいです。

前年度末に切った費用の繰り延べの仕訳
(借)前払家賃 3か月分の家賃
 (貸)支払家賃 3か月分の家賃

 ちなみに、上記仕訳の金額部分に書かれている「3か月分の家賃」というのは、今年度の1月から3月末までの3か月間に期間按分された家賃を意味します。この時点では具体的な金額が分からないので「3か月分の家賃」としています。

【1月1日】今年度の期首に切った再振替仕訳
(借)支払家賃 3か月分の家賃
 (貸)前払家賃 3か月分の家賃

 上記の仕訳については期首に、前期末に切った費用繰り延べの仕訳の逆仕訳を切るだけなので特に問題ないと思います。では次に、3月末日と9月末日に切った仕訳を考えてみましょう。

【3月末日】半年分の家賃を支払った時の仕訳
(借)支払家賃 6か月分の家賃
 (貸)現金など 6か月分の家賃
【9月末日】半年分の家賃を支払った時の仕訳
(借)支払家賃 6か月分の家賃
 (貸)現金など 6か月分の家賃

 期中において、上記3本の仕訳を切っているところまではよろしいでしょうか?つまり、解答用紙の試算表に予め記載されている支払家賃1,800,000円というのは、3か月分の家賃+6か月分の家賃+6か月分の家賃=15か月分の家賃の金額ということになりますので、1,800,000円を15か月で割ると、1か月あたりの家賃が120,000円であることが分かります。

 1か月あたりの家賃を算定することが出来たら、最後に費用の繰り延べの仕訳を切ることになりますが、この仕訳の金額については今までのように「~か月分の家賃」という形ではなくて、1か月あたりの家賃を元に正しい金額を記入することが出来ますよね。具体的には3か月分の繰り延べを行いますので、1か月あたりの家賃が120,000円×3か月=360,000円ということになります。

【解答】決算整理事項である費用の繰り延べの仕訳
(借)前払家賃 360,000
 (貸)支払家賃 360,000

 この費用の繰り延べの仕訳を切ることによって、15か月分計上されていた「支払家賃」勘定が12か月分に訂正され、正しい金額が損益計算書に記入されることになります。

まとめ

全体的な難度に関するアンケート結果

 今回の試験はおおむね予想通りの出題で、しかも簡単な問題ばかりでしたので、きちんと勉強した人が順当に合格できる試験回だったと思います。合計試算表を残高試算表と勘違いして解答してしまった方は…ぜひ6月試験でリベンジしていただければと思います。

 日商簿記検定3級の勉強法については、「テキストと問題集を何度も繰り返し、ある程度力が付いてきたら過去問・予想問題を購入して典型論点の問題をこなしておく」という王道的なスタイルできちんと勉強すれば、普通に短期&1発合格できますので、奇をてらわずに地道に勉強するようにしてください。インプットよりもアウトプットに時間をかけてください。

 なお、過去問・予想問題を解く際には「必ず時間を計ってやること」「なるべく少ない下書きで正解が導き出せるように工夫すること」の以上2点に気をつけてください。

 計測したタイムは解答用紙に記入しておき、回数を重ねるごとに短縮できているかチェックするようにしてください。下書き用紙については捨てずに解答用紙に挟んでおき、前回のものと比べられるようにしておいてください。



ページの先頭へ