日商簿記検定3級 第125回総評(過去問分析)

第1問 今回も仕訳問題!過去問対策をきちんとやれば満点が取れるはずです!

 第1問は今回も【仕訳】問題でした。全体的な難度は少し高めだったかもしれませんが、5問とも過去に似たような形式の問題が出題されていましたので、過去問対策をきちんとやっていれば十分満点が狙える回だったと思います。それではまず、仕訳問題の解答手順をもう一度確認してから個々の問題を考えていきましょう。

  1. まずは勘定科目を見ずに頭の中で解答の仕訳をイメージする
  2. イメージした仕訳の勘定科目が問題文で列挙されているか確認する
  3. ない場合は代替できる勘定を探す(例・有価証券利息→受取利息など)
  4. 解答用紙に仕訳を書く
  5. 解答用紙の勘定科目と問題文で列挙されている勘定科目を再チェックする

 上記の解答手順は試験時にいきなりやろうと思っても無理ですので、練習時から基本的な解き方を常に心がけるようにしてください。


 問1仕入取引に関する問題は、【裏書手形に関する仕訳】【為替手形に関する仕訳】【掛け仕入に関する仕訳】の3つに分けて考えることをお勧めします。パッと見、ややこしそうな問題に見えますが、ひとつひとつの処理自体は難しくありませんので、落ち着いて取り組むようにしてください。

 問2資本の引き出しに関する問題は、問1と同様に、【営業用店舗の固定資産税】に関する部分と【事業主の所得税】に関する部分とに分けて考えることをお勧めします。税金に関する仕訳を切る際は、会社に対する税金なのか事業主に対する税金なのかを意識するようにしてください。

 事業主に対する税金を会社のお金で払った場合は資本の引き出しになりますので、借方に資本金勘定または引出金勘定を使って資本の減少(会社財産の流出)を認識することになります。

 問3仮受金・前受金に関する問題です。仮受金とは「なんのお金か分からないままとりあえず仮に受け取った場合に計上する勘定」で、前受金とは「なんのお金か分かっていて取引の前に受け取った場合に計上する勘定」です。

 本問では、何のお金か分からずに受け取っていますので、仮受金を使って処理していたと判断することが出来ます(まずは既に切られた仕訳をイメージしてください)。

 次に、仮受金として処理していた場合、相手勘定や入金された理由などが判明した時点で仮受金勘定から適正な勘定に振り替えることになりますので、仮受金を前受金と売掛金勘定に振り替えることになります。

 問4損益の振り替えに関する問題は、簿記一巡の流れをしっかり理解していないと解けない問題ですが、逆に理解している人にとってはこれほど簡単な問題はないと思います。

 具体的な解答手順としましては…収益総額と費用総額を損益勘定に振り替えると700,000円の借方残(=当期純損失の発生)になりますので、さらにこれを資本金勘定に振り替える仕訳を切ることになります。

 問5当座取引に手形取引を絡ませた問題です。当座取引の処理に関しては、【当座預金勘定と当座借越勘定を使う2勘定制】と【当座勘定のみを使う1勘定制】の2つが考えられますが、この分野は日商簿記検定3級の頻出論点ですので、どちらも必ず押さえるようにしてください。

第2問 商品有高帳を作成する問題でした!下書きの書き方を工夫しよう!

 第2問は【帳簿組織】からの出題でした。具体的な解き方としては「下書き用紙に5月中の取引の仕訳を切った上で、得意先元帳(売掛金元帳)と商品ボックスを作成・検証し、最後に解答用紙の商品有高帳を完成させる」という手順が良いと思います。まずは私が書いた下書き用紙をご覧ください。

第2問・帳簿組織の下書き
第2問・帳簿組織の下書き

①下書き用紙に5月中の取引の仕訳を切る

 まず、下書き用紙に5月中の取引の仕訳を切りますが、売掛金については人名勘定(神奈川商店とか千葉商店)を使って仕訳を切ると、後で集計するときに楽になりますのでお勧めです。

 私の下書きでは神奈川商店を「神」、千葉商店を「千」と書いて仕訳を切っています(わざわざ神奈川商店・千葉商店と書くのは時間の無駄になります)

②得意先元帳(売掛金元帳)と商品ボックスを作成・検証する

 本問は(3)で千葉商店勘定の月末残高が問われていますので、神奈川商店と千葉商店のT勘定を書いて月末残高を求めることになります。なお、神奈川商店に関しては問われていませんので、T勘定の作成・検証は省略しても構いません。

 商品ボックスに関しては、先入先出法を採用していることに注意してボックス内の金額を埋めていくことになります。なお、純売上高というのは総売上高から売上戻り・値引き・割戻を控除した金額になりますので、5月13日の売上値引500円の控除を忘れないように気をつけてください。

 もうひとつの売上総利益というのは純売上高から売上原価を差し引いた残額になりますので、先に算定した純売上高から商品ボックスの右上部分(売上原価)の金額を差し引いて算定することになります。

③解答用紙の商品有高帳を完成させる

 あとは商品有高帳の作成ルールに従って、解答用紙の商品有高帳を完成させるだけですが、売上値引・割戻に関しては売上の利益部分を差し引くものであり、仕入原価に変動はありませんので商品有高帳に記入してはいけません。

 商品有高帳作成問題の典型的な引っ掛け論点になりますので、間違えてしまった方はきちんと復習しておいてください。

第3問 大方の予想に反して、財務諸表作成問題が出題されました!

 第3問は【財務諸表作成問題】でした。ほとんどの専門学校や簿記検定ナビでは試算表作成問題を予想していましたので面食らってしまった方も多かったと思いますが、問題自体は非常に簡単なものでした。日商簿記検定では、このように意表をつく問題がたまに出題されますが、その時はまず気持ちを落ち着かせて、部分点を積み重ねていくスタンスで粘り強く取り組むようにしてください。

 下の画像は、管理人が問題を解く際に実際に書いた下書きです。まず、商品ボックスに関してですが、問題文の決算整理後残高試算表の仕入勘定が売上原価の金額を表していることに注意してください。これを当期商品仕入高と勘違いしてしまうと、補足資料3の「当期の純仕入高は790,000円だった」という部分と不整合になり、正しい期末商品棚卸高の金額を算定することが出来なくなってしまいます。

  • 決算整理前残高試算表の繰越商品勘定…期商品棚卸高(商品ボックスの左上)
  • 決算整理前残高試算表の繰越商品勘定…期商品棚卸高(商品ボックスの右下)
  • 決算整理前残高試算表の仕入勘定…当期商品仕入高(商品ボックスの左下)
  • 決算整理前残高試算表の仕入勘定…売上原価(商品ボックスの右上)
第3問・財務諸表作成問題の下書き
第3問・財務諸表作成問題の下書き

 減価償却に関しては、まず数直線を引いて購入時から期首までの年数を数えてください(建物は8年、備品は6年ということが分かります)次に、建物と備品の1年当たりの減価償却費を算定し、当期首時点の減価償却累計額の金額を算定します。

  • 建物の1年当たりの減価償却費:2,000,000円×0.9÷25年=72,000円
  • 建物の当期首時点の減価償却累計額の金額:1年当たりの減価償却費72,000円×8年=576,000円
  • 備品の1年当たりの減価償却費:500,000円×0.9÷10年=45,000円
  • 備品の当期首時点の減価償却累計額の金額:1年当たりの減価償却費45,000円×6年=270,000円

 最後に、当期首時点の減価償却累計額に当期の減価償却費を加算して、当期末の減価償却累計額を算定します。なお、貸借対照表の減価償却累計額の部分が空欄になっていますが、「建物減価償却累計額」や「備品減価償却累計額」と書かずに「減価償却累計額」と書くようにしてください。

第4問 現金過不足に関する問題でした。国債利札の取り扱いがカギです!

 第4問は現金過不足に関する【仕訳問題】でしたが、本問は「何を現金として取り扱うのか?」「国債の利札をどうやって処理するのか?」の2点がポイントになります。

何を現金として取り扱うのか?

 結論から言いますと、紙幣・硬貨・送金小切手・他店振り出しの小切手・A社からの配当金領収書期限が既に到来した国債の利札の6つを簿記上では現金として取り扱うことになります。

 まず、紙幣・硬貨に関しては特に問題ないと思います。送金小切手に関しては、重要性が高いものではありませんので「郵送されてきた他店振り出しの小切手」と理解しておけばOKです。他店振り出しの小切手と同様に現金として処理してください。

 次に、配当金領収書ですが…これは、保有先の会社から「うちの株式を保有してくれてありがとう。今期も配当金を出すから、銀行にこれを持って行って現金に換えてね。」という感じで送られてくるもので、銀行などの金融機関に持っていけばいつでも現金化出来ますので簿記上では現金として取り扱うことになります。

国債の利札をどうやって処理するのか?

 私も含め、国債の実物を見たことがある方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、国債にはクーポン形式の利札がくっついています。イメージとしては、ホットペッパーの割引クーポンみたいなものを思い浮かべてください。

 「×1年6月末日以降になったら利息を現金で払ってあげるから金融機関の窓口に持っておいで」「×1年12月末日以降になったら利息を現金で払ってあげるから金融機関の窓口に持っておいで」「×2年6月末日以降になったら利息を現金で払ってあげるから金融機関の窓口に持っておいで」…といった感じで、満期日分までの利札がずらーっとくっついているわけです。

 つまり、期日がすでに到来しているのに手元に残っている国債の利札は、国債の本体から切り離して銀行などの金融機関に持っていけばいつでも現金化出来ますので、簿記上では現金として取り扱うことになります。

 一方、期日が到来していない国債の利札は、銀行に持って行っても「今日は×2年10月末日だよっ!×2年12月末日分の利札に関しては現金化できないよっ!あんた、ルーピーだなぁ!!」と言われてしまうだけですので、現金として取り扱うことは出来ないのです。

 なお、下の画像は戦前の利札付き債券だそうです。現在の国債の利札と同じように、利札の一部が切り取られて現金化されていることがお分かりいただけると思います。

戦前の利札付き債券
戦前の利札付き債券

おまけ:その他のものはどんな勘定で処理するのか?

 最後に、現金として取り扱わなかったものについて、どのように処理するのかまとめておきますので、復習の際に簡単にチェックしておいてください。

  • 自店振り出しの小切手:当座預金の減少として処理
  • 他店振り出しの約束手形:受取手形の増加として処理
  • 他店振り出しの為替手形:受取手形の増加として処理
  • 他店発行の商品券:他店商品券の増加として処理
  • 自店発行の商品券:商品券の増加として処理
  • 郵便切手・収入印紙:決算期末に貯蔵品に振り替え
  • 国債:有価証券などの増加として処理(問題による)
  • 期日が到来していない国債の利札:現時点ではただの紙だから放置

 最後に1点だけ…「決算時に現金の過不足が判明した場合、現金過不足勘定を経由せずに仕訳を切るのではないですか?」という質問を何人かの方からいただきましたが、本問は問題文に「残額は原因不明のため、雑損または雑益に振り替える」という指示がありますので、(2)の時点(現金の過不足が判明した時点)では、現金過不足勘定を使って処理することになります。

 本問は、明確な指示がないので戸惑ってしまった方もいらっしゃったと思いますが、(2)で現金過不足勘定を使って仕訳を切っておかないと、(3)で「振り替える」ことが出来ませんので、あえて現金過不足勘定を経由させて処理する点に注意してください。

第5問 スタンダードな精算表作成問題。満点を狙える問題です!

 第5問は【精算表作成問題】でした。決算整理事項も簡単なものばかりですので、過去問対策をきちんとやっていれば満点近くの点数が取れると思います。

 決算整理事項(2)から、解答用紙の勘定科目の空欄に「前受金勘定」が入ることを導きだすのと、決算整理事項(9)の消耗品の処理に関して、解答用紙の「消耗品」という勘定科目から購入時に資産計上していたことが分かりますので、決算にあたり当期費消分を消耗品費勘定に振り替える…この2点に気をつければ、あとは特に問題なかったと思います。

まとめ

 今回の試験は、第3問が試算表作成問題ではなく財務諸表作成問題だったこと、第4問の国債の利札の処理が市販のテキストなどであまり触れられていなかったことから、全体的な出来はあまり良くなさそうですが、第2問の帳簿組織に関する問題や第5問の精算表作成問題に関しては、過去に何度も出題されている形式の問題でしたので、過去問対策をきちんとやっていれば高得点が取れたはずです。

 合格率に関しては、前回が18.8%と近年稀にみる低さだったのに対して、今回は30%前後の数字になるような気がします(注:総評作成時点ではまだ公表されていません)。

 受験する回によって合格率が倍近く違うというのはちょっとどうかと思いますが、こればっかりはどうすることも出来ませんので、どんな問題が出ても対応できるような実力をつけておく必要があります。

 勉強法についてですが、「テキストと問題集を何度も繰り返し、ある程度力が付いてきたら過去問・予想問題集を購入して典型論点の問題をこなしておく」という王道的なスタイルできちんと勉強すれば、合格可能性が飛躍的に上がると思います。

 なお、過去問を解く際には「必ず時間を計ってやること」「なるべく少ない下書きで正解が導き出せるように工夫すること」の以上2点に気をつけてください。

 計測したタイムは解答用紙に記入しておき、回数を重ねるごとに短縮できているかチェックするようにしてください。下書き用紙については捨てずに解答用紙に挟んでおき、前回のものと比べられるようにしておいてください。

 あと、第1問の仕訳問題の過去問類題は、簿記3級・仕訳問題対策に詳しくまとめてありますので、興味のある方はぜひご覧ください。



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