日商簿記検定2級 第125回総評(過去問分析)

第1問 今回もやっぱり仕訳問題!問1と問4がちょっと曲者でした。

 第1問は今回もスタンダードな【仕訳】問題でしたが、ひとつひとつの問題を考えていく前に、基本的な解き方をもう一度確認してください。

  1. まずは勘定科目を見ずに頭の中で解答の仕訳をイメージする
  2. イメージした仕訳の勘定科目が問題文で列挙されているか確認する
  3. ない場合は代替できる勘定を探す(例・火災未決算→未決算など)
  4. 解答用紙に仕訳を書く
  5. 解答用紙の勘定科目と問題文で列挙されている勘定科目を再チェックする

 第126回試験以降も、第124回試験の「現金預金」勘定のように意表をついた勘定科目で答えさせられる可能性がありますし、上記の解答手順は試験時にいきなりやろうと思っても無理ですので、練習時から基本的な解き方を常に心がけるようにしてください。


 問1役員賞与に関する問題は、「株主総会において承認を受ける場合」と「株主総会において承認を受けない場合」の2パターンを意識して仕訳を切ることが出来たかどうかがカギとなります。

 株主総会において承認を受ける場合は、見積時に役員賞与引当金を計上しておいて、株主総会において承認された時点で役員賞与引当金を確定債務である未払役員賞与に振り替えます。

 一方、株主総会において承認を受けない場合は、見積時に債務が確定することになりますので、役員賞与引当金を経由すること無くそのまま未払役員賞与を計上することになります。本問は前者になりますので、役員賞与引当金勘定を使って仕訳を切ることになります。

 問2有価証券の売却に関する問題は、「有価証券利息を受け取った仕訳」と「売買目的有価証券を売却した仕訳」を分けて考えることをおすすめします。

 「保有社債の半分を売却した」という指示と、「売買目的有価証券の会計処理方法として、時価法(切り放し法)を採用している」という指示を見落とさないように注意してください。

 問3銀行勘定調整表に関する問題は、第1問の仕訳問題だけでなく第3問・第5問の総合問題での出題も考えられますので、中でも頻出論点である未渡小切手については必ず出来るようにしておいてください。

 未渡小切手の処理方法については、「未渡小切手の対象が買掛金なら買掛金勘定を使って処理、買掛金以外なら未払金勘定を使って処理する」と覚えてしまいましょう。

 問4固定資産の購入に関する問題は、「割戻額150,000円を控除」という部分をきちんと処理できるかどうかがカギになりますが、取得原価=購入代価-割戻額という算定式が分かっている方にとってはボーナス問題になりました。

 割戻分について、仕入割引勘定や仕入勘定を貸方に計上した方が結構いらっしゃったようですが、固定資産の購入や売却時に両勘定を使って仕訳を切ることはありませんので、もう一度勘定の意味を確認しておいてください。

 問5特殊商品売買の受託販売に関する問題は、第114回の問5とほとんど同じような問題でしたので、きちんと過去問対策をしていた方にとってはボーナス問題になったはずです。なお、本問は「売上に関する仕訳」と「手数料に関する仕訳」を分けて考えていくことをおすすめします。

第2問 普通仕訳帳と特殊仕訳帳を基に、残高試算表を作成する問題でした!

 第2問は【帳簿組織】からの出題でした。具体的な解き方としては、平成22年1月中の普通仕訳帳&特殊仕訳帳に記入された取引の仕訳を下書き用紙に全部書き出して、次に二重仕訳部分を除外する作業をしたうえで、除外されずに残ったものを集計して解答用紙の残高試算表に書き込んでいきます。

第2問・帳簿組織の下書き1
第2問・帳簿組織の下書き1

①全ての仕訳を(下書き用紙に)切る

 まず、下書き用紙を横長の状態にして4つの区分に区切ってください。左から【普通仕訳帳に記入された仕訳】【当座預金出納帳に記入された仕訳】【仕入帳および売上帳に記入された仕訳】【受取手形記入帳および仕入手形記入帳に記入された仕訳】という順番になります。

第2問・帳簿組織の下書き2
第2問・帳簿組織の下書き2

 次に、普通仕訳帳と特殊仕訳帳に記入された取引の仕訳を下書き用紙に全て書き出しますが、この際にいくつかルールがありますので、それを守って書き出してみてください。ルールは以下の通りです。

  1. 特殊仕訳帳(本問では当座預金出納帳・売上帳・仕入帳・受取手形記入帳・支払手形記入帳)に記入される仕訳のうち、普通仕訳帳を通さずに総勘定元帳に個別転記する勘定についてはアンダーラインを付す。これは個別転記分と合計転記分を分けて解答する問題に対応するためのルールですが、本問のように分類する必要のない簡単な問題でもきちんと分類するクセをつけておくと、帳簿組織に関する理解も深まりますし、上位資格の勉強をする際にも役に立ちます。
  2. 普通仕訳帳と特殊仕訳帳に記入される仕訳のうち、他の特殊仕訳帳の親勘定となる勘定については二重仕訳を回避するために()で括る。一部当座取引の二重仕訳となる勘定も同じく()で括る
  3. 仕訳を書き出していく際には、諸口勘定を使わずに、内訳をきちんと書く。本問ですと、当座預金出納帳の借方の備品・借入金、貸方の備品・支払家賃・給料のことです。

 上記のルールに沿って書き出していくと、冒頭で紹介した私の下書きが出来上がるはずです。なお、1月20日の「備品の売却」に関する仕訳は一部当座取引に該当しますので、見落とさないように注意してください。

 なお、一部当座取引の記帳方法に関しては、「取引を分解する方法」や「取引を擬制する方法」や「取引全体を普通仕訳帳に記帳する方法」などがありますが、受験簿記では十中八九、二重仕訳が生じる「取引全体を普通仕訳帳に記帳する方法」で出題されますので、考え方や処理方法を必ずマスターしておいてください。

②二重仕訳を把握する

 下書き用紙に仕訳を切ったら、次は二重仕訳を把握するための作業を行うことになります。私の場合は、下書き用紙右側部分のような図を書いて二重仕訳を把握するようにしていますが、正確に二重仕訳を把握できる方法であれば、もちろん他の方法でも構いません。

 普通仕訳帳と当座預金出納帳に関する二重仕訳(本問では80,000円の部分)を忘れてしまう人が多いですので、拾い漏れの無いように細心の注意を払うようにしてください。

③二重仕訳を除外する

 ②で把握した二重仕訳を除外する作業を行います。例えば、仕入帳と支払手形記入帳にまたがって二重仕訳されている金額は35,000円ですので、集計しないように【仕入帳の支払手形勘定】と【支払手形記入帳の仕入勘定】をカッコで囲んで目立たせておきます。

 なお、この作業に関しては「①全ての仕訳を(下書き用紙に)切る」ときにまとめて行っても構いません…と言いますか、まとめて処理しておいて集計前のこの段階でもう一度見直すほうが、見落としや勘違いなどのケアレスミスが少なくなるのでおすすめです(管理人もそうしています)

④残ったもの(カッコで囲まれなかった勘定)を集計する

 最後に、カッコで囲まれなかった勘定を集計して残高試算表に金額を記入していきます。この作業に関しては、ひたすら集計していくだけですのでテクニカルなポイントはありませんが、集計した勘定には必ず打ち消し線を引くなどといった自己ルールを決めて、拾い漏れの無いようにしてください。

第3問 いたって普通レベルの本支店会計の問題。満点を取らなきゃいけません!

 第3問は【本支店会計】からの出題でしたが、期首の内部利益の金額も与えられていましたし、棚卸減耗も発生していないケースの簡単な問題でしたので、きちんと対策をしていた方にとってはボーナス問題になりました。

 日商簿記検定2級で出題される本支店会計の問題は、下書きを定型化して数字を当てはめていくという作業だけで高得点が狙えます。下に管理人が問題を解く際に実際に書いた下書きを載せておきますので、本支店会計が苦手な方は参考にして問題を解いてみてください。

第3問・本支店会計の下書き
第3問・本支店会計の下書き

 では、下書き作成の流れを簡単に説明していきます。まず「本店の支店勘定」と「支店の本店勘定」、「本店の支店へ売上勘定」と「支店の本店より仕入勘定」の残高金額を一致させるために未達取引の処理を行ないます。

 次に、本店と支店の商品の流れをBOXを使って把握…したいところですが、その前に商品の流れを確認する作業を行ってください。私の下書きのように簡単な図を書いておくと良いと思います。

 商品の流れを確認する作業が終わったら、本店と支店のBOXを書いて金額の分かるところからどんどん埋めていきます。支店の期首・期末の上下にある四角の部分には内部利益の金額を書いてください。

 全て埋め終わったら、(Ⅲ)期末修正事項の処理を行う前に損益計算書の「期首商品棚卸高」「当期商品仕入高」「売上高」「期末商品棚卸高」、貸借対照表の「商品」の金額を解答用紙に書き込んでください。

  • 期首商品棚卸高…153,000円+112,000円-16,000円=249,000円
  • 当期商品仕入高…3,196,000円+390,000円=3,586,000円
  • 売上高…2,520,000円+2,125,000円=4,645,000円
  • 期末商品棚卸高…102,000円+226,500円-37,500円=291,000円
  • 商品…291,000円

 「期首商品棚卸高」と「期末商品棚卸高」に関しては、内部利益を控除することを忘れないようにしてください。また、「当期商品仕入高」と「売上高」に関しては、外部仕入高と外部売上高のみを集計し、内部取引(支店売上=本店仕入)を考慮しないように気をつけてください。

 貸借対照表の「商品」に関しては、期末実地棚卸高の金額が入るのですが、本問は棚卸減耗などがありませんので「期末帳簿棚卸高=期末実地棚卸高」になりますので、損益計算書の期末帳簿棚卸高と同じ金額ということになります。

 以上で商品関係の処理が終わりますので、あとは(Ⅲ)期末修正事項の処理を行うだけです。こちらに関しては特に問題はないと思います。

 なお、本支店会計の具体的な下書きの書き方については、第117回日商簿記検定の2級総評にも詳しく載せてありますので、そちらのほうも参考にしてみてください。日商簿記検定2級の本支店会計対策は、下書き用紙の書き方をマスターして過去問を何回も繰り返すだけです。本当にこれだけです。

第4問 費目別計算の仕訳問題でした。与えられた勘定しか使っちゃダメ!

 第4問は【費目別計算】の仕訳問題でしたが、本問のように問題文で勘定が指定されている場合は、それ以外の勘定を使った時点で不正解となりますので気をつけてください。なお、問題の難度は普通レベルですので、高得点を狙いたいところです。以下に、各問の注意点などをまとめておきます。

  1. 素材2,000,000円と補修用材料100,000円の合計2,100,000円を材料として処理するだけです。
  2. 先入先出法を採用しているので、消費した素材3,500個のうち1,200個については月初分の単価(@400円)を使って、残りの2,300個については①で購入した素材の単価(@500円)を使って消費額を算定します。
  3. 直接工の直接作業時間分は仕掛品勘定へ、間接作業時間分は製造間接費勘定へ振り替えます。なお、問題で与えられている勘定は「賃金・給料」勘定ですので、勝手に「賃金給料」勘定などに脳内変換しないように注意してください。
  4. 間接工の作業分については、BOXなどを使って要支払額(900,000円+180,000円-140,000円=940,000円)を算定し、製造間接費勘定に振り替えることになります。前月未払高と当月未払高を逆にして計算しないように気をつけてください。
  5. 製造間接費予定配賦率を算定(43,200,000円÷10,800時間=4,000円/時間)し、直接作業時間(803時間)を掛けあわせるだけです。
  6. 予定(3,212,000円)よりも実際(3,400,000円)のほうが多かったということは、借方差異(不利差異)が発生していることになりますので、仕訳の借方に「製造間接費配賦差異」を計上することになります。借方・貸方を逆に書かないように気をつけてください。

 問2の製造間接費配賦差異の原因別分析に関しては、毎度おなじみのシュラッター図を書いて算定するだけです。ただ一点だけ注意していただきたいのは問題文のなお書き部分の指示です。

 「借方・貸方のいずれかを○で囲むこと」とありますが、問題文をきちんと読まずに勝手にチェックマークを付したり、訂正線で使わないほうを消したりする方が必ずいらっしゃいますので、必ず問題文の指示に従って処理するようにしてください。

第5問 単純総合原価計算から出題されました。包装材Tの取り扱いがカギ!

 第5問は【単純総合原価計算】からの出題でした。本問は包装材Tの取り扱いがカギになりますが、問題文の「素材Mを工程の始点で投入し、工程の終点で検査したのち、合格品のみを包装材Tを用いて5個単位で箱詰め梱包している」から、包装材Tに関してはBOXの計算には関係しないと判断出来れば、実はものすごく簡単な問題です。

 具体的な解答手順としては、まず包装材Tを無視して材料費と加工費の月末仕掛品原価と完成品総合原価をBOXを使って算定しますが、正常仕損費は完成品のみ負担であること、月末仕掛品原価の計算方法は先入先出法であることの2点に注意するだけで、この部分については特に問題ないと思います。

 次に、完成品総合原価に包装材Tを加味することになりますが、包装材Tは工程の終点で検査したのち、合格品のみを包装するのに使っているだけですから、答案用紙で予め与えられた当月投入額186,400円の全額が完成品総合原価となり、月末仕掛品原価を構成しない点に気をつけてください。

 下に管理人が問題を解く際に実際に書いた下書きを載せておきますので、よろしければ復習の際にご覧ください。

第5問・単純総合原価計算の下書き
第5問・単純総合原価計算の下書き

まとめ

 今回の試験は予想が難しい回でしたが、実際に問題を解いてみると全体的に簡単な問題が多かったように感じました。

 前回試験の「現金預金」勘定のようなひっかけもありませんでしたし、第2問・第3問あたりは過去に何度も出題されている形式の問題でしたので、過去問対策をきちんとやっていた方にとってはラッキーな回だったと思います。

 合格率に関しては、前回が12.4%と近年稀にみる低さだったのに対して、今回は30%台後半以上の数字になるような気がします(注:総評作成時点ではまだ公表されていません)。

 受験する回によって合格率が3倍前後違うというのはちょっとどうかと思いますが、こればっかりはどうすることも出来ませんので、どんな問題が出ても対応できるような実力をつけておく必要があります。

 勉強法についてですが、「テキストと問題集を何度も繰り返し、ある程度力が付いてきたら過去問・予想問題集を購入して典型論点の問題をこなしておく」という王道的なスタイルできちんと勉強すれば、合格可能性が飛躍的に上がると思います。

 第2問の帳簿組織や第3問の本支店会計の問題については、本問を使って下書き用紙の書き方をマスターすることをおすすめします。

 なお、過去問を解く際には「必ず時間を計ってやること」「なるべく少ない下書きで正解が導き出せるように工夫すること」の以上2点に気をつけてください。

 計測したタイムは解答用紙に記入しておき、回数を重ねるごとに短縮できているかチェックするようにしてください。下書き用紙については捨てずに解答用紙に挟んでおき、前回のものと比べられるようにしておいてください。

 あと、第1問の仕訳問題の過去問類題は、簿記2級・仕訳問題対策に詳しくまとめてありますので、興味のある方はぜひご覧ください。



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