日商簿記検定3級 第123回総評(過去問分析)

第1問 仕訳問題はとにかく過去問対策!過去問対策!過去問対策!

 第1問は今回もスタンダードな【仕訳】問題でした。第5問の「売上戻り&自家消費」以外はスタンダードな問題でしたので、4問以上(16点以上)の正解が欲しいところです。なお、各問題の詳しい解説は仕訳問題対策に掲載しておりますので、そちらの方もご覧ください(問1問2問3問4問5


 問1の仕入取引に関する問題は、【為替手形に関する仕訳】と【約束手形に関する仕訳】に分けて考えることをおすすめします。

 特為替手形の権利関係は苦手にされる方が多い論点ですので、まずは日商簿記検定と語呂暗記のページの、為替手形の権利関係をまとめた語呂を覚えるようにしてください。この語呂は簿記2級以上の勉強をする際にもかなり役に立ちます。

 問2の現金過不足に関する問題は、日商簿記検定3級でよく問われる「現金過不足勘定を雑益または雑損に振り替える仕訳」ではなく、その前段階の仕訳(現金過不足勘定を計上する仕訳)を問う問題ですので、間違えないように気をつけてください。

 現金過不足に関する問題はパターン化されていますので、以下の手順に当てはめて機械的に仕訳を導き出すようにしてください。

  1. 期中に現金の過不足が判明した場合(帳簿残高≠実際有高)、とりあえず現金過不足勘定で一時的に処理する
  2. 理由が判明したものについてはその勘定科目に振り替える
  3. 最終的に原因が特定できなかったものについては決算整理仕訳で雑益または雑損に振り替える

 問3の固定資産の購入と消耗品に関する問題でしたが、固定資産の購入に関しては「不可避的に発生した費用(付随費用)を取得原価に含めて計算する」という点と、消耗品に関しては「資産処理するのか費用処理するのか」という点がポイントになります。

 ただ、過去に何度も聞かれている論点ですので、過去問対策をきちんとやっている方にとってはボーナス問題になったと思います。

 問4の有価証券の売却に関する問題は、購入時の購入手数料を取得原価に含める点だけに気をつければ、後は特に問題ないと思います。問3と同様に絶対に落としてはいけない問題です。

 問5の売上戻り・自家消費に関する問題はやや難度が高く、特に自家消費に関する仕訳が導き出せなかった方が多かったようです。第124回以降の受験を考えていらっしゃる方で、どうしても仕訳の意味を理解できないという方は、この論点に関しては思い切って「切る」という選択肢もありだと思います。


 第1問の仕訳問題は、過去問と似たような問題が繰り返し出題される傾向にあり、今後もこの傾向は続いていくものと考えられますので、必ず過去問対策を行うようにしてください。

 簿記検定ナビでは、仕訳問題対策ページで仕訳問題の過去問類題をたくさんご用意しておりますので、ぜひ過去問対策用の教材としてご利用ください。

第2問 予想通り帳簿組織でした!解き始める前に問題文をよく読もう!!

 第2問は、予想通り【帳簿組織】に関する問題でした。具体的には、当座預金出納帳と買掛金明細表を作成し、売掛金勘定の期末残高を計算させる問題でした。問われている取引自体は簡単なものでしたので、あとはいかに早く処理できたかどうかがポイントになります。

 解答手順としましては…まずは下書き用紙に売掛金、買掛金(岐阜商店)、買掛金(津商店)、当座預金の4つについてT勘定を設定し、各勘定に10月の仕訳を反映させたあと、解答用紙に移記していくという手順がおすすめです。

 本問は、買掛金については明細表を作成する必要がありますので、各商店ごと(岐阜商店・津商店)に買掛金の増減を把握する必要があり、別々のT勘定を設定する必要がありますが、売掛金については期末残高の金額を問われているだけですので、各商店ごとに把握する必要はなく、通常通り1つのT勘定を設定して期末残高を算定することになります。

 ここで仮に、何も考えずに下書きを書いた場合に考えられるのは…買掛金勘定を1つしか設定せずに金額を算定し、解答用紙に記入する段階になってようやく、各商店ごとの増減を把握する必要があることに気付くことになり、結果として大きなタイムロスになってしまうケースです。

 帳簿組織の問題を解く場合は「何の金額を問われているのか、さらに過程を問われているのか結果を問われているのか」ということを意識して問題文・解答用紙をチェックするようにしてください。

 下の画像は、管理人が問題を解いた際に書いた下書き用紙になりますので、興味のある方はご覧ください。今回の帳簿組織の問題はこれだけの下書きで10点満点が取れる問題です。

第2問・帳簿組織の下書き
第2問・帳簿組織の下書き

第3問 いつも通りの試算表作成問題。T勘定を使って効率的に解答しよう!

 第3問は今回も【試算表】の出題でした。平成21年9月30日の残高試算表に、平成21年10月の月中取引を反映させて、平成21年10月末の残高試算表を完成させる問題でした。質・量ともに過去に出題された精算表作成問題と大差はありませんでしたので、きちんと過去問対策していれば満点が狙える問題でした。

 日商簿記検定3級の試算表作成の問題は、下書き用紙に仕訳を全部書き出した上で集計する方法でも良いのですが、短時間で効率よく解くためにはT勘定を使った解答方法をマスターしていただくのが一番です。頻出勘定(仕訳によく出てくる勘定)についてT勘定を設定し、その他の勘定については問題文で与えられている残高試算表の両端の余白に書き込んだり、解答用紙に直接書き込んでいく方法です。

T勘定に設定すべき勘定を考えてみよう

  • 必ず設定すべきT勘定:当座預金勘定、売掛金勘定、買掛金勘定、受取手形勘定、支払手形勘定、売上勘定、仕入勘定
  • 各自、必要に応じて設定するT勘定:前受金勘定、前払金勘定など

 それでは、解答手順について詳しく見ていきましょう。

 まず下書き用紙にT勘定を設定し、問題文(A)で与えられている残高試算表の数字をT勘定に反映(期首残高に金額を記入)させた後は、問題文(B)の各取引の仕訳を頭の中で切って、T勘定を設定している勘定についてはT勘定に、設定していないものについては、問題文(A)の残高試算表の両端の余白または解答用紙に直接記入していくことになります。

 次に、問題文(B)の各取引を全て反映させたら、下書き用紙のT勘定を締め切り、各T勘定の残高を解答用紙に移記していきます。同様に、T勘定を設定していない勘定で、問題文(A)の残高試算表の両端の余白に書いていたものも忘れずに解答用紙に移記してください。

 下の画像は、管理人が実際に書いた下書き用紙ですので、興味のある方はご覧になってください。日商簿記検定3級の第3問の試算表作成の問題は毎回時間との勝負になりますので、必ずT勘定を使った方法で解けるように練習しておいてください。

第3問・試算表作成問題の下書き
第3問・試算表作成問題の下書き

第4問 またもや伝票会計!問題文の指示に従って解答しよう!

 第4問は【伝票会計】の問題でした。非常に簡単な問題ですので、確実に10点満点を取りたい問題です。具体的な解答方法は、各取引の仕訳を明らかにした上で、それを伝票に起票し直すという形で問題ないと思います。


 まず(1)の取引ですが、問題文に「新潟商店は5伝票制を採用しており、一部振替取引については、いったん全額を売上伝票に掛け売上として起票し、掛け代金を直ちに現金で回収したとして入金伝票に起票する方法を採っている」とありますので、米沢商店振出しの小切手で受け取った200,000円に関しては、いったん売掛金勘定の増加を認識した上で、同額を現金勘定に振り替える仕訳を切ることになります。

商品販売時の仕訳
(借)売掛金 700,000
 (貸)売上 700,000
(借)現金 200,000
 (貸)売掛金 200,000
(借)発送費 5,000
 (貸)現金 5,000

 下書き用紙に上記のような仕訳を切った後、それぞれの仕訳が5伝票(入金伝票・出金伝票・振替伝票・売上伝票・仕入伝票)のうち、どの伝票に起票されるのか考えるだけです。

売上伝票
(借)売掛金 700,000
 (貸)売上 700,000
入金伝票
(借)現金 200,000
 (貸)売掛金 200,000
出金伝票
(借)発送費 5,000
 (貸)現金 5,000

 (2)も(1)と同様の手順で考えていきますが、問題文に「仙台商店は、一部振替取引について、取引を分解して出金部分を出金伝票に起票し、それ以外の部分は振替伝票に起票する方法を採っている」とありますので、当座振り出し分と現金支払い分とに分けて仕訳を切ります。

土地購入時の仕訳
(借)土地 1,200,000
 (貸)当座預金 1,200,000
(借)土地 36,000
 (貸)現金 36,000

 本問は上記のような流れで問題を解いていくことになりますが、解答用紙に起票すべき伝票が予め書かれていますので、伝票の書き方を正確に理解していない人でも正解にたどり着ける問題でした。日商簿記検定は問題用紙だけでなく解答用紙にもたくさんのヒントが散りばめられていますので、問題を解き始める前に「問題用紙のチェック→解答用紙のチェック」の2つを忘れずに行うようにしてください。

伝票会計のまとめ

 最後に、3伝票制と5伝票制の違いについて確認しておきます。3伝票制は、入金に関する取引を入金伝票で、出金に関する取引を出金伝票で、それら以外に関する取引を振替伝票で処理する方法です。

 3つの伝票を使うので、3伝票制と呼ばれています。

 一方、5伝票制は入金に関する取引は入金伝票で、出金伝票に関する取引は出金伝票で処理する点は3伝票制と同じですが、これらに加えて、売上に関する取引を売上伝票で、仕入に関する取引を仕入伝票で処理し、それら以外に関する取引を振替伝票で処理する方法です。

 5つの伝票を使うので、5伝票制と呼ばれています。

 では、(2)が仮に5伝票制を採用していた場合の解答は、3伝票制を採用していた場合と異なるでしょうか?答えは…解答は同じです。なぜなら(2)は土地の購入に関する取引で、売上や仕入に関する取引ではないからです。3伝票制と5伝票制で解答が異なるのは、売上や仕入に関する取引がある場合のみです。

 最後に、伝票会計は下の画像2枚の内容を押さえていると応用が利きますから、よろしければ参考にしてください。

伝票会計のまとめノート1
伝票会計のまとめノート1
伝票会計のまとめノート2
伝票会計のまとめノート2

第5問 精算表の推定問題。過去問対策をやっていれば満点が狙える問題!

 第5問は【精算表の推定】に関する問題でした。精算表の推定問題は、直近では第119回の日商簿記検定3級の第5問で出題されており、質・量ともにほとんど同じような感じでしたので、しっかり過去問対策をしていた方は満点(30点)を取れたのではないでしょうか。

 では早速、具体的な問題の解き方について考えていきますが、基本的には分かるところからどんどん埋めていくだけです。

 ただし、例えば、備品減価償却累計額は540,000-432,000=108,000と計算しますが、備品減価償却累計額の修正記入欄の貸方に108,000と記入すると同時に、減価償却費の修正記入欄の借方に108,000と記入し、さらに損益計算書欄にも同額を記入するようにしてください。

 つまり、1つの取引(上の場合は「減価償却」)に関する仕訳をひとまとめにして処理するということです。

 同様に、【繰越商品→仕入】【未払給料→給料】【前払保険料→保険料】【消耗品→消耗品費】【売買目的有価証券→有価証券評価益】【支払利息→前払利息】【前受手数料→受取手数料】【受取利息→未収利息】もひとまとめにして処理します。

 なお本問は、慣れてきたら(力が付いてきたら)下書き用紙に仕訳を切らずに解くことも可能です。精算表の推定問題はパズルのようなものですので、仕訳を頭の中でイメージして空欄をどんどん埋めていきます。

 例えば【繰越商品→仕入】の場合は、まず貸借対照表に計上されている繰越商品の金額が416,000円なので、修正記入欄の借方に416,000円を記入し、同時に仕入勘定の修正記入欄の貸方に同額の416,000円と記入します。

 すると仕入勘定の修正記入欄の借方が貸借差額で算定できますので、借方に431,000円と記入すると同時に、繰越商品勘定の修正記入欄の貸方に431,000円と記入する…といった感じです。

 最後に、少しテクニカルな話しになりますが…本問においては「売上」と「資本金」を貸借差額で算定することになりますが、「資本金」の金額はほとんどの場合、キリの良い金額(本問では1,500,000円)になりますので、「キリの良い金額→合っている可能性が高い、キリの悪い金額→間違っている可能性が高い」ということを頭の片隅にでも入れておいてください。

まとめ

 第123回日商簿記検定3級の問題は過去問に類似した問題が多く、合格率も49.5%とかなり高い数字になりました。

 第1問の仕訳問題の問5などは少し難しい問題でしたが、本試験においてどうしても分からない問題に遭遇した場合は、割り切って「捨てる」勇気も必要になってきます。

 ムキになってひとつの問題にはまってしまうと、致命的なタイムロスにつながりかねませんので、練習段階から意識するようにしてください。



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