日商簿記検定3級 第120回総評(過去問分析)

第1問 仕訳問題は過去問対策をしっかりやれば満点が取れます!

 第1問は今回もスタンダードな【仕訳】問題でした。問1は手形の裏書譲渡に関する問題、問2は商品券の授受に関する問題、問3は固定資産の売却に関する問題、問4は手付金に関する問題、問5は債権の貸倒に関する問題でしたが、いずれも簡単な問題でしたので仕訳問題対策をマスターしていれば満点が取れたはずです。各問の過去問類題は以下のようになりますので、間違えてしまった方は再度確認しておいてください。

 ここで、今回の問5の債権の貸倒に関する問題と、過去問類題の2問の問題を比較してみましょう。

第120回・日商簿記検定の第1問・問5の問題文

 得意先が倒産し、前期から繰り越された売掛金40,000円が回収できなくなったので、貸倒れの処理を行う。なお、貸倒引当金の残高は30,000円である。

第109回・日商簿記検定の第1問・問1類題の問題文

 前期掛売り分の売掛金200,000円が回収不能となり、貸倒として処理した。なお、貸倒引当金の残高は100,000円であった。

第116回・日商簿記検定の第1問・問4類題の問題文

 前期に生じた売掛金300,000円が得意先の倒産により回収できなくなったため、貸倒として処理する。なお、貸倒引当金の残高は250,000円である。

 いかがでしょうか?数字が違うだけで、ほとんど同じような問題が出されていることがお分かりいただけると思います。他にも今回の問3と第115回の問4はほとんど同じ問題です。

 このように日商簿記検定3級の第1問の仕訳問題は、過去問と似たような問題が繰り返し出題される傾向にありますので、過去問対策は必須です。

第2問 商品有高帳に関する問題は、まず記帳のルールを覚えよう!

 第2問は【帳簿組織】からの出題でした。まず移動平均法により商品有高帳を作成し、次に先入先出法で売上総利益と次月繰越高を算定する問題でしたが、出来はあまり良くなかったようです。

 このような問題はまず問題文を一読した上で、解答用紙をチェックします。次に、問題文の「移動平均法」と「先入先出法」という文字を丸で囲んだり、下線を付すなりして目立たせます。

 上記の作業が完了したら問1の問題から解き始めます。ルールに従って解答用紙の商品有高帳を埋めていくだけですので、機械的に処理していってください。

 返品や減耗などが無かったので簡単だったと思いますが、移動平均法の問題は、計算のケアレスミスに注意するようにしてください。下の画像は、商品有高帳の記帳ルールについて私がまとめたものなので、参考にしていただければ幸いです。

帳簿組織のまとめノート
帳簿組織のまとめノート

 問1を解き終えたら問2にいきましょう。まず問題を解き始める前に、問1の商品有高帳を見て「期首商品棚卸高」「当期商品仕入高」「当期商品払出高」「期末商品棚卸高」の各個数をチェックします。

  • 期首商品棚卸高…100個
  • 当期商品仕入高…400個
  • 当期商品払出高…310個
  • 期末商品棚卸高…190個

 ここで期末商品棚卸高の190個に注目してください。問2では先入先出法(古いものから順番に払いだしていく方法)を採用していますので、この190個というのはより新しい商品で構成されていることになります。

 8月は6日、10日、19日に商品を仕入れていますので、期末商品棚卸高の190個というのは、19日仕入分の120個と10日仕入分の70個で構成されていることが分かります。

 よって、19日仕入分・120個と10日仕入分・70個の合計(120個×@3,150円+70個×@3,120円)が期末商品棚卸高となり、次月に繰り越されていくことになります。

 上記の方法で期末棚卸高を算定できたら、次に問題文の「商品甲に関する資料」から当期商品仕入高を算定し、【期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高】の式にそれぞれの数字を代入し、売上原価(当期商品払出高)を算定します。

 その後、当期商品仕入高と同じように問題文の「商品甲に関する資料」から売上高も算定しておきます。

 以上の計算が完了したら、売上総利益を算定していきます。売上総利益は【売上-売上原価(当期商品払出高)】ですので、売上高から売上原価を差し引いてください。

 問2については、下書き用紙に商品有高帳を自作して、時間を浪費してしまった方も多いと思いますが、電卓だけで解答までたどりつける問題です。下に私の電卓のキー入力順序を書いておきますので、実際に電卓を使って確認していただければ幸いです。

  • 120×3,150
  • M+
  • 70×3,120
  • M+
  • RM (ここで596,400と表示されるので、解答の次月繰越高欄に596,400を記入)
  • CM (いったんメモリをリセット)
  • 150×3,100
  • M+
  • 130×3,120
  • M+
  • 120×3,150
  • M+
  • RM (当期商品仕入高が1,248,600ということが分かる)
  • 100×3,000
  • M+ (期首商品棚卸高の金額もメモリに追加)
  • RM (期首商品棚卸高+当期商品仕入高=1,548,600ということが分かる)
  • 596,400 (先に求めた期末商品棚卸高を差し引く)
  • = (期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価952,200が判明)
  • CM (いったんメモリをリセット)
  • M- (売上原価952,200をマイナスとしてメモリさせておく)
  • 80×5,800
  • M+
  • 100×5,800
  • M+
  • 130×5,800
  • M+ (9日、15日、24日の売上高をメモリにプラスしていく)
  • RM (845,800と表示されるので、解答の売上総利益欄に845,800を記入)

第3問 試算表問題は、下書き用紙の書き方を工夫して最短時間で解答しよう!

 第3問は今回も【試算表】の出題でした。2月末日までの合計試算表と3月の取引から、3月31日の残高試算表を作成するという問題でしたが、残高試算表ではなく合計試算表を作成してしまった方が結構いらっしゃったようです。

 このような単純なひっかけに釣られてしまう方は、問題文をきちんと読んでいない場合がほとんどです。第3問に限らず、どの問題も【問題文を読む→解答用紙を確認する→問題を解き始める】という順番を徹底してください

 なお、本問の場合は、問題文2行目の「残高試算表を作成しなさい」という箇所を読んだときに、「残高試算表」部分を目立たせておきましょう。

 解き方についてですが、1つ1つ仕訳を切る方法ではなく、頻出する仕入勘定、売上勘定、売掛金勘定、買掛金勘定、受取手形勘定、支払手形勘定、現金勘定、当座預金勘定についてT勘定を設定し、その他の勘定については問題文の残高試算表に書き込んだり、解答用紙に直接書き込んでいく方法をおすすめします。

 具体的には、日商簿記検定3級 第116回総評の第3問の解説に載せているような感じです。第3問の試算表作成の問題は時間との勝負になりますので、必ずT勘定を使った方法で解けるように練習しておいてください。

第4問 勘定記入の問題で、仕訳さえ切れれば満点が狙えるボーナス問題でした!

 第4問は【勘定記入】の問題でした。この問題はまず下書き用紙に仕訳を切って、その後、勘定を埋めていく方法が一番いいと思います。


3月3日の取引に関する仕訳
(借)引出金 80,000
 (貸)現金 80,000

 「事業主に課せられる所得税」という点がポイントです。事業主が負担すべき税金の支払を会社が肩代わりしたわけですから、社外流出した80,000円について引出金勘定を使って処理します。


4月28日の取引に関する仕訳
(借)引出金 72,000
(借)租税公課 108,000
 (貸)現金 180,000

 「固定資産税のうち40%分は店主個人の家計負担分である」という点がポイントです。事業主が負担すべき税金の支払を会社が肩代わりしたわけですから、40%分の72,000円について引出金勘定を使って処理します。残りの60%分については、租税公課勘定を使って処理します。


5月26日の取引に関する仕訳
(借)租税公課 6,000
 (貸)現金 6,000

収入印紙を購入した際は、費用科目である租税公課勘定を使っていったん処理し、期末において未使用分があれば貯蔵品勘定に振り替えて次期に繰り越すことになります。

収入印紙の購入時の仕訳
(借)租税公課 *****
 (貸)現金など *****
期末において未使用の収入印紙が残っていた場合
(借)貯蔵品 *****
 (貸)租税公課 *****

11月20日の取引に関する仕訳
(借)引出金 130,000
 (貸)現金 130,000

 3月3日の問題文にあるように、(狭義の)所得税とは、個人に課される税金です。それを店の現金で納付したということは、事業主が負担すべき税金の支払を会社が肩代わりしたわけですから、社外流出した130,000円について引出金勘定を使って処理します。


12月31日の取引に関する仕訳
(借)資本金 282,000
 (貸)引出金 282,000
(借)損益 114,000
 (貸)租税公課 114,000

 引出金勘定は、資本金勘定の評価勘定ですので、決算整理仕訳において資本金勘定に振り替えます。また租税公課勘定については決算振替仕訳において損益勘定に振り替えることになります。


 12月31日の取引は決算整理仕訳と決算振替仕訳が絡んできますので若干難しかったかもしれませんが、それ以外の4つの取引については確実に点数を取りたいところです。仕訳対策講座の第111回の問3第114回の問2第117回の問5あたりが類題になりますので、間違えてしまった方は確認しておいてください。

第5問 B/SとP/Lを作成する問題!分量が少ないので、1つ1つ確実に解こう!

 第5問は【財務諸表の作成】に関する問題でした。決算整理事項として処理すべき取引は少な目でしたので、1つ1つ確実に処理することが重要です。

 ではここで、決算整理事項の8番の保険料の支払いについて説明しておきたいと思います。問題文には「保険料は、全額建物に関する火災保険料で、毎年同額を9月1日に12か月分として支払っている。」とありますので、期首から順番に仕訳を確認していきましょう。

1月1日(期首)に関する仕訳
(借)保険料 36,800
 (貸)前払保険料 36,800
9月1日(保険料支払日)に関する仕訳
(借)保険料 55,200
 (貸)現金など 55,200
12月31日(決算期末)に関する仕訳
(借)前払保険料 36,800
 (貸)保険料 36,800

 まず去年の9月1日に12か月分の火災保険料を1年分支払っているわけですが、今年の1月1日から8月31日までの8か月分については前払いとなりますので、前期末に前払保険料を計上していることが分かります。よって、期首の1月1日に再振替仕訳を切る必要がありますので、上記のような仕訳を切ります。

 次は、9月1日の12か月分の保険料を支払ったという取引ですが、これはただ単に支払った金額の仕訳を切るだけです。よって、問題文で与えられている残高試算表の保険料92,000円というのは、①と②の仕訳の保険料の金額を足したものですから、この時点で20か月分の保険料が計上されていることになります。

 最後に、決算整理仕訳において、8か月分の前払いを認識しますが、これによって20か月分計上されていた保険料が12か月分に修正されますので、正しい数字が損益計算書に載ることになります。

まとめ

 第120回・日商簿記検定も過去問と似たような出題がいくつかありました。ある程度、力が付いてきたら過去問を入手して典型論点の問題をこなしておくと合格率が飛躍的に上がると思います。今回、残念ながら不合格だった方も、次の受験前にはぜひ過去問を有効活用して合格を勝ち取ってください。



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