日商簿記検定2級 第120回総評(過去問分析)

第1問 仕訳問題対策の過去問類題と似た問題が多数出題されました!

 問1は試用販売(特殊商品売買)に関する問題でしたが、仕訳問題対策で取り上げた第109回の問1とほとんど同じでしたので大丈夫だったと思いますが、念のために解説しておきます。

 試用販売は、【得意先から買取の意思表示があったとき】に売上を計上します。得意先に商品を試送したときではありませんので注意してください。

 本問では、問題文中のなお書きに「当社は、試用販売の記帳について、試用品勘定を用いて手許商品と区分して処理する方法によっており…」とありますから、商品を得意先に試送したときに仕入勘定から試用品勘定への振り替えを行っていることになります。

既に切られた仕訳
(借)試用品 1,080,000
 (貸)仕入 1,080,000

 次に、買取の意思表示があったときの仕訳を考えていきましょう。B商品については全部買取の意思表示があり、A商品は全部返品されたわけですから、それぞれ以下のような仕訳を切ることになります。

B商品に関する仕訳…①
(借)売掛金 830,000
 (貸)売上 830,000
(借)仕入 630,000
 (貸)試用品 630,000
A商品に関する仕訳…②
(借)仕入 450,000
 (貸)試用品 450,000

 よって解答すべき仕訳は①+②となります。

 問2は設立時の払込に関する問題でした。本問のように「会社法に規定する最低限度額を資本金に計上することとした」としう指示がある場合は、払込金額総額から資本金組み入れの最低額(=払込金額の二分の一)を差し引いた額を資本準備金として処理することになります。

 ただ、最低組み入れ額の規定は「できる」規定ですので、必ずしも二分の一が強制されるわけではありませんので、誤解のないようにしてください。

 あくまでも、問題に指示がある場合にのみ適用されるものです。仕訳問題対策の第108回の問4第112回の問1も本問と同様の問題ですので、あわせて押さえておいてください。

参考

  • 会社法445条2項…前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
  • 会社法445条3項…前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

 問3は仕入割引に関する問題です。仕訳問題対策の第109回の問4とほとんど同じ問題でしたので、簡単に正解までたどりつけたと思います。

 商品売買時の契約により、約束の期日までに入金した場合に、一定のキャッシュバック(仕入割引)が得られることがあります。本問も期日内に入金が完了し、適用要件を満たしていますので、2%の割引を受けることになります。

 なお、仕入割引は、商品売買契約に係り行われる仕入値引とは異なり、債務の早期返済に係る割引ですので、事業的な収益ではなく金融的な収益と考えられ、営業外収益として計上することになります。この考え方は売上割引も同様です。

 問4は社債の発行に関する問題、問5は建設仮勘定に関する問題でしたが、こちらの2問については簡単ですので特に解説することはありません。建設仮勘定については仕訳問題対策の第118回の問5とほとんど同じような問題でした。

 今回の第1問の仕訳問題は、過去問対策をしっかりやっていれば満点が取れるような問題でした。簿記検定ナビでは仕訳問題対策ページ(2級)をご用意しておりますので、ぜひ有効活用していただきたいです。

第2問 普通仕訳帳と特殊仕訳帳を基に、残高試算表を作成する問題でした!

 第2問は【帳簿組織】からの出題でした。帳簿の下書きを定型化している方にとっては、二重仕訳に気をつけながら数字を当てはめていくだけの作業ですので、ぜひこの問題を使って下書きの定型化をマスターして欲しいと思います。

 ではまず下書き用紙の書き方についてご説明します。まず、下書き用紙を横長の状態にして4つの区分に区切ってください。左から【普通仕訳帳に記入された仕訳】【当座預金出納帳に記入された仕訳】【仕入帳および売上帳に記入された仕訳】【受取手形記入帳および仕入手形記入帳に記入された仕訳】という順番になります。

第2問・帳簿組織の下書き1
第2問・帳簿組織の下書き1

 では実際に仕訳を書き出していきましょう。この際にいくつかルールがありますので、それを守って書き出してみてください。ルールは以下の通りです。

特殊仕訳帳(本問では当座預金出納帳・売上帳・仕入帳・受取手形記入帳・支払手形記入帳)に記入される仕訳のうち、普通仕訳帳を通さずに総勘定元帳に個別転記する勘定についてはアンダーラインを付す

普通仕訳帳と特殊仕訳帳に記入される仕訳のうち、他の特殊仕訳帳の親勘定となる勘定については二重仕訳を回避するために()で括る。一部当座取引の二重仕訳となる勘定も同じく()で括る

仕訳を書き出していく際には、諸口勘定を使わずに、内訳をきちんと書く

 上記のルールに沿って書き出していくと以下のような下書きが出来上がります(スペースの便宜上、下書き用紙を2枚に分けています)

第2問・帳簿組織の下書き2
第2問・帳簿組織の下書き2
第2問・帳簿組織の下書き3
第2問・帳簿組織の下書き3

 ここまでよろしいでしょうか?あとは()で括られていない勘定を集計していくだけです。例えば当座預金ですと、普通仕訳帳冒頭の324,500円に当座預金出納帳の借方合計459,000円を足して、貸方合計の337,500円を引いた446,000円が解答となります。

 このように帳簿組織の問題は、下書き用紙に機械的に数字を当てはめていくだけで正解までたどりつけますので、ぜひマスターして帳簿組織を得意分野にしていただきたいと思います。

第3問 本支店会計は「下書きの定型化」がカギとなります!

 第3問は【本支店会計】からの出題でした。難度的には普通レベルの問題でしたので、例年の本支店会計の問題と同様に、未達事項の処理と内部利益の控除がポイントになります。

 具体的下書きの書き方については、第117回の2級総評に詳しく載せてありますので、下書きの定型化がまだ出来ていらっしゃらない方は参考にしてみてください。帳簿組織の下書きと同様に機械的に処理していくだけですので、特に難しいところはないと思います。

第4問 工業簿記の一巡に関する問題は、勘定連絡図を書ければ満点が狙えます!

第4問は実際個別原価計算に関する【仕訳】問題でした。工業簿記の一巡に関する理解を深めるためには、勘定連絡図の作成が一番です。第115回の2級総評にも書きましたが、本問でも同じような勘定連絡図を下書き用紙に書くことになります。

 下の画像は、この問題の勘定連絡図をまとめたものです。間違えてしまった方は、同じような勘定連絡図が書けるかどうか一度確認してみてください。勘定連絡図の作成は、工業簿記の体系的な理解のために非常に有益ですので、何も見ずに書けるようになるまで練習してください。

第4問・実際個別原価計算の勘定連絡図
第4問・実際個別原価計算の勘定連絡図

 あと、問1の問題文の最後に「他社振り出しの小切手にて支払った」とありますが、現金勘定ではなく当座預金勘定を使ってしまった方がいらっしゃると思います。

 他社振り出しの小切手は、銀行に行けばすぐに現金と交換してもらえるものなので、簿記上は現金として取り扱いますので間違えないようにしてください。

第5問 標準原価計算は、標準原価カードの作成がカギとなります!

 第5問は【標準原価計算】からの出題でした。製造間接費の差異分析という過去に何回も出題されている形式で、特に難しい問題ではなかったと思いますので、特に解説することはありません。

第5問・標準原価計算の下書き
第5問・標準原価計算の下書き

まとめ

 第120回・日商簿記検定も過去問と似たような出題がいくつかありました。ある程度、力が付いてきたら過去問を入手して典型論点の問題をこなしておくと合格率が飛躍的に上がると思います。今回、残念ながら不合格だった方も、次の受験前にはぜひ過去問を有効活用して合格を勝ち取ってください。



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